京都府長岡京市内の公立中学や市教育委員会が、性的少数者(LGBT)について理解を広める授業や研修に取り組み始めている。固定的な性別二分論が色濃く表れる学校現場で、当事者の尊厳と生きやすさをどう保障するのか。生徒たちへ、制服でスカートを着用しなくても良い選択肢があることを明示し、心理的な負担感を和らげる試みも始まった。
6月上旬、長岡第四中(同市下海印寺)では、人権学習の題材にLGBTを初めて取り上げた。3年生約140人を前に、市女性交流支援センター職員が「互いの存在を認め合おう。みんな違って当たり前」と強調した。
性自認や性的指向、性の表現方法といった性の多様性をもたらす要素を解説。制服に関して「男女の二分が生きづらさにつながる。集団生活でも自分らしくいられる環境を整えることが大切」と言及し、当事者の経験談を映像で紹介した。
授業を終えた松山拓暉さん(15)は「性のあり方について差別的な言葉を使わないように心がけている。勝手な固定概念を持たないでいたい」と話した。
同中では今年2月、授業と同様の内容で教職員研修を実施した。本島知樹校長は「新たな人権問題と考えているが、具体的にどう配慮していくかは、これからの段階」と話す。
市教委学校教育課は「現場の知識が不足しているのが実情。いたずらに取り組んでも傷つく子どもが出てくるかもしれない」とし、残る3市立中学へ研修や授業を広めたい考え。今夏、小中学校教職員を対象に実施する「教育課題特別研修会」では、初めてLGBTをテーマに据え、学校現場で求められる配慮などについて専門家に学ぶ予定だ。
長岡第二中(同市今里5丁目)では昨年12月、本年度の入学予定者に向けた制服の申込書で、女子生徒でもスラックスが選べることを明記。制服業者と協議し、男子と異なる寸法の新たなモデルのスラックスを用意した。今年4月、夏服の申込書にも同様に記載して全校生徒に配布した。
川上雅範校長は「普通にスラックスもスカートも選べる状況が定着すれば、心理的なハードルは下げられる」と期待する。夏服でスラックスを選ぶ生徒が数人いたといい、周囲とのトラブルや好奇の目で見る向きはない、という。「学校生活では男女で分けないといけない場面は厳然としてあるが、可能な限り配慮し、少しでも負担なく通学できる環境を整えたい」と話す。
来年度からは、全ての市立中で同様の運用になる計画といい、市教委は「手探りだが、手をこまねいているだけではいけない。知見と経験を積み重ねたい」としている。
【 2018年07月09日 12時00分 】