浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

コルトーのベートーヴェン協奏曲第1番

2007年11月26日 | 洋琴弾き
【前回のあらすじ】
出張で高砂にでかけたその足で神戸に立ち寄った僕は、とあるCD屋でコルトーの戦後のライブ盤を見つけ、目が釘付けになった。早速購入して聴いてみると、30年前から妄想を抱いてゐた「コルトーのベートーヴェン」のイメージと近いもので大いに納得したのだった。

特に第2楽章では、コルトーの新たな素晴らしさに触れた思ひである。コルトーの弱音がこれほど美しかったとは知らなかった。ベートーヴェンの古典的なスタイルの初期作品にコルトーのロマンティシズムがしっくりと合うといふことが実に嬉しい。伴奏がフルトヴェングラーだったら、と思ふ。第3楽章については、次回に取り上げることにして、今宵は、この美しいラルゴに浸りきって、神戸の土産の「うなぎのひつまぶし」を味わうことにしよう。

関西のウナギ文化は奥が深い。関東のやうに頭を落として身を焼いて食すやうな野暮なことはしない。だいたい、腹切り(腹開き)を嫌う武士の精神が、首をはねてどうするのだ。関西では頭も大切に調理する。ご飯の間で蒸すマムシやひつまむしなどのコンセプトを関東人は見習ってもらいたいものである。

ひつまぶしでは、まず、ウナギを散らしたお重を頂く。そして、口が飽いてきたところでネギ、山葵などの薬味をきかせていただく。最後に、頭などととも身をほぐしたご飯にだし汁をかけて茶漬け風に頂くと、ウナギを堪能できるといふわけである。この「うなぎのひまつぶし」といふ料理は地方ではなかなか味わえない逸品なので、有り難さもひとしおだ。

コルトーのラルゴを繰り返し再生しながらの夕食も終わり、食後の柚子茶を頂いてゐる。第1・3楽章を選ばなかったのには理由がある。決して曲が嫌いなわけではない。第一、食事中の音楽には相応しくない。もう一つの理由については次回触れることにする。

盤は、仏蘭西Thara TAH610。


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