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たかしの啄木歌碑礼賛(続)

啄木歌碑およびぶらぶら旅

啄木歌碑ひめぐり(15)

2018年01月11日 | 啄木歌碑

(15)「啄木出あい道」の歌碑(盛岡市開運橋上流)  平成11建立(『爾伎多麻』より)   啄木15歳

 『爾伎多麻』は啄木らが編集した盛岡中学の回覧雑誌で、啄木は、明治34年9月号に「翠江」のペンネームで30首詠んでいます。

 

 

 

花ひとつ

さけて流れてまたあひて

白くなりたる

夕ぐれの夢

石川翠江

 

啄木は明治34年の年末から35年の年始にかけて「麦羊子」のペンネームを用い、野村胡堂、金田一京助てた手紙の中で、次の歌を詠んでいます。 

  「争はむ人もあらずよ新春の春のうたげのかるたの小筐」




爾伎多麻  秋草  署名・翠江  明治34年9月号 

1.人けふをなやみそのまゝ闇に入りぬ運命(さだめ)のみ手の呪はしめ

2.日はおちぬ雲はちげれぬ月はいまだ夕のそらのさながら吾は

3.宵ひと夜あけの焔のもえて今朝冷えしの若血腕のふるひよ

4.ほそきほそき情のきづないや細く小雨さながら闇におくりぬ

5.を枕よこよひの夢はかたらざれなうらみうれたみさてはうれしの

6.世も人ものろはじさては怨みまじ理想のくものちげれてし今

7.さゝがにのそれより細き夢の糸たどるもよしな詫びしれし今

8.たまはれのみこゑよほそき春の宵を花より出てゝ歌ねびる神

9.見ずや雲の朱(あけ)むらさきのうすれうすれやがて下りくる女神のとばり

10聖歌口にほゝゑみうたふ若き二人二十歳の秋の寂しさをいはず

11 うかれ出て小道の闇をたどりたどり人のまがきに花を折りにき

12.ひかりありて野辺の闇路に光ありて姿の哀れ照らしゝの宵

13.火かげあかき御殿(おとど)の戸ぼそそとあけて琴ひくみ手をうかがひよりぬ

14.さらでだにただかりそめの惑ひよとそとほゝゑみし君や悶(もだ)えの

15二十(はた)とせを懸想(けさふ)になきし人二人江の東に暁(あけ)の月見る

16灯ともしてやがてまたよむ経のみ声尊(たふと)みてらの戸により聞きぬ

17紅ふくむみ袖やおもきらふたけのくろ髪おばしまの君

18さびしげの裳裾(もすぞ)やながき秋のみ神か細きこゑを松の梢に

19.もやの袖おぼろのそらの春の神歌やめすらむ月姫のみや

20.野の花(ゆり)の清きにしかぬ世の栄えよきたれや君の二十八宿

21.今日の秋かぜよあめよの野の中にすくせやなにぞ一本女郎花(ひともとおみなへし)

22.ゆりのそのにふと見てゑみし人よその紅絹(もみ)の袖口ただ紅(あか)かりき

23.十年朽(ととせく)ちて人ゆかざりし堂の戸の隙より洩るゝ白檀の烟

24夕照の紅きむらさき朱(あけ)の雲いろさまざまに思ひおもふ吾

25見ずや君そらを流れしうるはしの雲のゆくへの理想のみ国

26.花ひとつさげて流れてまたあひて白くなりたる夕ぐれの夢

27.なにか神のさゝやく如きこゝちしてそぞろ思ひにさまよひゆきぬ

28.あきの夜のそぞろの夢よおばしまにうすむらさきのもすその女神

29.今日の秋泉の水にもだへの子つきじのあまきなさけを知りぬ

30.野の月に冴えしや銀の笛の音の清しさびしのそぞろの調べ