浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

アントニーナ・ネシュダノーヴァ アリャビエフのナイチンゲール

2007年03月19日 | 歌もの
アリャビエフのナイチンゲールはエルデンコの提琴とサペルニコフの洋琴で既に紹介した僕のお気に入りのメロディーだが、元々は歌曲だった。露西亜で大流行した歌で、露西亜人で知らない人は10人中9人くらいのものだらう。

アントニーナ・ネジダーノヴァの声は実に澄んだ美しい響きで、ラフマニノフが名曲「ヴォカリーズ」を献呈したことも十分に納得できる。帝政露西亜時代にマリインスキー歌劇場の大歌手として活躍したネジダーノヴァの録音は、その歴史的価値からするとあまり陽が当たってゐるとは言へないやうに思ふ。機械録音の貧しい音からは、その美しさの全容はつかめないが、アリャビエフの名旋律を情感豊かに歌い上げてゐる。可憐な声質で、露西亜の歌手のごついイメージとは随分と違う。コロラトューラもワーグナーもこなす人だったやうだが、ナイチンゲールで聴かせるコロラトューラを聴く限り、ワーグナーには優しすぎるやうに思ふ。

マリインスキー歌劇場は、最近ではゲルギエフが指揮し、世界的に脚光を浴びてゐるが、この劇場の歴史は大変古い。ここでネジダーノヴァが活躍したのは今から100年前のことだ。この録音は、当時大ヒットしたのは間違いないだらう。こういったレコヲドを聴くと、露西亜人の本当の音楽趣味が理解できるやうな気がするのだ。

盤は、洪牙利のClub”99”によるSP復刻CD CL99-5。


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