浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ハイフェッツ ベル・テレフォン・アワーからゴドフスキなど

2012年04月23日 | 提琴弾き
久しぶりにゆったりとした時間を味わってゐる。こうしたときにふと聴きたくなるのは提琴の甘い音色だ。エルマンをとも思ったが、どういふ訳かハイフェッツが目に留まった。ベル=テレフォン・アワーの復刻アルバムが数巻あるが、其の中から軽いタッチの小品を集めた第6巻を取り出して愉しんでゐる。

第二次大戦が終わって間もない1945年9月3日の録音からゴドウスキのワルツを専属管絃團の伴奏で聴いてゐるが、戦後間もない頃と云へば日本國は焼け野原、独逸國は露西亜と分割されようとする頃だ。其の時期にこんなに甘美なメロディを愉しむ余裕のある國が亜米利加なのだ。これほどの國力の違ひをあからさまに見せつけられると言葉も出ない。

驚きながら聴き進んでゐると、ベンジャミンのジャマイカ・ルンバが登場する。此のおどけた小品は一度プリムローズの演奏でご紹介したことがあったが、こちらの伴奏はゴドウスキと同様、管絃樂によるアレンジである。プリムローズの演奏よりもさらに軽音楽らしさが強調された演奏だ。此の演奏日時はなんと大戦も終末を迎えやうといふ1945年1月29日の録音だからびっくりさせられる。亜米利加國民はこのやうなラヂヲ放送を聴いてくつろぎながら、一方で日本國への攻撃のニュースを聞いて喜んでゐたのだらう。戦前も戦後も亜米利加にとってはなんにも関係がないやうだ。

東京大空襲に続いて我が街神戸が焼け野原となる約1カ月前の亜米利加の空気を読み取ることができ、不思議な気分になる。


盤は、米國Cembal d'amourによるリマスタリングCD CD122。


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