浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ディエメ自作の「グランド・ワルツ」2種のレコヲド

2009年11月16日 | 洋琴弾き
ディエメの自作の「グランド・ワルツ」には1903年と1906年のGramophone and Typewriterのレコヲドがある。1903年の方はペダルを多用した混濁の極み。酒井●子は吸って変わってしまったが、1906年の録音では打って変わってノンペダルで弾いてゐるのがとても不思議だ。

曲の表情付けも即興的に随分と変化してゐる。冒頭の序奏に続いて登場する音階順次進行のテーマが2度目に反復される部分などは楽譜も全く異なってゐて、どちらが本当なのか分からない。恐らく弾くたびに少しずつ違うのが本当なのだらう。ショパンの演奏がそうであったやうに、この時代の作曲家(=演奏家)は皆こうだったに違いない。そう思って聴き直すと実に愉しい。

それにしても伝説の大洋琴家ディエメの演奏がこうも大雑把なものだとは思はなかった。音のはずしも相当なものでコルトーファンも黙ってはいられなくなる。アップライトにキリンピアノを足して3で割ったやうなペラペラな音が録音されてゐて期待してゐたイメージは大きく崩れてしまった。

作品の中身もわざわざ2度も録音するやうな代物だらうか。ショパンのやうなデリカシーの感じられる作品ではない。こんなのを2回も録音するのならブラームスやショパンの名作を一つでも残しておいて欲しかったと思ふのは僕だけではないだらう。

伝説のままで居た方が良かったかもしれない人、ベスト3に入りそうなレコヲドだ。

盤は、英國Appian P&R社のSP復刻CD APR5534。


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