京都第二外環状道路(にそと)の整備に合わせ、京都府長岡京市の高速バス乗り場「高速長岡京」と、直結する阪急西山天王山駅が同時開業して2年になる。バス運行本数や乗客数は飛躍的に伸びたが、利用者がそのまま京都や大阪へと流れ、観光振興につながっていないのが現状だ。市は、全国的にも珍しい交通結節点を「まちづくりの核」と位置づけるが、地の利を観光誘客へとどう結びつけるのか。
高速道路と高速バス停、鉄道駅が近接する交通結節点は、高い利便性が特徴だ。
近畿では、神戸市垂水区にある神戸淡路鳴門自動車道の高速バス停とJR・山陽電鉄の駅が知られている。
開業当初、高速長岡京の1日の往復バス便数は、首都圏と信越方面が各8、京都府北部方面が2で計18便。1カ月の利用客は500人弱だった。だが、阪急の駅と直結し、河原町駅まで21分、大阪・梅田駅まで34分という利便性から利用客のニーズが高まり、名古屋や北陸、中国、四国、九州などを結ぶ路線が順次スタート。今年10月時点で1日86便が運行し、月に約4500人が利用している。
長岡京市は5月、高速バス利用者にアンケートを実施した。「観光での利用」が最多だが、市内の観光客数を見ると年間125万人前後で大きな変化はない。利用客は市を素通りし、京都や大阪へと向かっているのが実情だ。「京都観光の新たな玄関口」(国土交通省)としてのアクセスの良さが、皮肉にも市を単なる「通過点」にしてしまっている。
交通網の一大拠点を生かし、いかにして観光客を市内に引き込むか。都市政策や観光資源を研究する成美大の矢島正枝教授は「京都や大阪にはない長岡京市ならではの魅力があるはず。地道にアピールし続けファンを増やすことが必要だ」と指摘。
その上で「一過性の催しだけでは、人もいっとき来るだけで終わる。首長が覚悟を持ち、強いリーダーシップを発揮して持続可能な振興策を持つことが大切」と提案する。
「通過点」となっている現状に、市も手をこまねいているわけではない。11月26日には花や紅葉の美しさで知られる柳谷観音楊谷寺(同市浄土谷)にマスコミや旅行業関係者らを招き、魅力を発信する「市観光プロモーション」を実施した。
昨春のタケノコ掘り体験に続く第2弾で、ホテルや鉄道、旅行会社の関係者ら15人が参加した。西山の中腹にある同寺を見学し、写経や写仏に挑戦。庭師から散策ポイントの説明も受けた。毎月17日だけ公開している「上書院」からの紅葉も楽しんだほか、毎月女性限定で行っているアロママッサージも体験した。参加者は「お寺でアロマって珍しい組み合わせですね」と、驚いた様子。住職の日下俊英さんは「婚活イベントもできるのではないかと考えてます」と、PRしていた。
楊谷寺を選んだ理由を、市は「他では体験できないレア感」とする。市商工観光課の田中厚課長は「長岡京市は京都や大阪のベッドタウンで観光資源をなかなか知ってもらえない。観光素材をツアー化してほしいと思い、いろいろな体験をしてもらった」と話す。
最後に行われた市との意見交換で、全国寺社観光協会理事の岡本豊明さんは「寺社単体で観光客を呼ぶのは難しい。寺社を含めた観光資源を巡ることで一つの物語になるようなアイデアを行政が出してほしい。そうすればこちらも手伝える」と提起。田中課長は「研究したい」と応じた。
地域の観光資源をつなぎ、物語性を持たせようと、長岡京市のNPO法人「京おとくに・街おこしネットワーク」は8年前から、ハイキングコース「西山古道」の整備を進めている。光明寺(同市粟生)と楊谷寺、善峯寺(京都市西京区)を結ぶ約12キロ。山道途中にある川に橋を架け、急斜面を階段状に掘って歩きやすくしたほか、観光客への案内役も買って出ている。かつて信仰心の深い人たちに利用され、豊かな物語性を持つ道を市民が現代に復活させ、観光振興に結びつけた形だ。
同ネットワークの中山秀亜理事長は「西山三山をPRするためには、西京区とも連携が必要になる。長岡京市だけでの観光振興ではだめ」と力を込める。
市内の観光資源を結びつけ、近隣の市町と連携するには、市が旗振り役となる必要がある。全国的にも例の少ない交通結節点を生かし、点と点をつないで線にし、線を面へとつむいで観光地化できるか。市の今後の取り組みに注目したい。
【 2015年12月01日 13時40分 】
高速道路と高速バス停、鉄道駅が近接する交通結節点は、高い利便性が特徴だ。
近畿では、神戸市垂水区にある神戸淡路鳴門自動車道の高速バス停とJR・山陽電鉄の駅が知られている。
開業当初、高速長岡京の1日の往復バス便数は、首都圏と信越方面が各8、京都府北部方面が2で計18便。1カ月の利用客は500人弱だった。だが、阪急の駅と直結し、河原町駅まで21分、大阪・梅田駅まで34分という利便性から利用客のニーズが高まり、名古屋や北陸、中国、四国、九州などを結ぶ路線が順次スタート。今年10月時点で1日86便が運行し、月に約4500人が利用している。
長岡京市は5月、高速バス利用者にアンケートを実施した。「観光での利用」が最多だが、市内の観光客数を見ると年間125万人前後で大きな変化はない。利用客は市を素通りし、京都や大阪へと向かっているのが実情だ。「京都観光の新たな玄関口」(国土交通省)としてのアクセスの良さが、皮肉にも市を単なる「通過点」にしてしまっている。
交通網の一大拠点を生かし、いかにして観光客を市内に引き込むか。都市政策や観光資源を研究する成美大の矢島正枝教授は「京都や大阪にはない長岡京市ならではの魅力があるはず。地道にアピールし続けファンを増やすことが必要だ」と指摘。
その上で「一過性の催しだけでは、人もいっとき来るだけで終わる。首長が覚悟を持ち、強いリーダーシップを発揮して持続可能な振興策を持つことが大切」と提案する。
「通過点」となっている現状に、市も手をこまねいているわけではない。11月26日には花や紅葉の美しさで知られる柳谷観音楊谷寺(同市浄土谷)にマスコミや旅行業関係者らを招き、魅力を発信する「市観光プロモーション」を実施した。
昨春のタケノコ掘り体験に続く第2弾で、ホテルや鉄道、旅行会社の関係者ら15人が参加した。西山の中腹にある同寺を見学し、写経や写仏に挑戦。庭師から散策ポイントの説明も受けた。毎月17日だけ公開している「上書院」からの紅葉も楽しんだほか、毎月女性限定で行っているアロママッサージも体験した。参加者は「お寺でアロマって珍しい組み合わせですね」と、驚いた様子。住職の日下俊英さんは「婚活イベントもできるのではないかと考えてます」と、PRしていた。
楊谷寺を選んだ理由を、市は「他では体験できないレア感」とする。市商工観光課の田中厚課長は「長岡京市は京都や大阪のベッドタウンで観光資源をなかなか知ってもらえない。観光素材をツアー化してほしいと思い、いろいろな体験をしてもらった」と話す。
最後に行われた市との意見交換で、全国寺社観光協会理事の岡本豊明さんは「寺社単体で観光客を呼ぶのは難しい。寺社を含めた観光資源を巡ることで一つの物語になるようなアイデアを行政が出してほしい。そうすればこちらも手伝える」と提起。田中課長は「研究したい」と応じた。
地域の観光資源をつなぎ、物語性を持たせようと、長岡京市のNPO法人「京おとくに・街おこしネットワーク」は8年前から、ハイキングコース「西山古道」の整備を進めている。光明寺(同市粟生)と楊谷寺、善峯寺(京都市西京区)を結ぶ約12キロ。山道途中にある川に橋を架け、急斜面を階段状に掘って歩きやすくしたほか、観光客への案内役も買って出ている。かつて信仰心の深い人たちに利用され、豊かな物語性を持つ道を市民が現代に復活させ、観光振興に結びつけた形だ。
同ネットワークの中山秀亜理事長は「西山三山をPRするためには、西京区とも連携が必要になる。長岡京市だけでの観光振興ではだめ」と力を込める。
市内の観光資源を結びつけ、近隣の市町と連携するには、市が旗振り役となる必要がある。全国的にも例の少ない交通結節点を生かし、点と点をつないで線にし、線を面へとつむいで観光地化できるか。市の今後の取り組みに注目したい。
【 2015年12月01日 13時40分 】
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