梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第十五夜

2009年10月11日 | 芝居
午前5時ごろの夢なのですが、どうも『人間豹の最期』が映画化されたらしく(『阿修羅城の瞳』でもあるまいに)、その撮影を行っているのですが、舞台はなぜか現代の新宿(とおぼしき駅前風景)で、でも師匠も高麗屋(染五郎)さんも歌舞伎の衣裳。私は出演しているわけではないらしく、ADなのかなんなのかはわかりませんけれど、とにかく忙しく動き回っていて、しまいに何かのアクシデントに巻き込まれ、助けて~と思ったら目が覚めました。

いったいなんなのでしょうか。正夢にならないことを祈りマス。

さて…。
今日は「今月の“ええじゃないか”」をご紹介いたします。
先月の“ええじゃないか”と若干違うので、未だに歌詞を間違いそうになりますが…。

ええじゃないか ええじゃないか ええじゃないか
ええじゃないか ええじゃないか ええじゃないか
なんでもいいじゃないか なんでもいいじゃないか 
どうでもいいじゃないか ええじゃないか

今年は世直り ええじゃないか
豊年踊りはお目出度い
おかげでええじゃないか ええじゃないか
臭いもんに紙貼れ へげたらまた貼れ
ええじゃないか ええじゃないか ええじゃないか ええじゃないか
ええじゃないか ええじゃないか ええじゃないか

(以上を繰り返し)


♩=132くらいのテンポで大声で唄いましょう。
そして全身で激しく踊りましょう。
人間豹が出てくるかもしれません(まさか)。

本当に、ミュージカルの方、ジャニーズの皆さん、アイドルのいずれも様を尊敬いたします。
息が切れてどうしようもありません。鍛錬不足ですね!

※写真はその“ええじゃないか”で振りかざされる幟。
真ん中のは、「小◯」で「困る」なんですって。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第十四夜

2009年10月10日 | 芝居
部屋子の梅丸が、先月に引き続きまして舞台出演させて頂いておりますが、「梅丸が<乱歩歌舞伎>に出る」と聞いたとき、私はてっきり“小林少年”役なのだと思い込んでおりましたが(だってピッタリだと思いません? あのカンジが…)、実際は、御覧いただいた方はおわかりでしょうけれど、大変不思議なお役なのでして…。

『鏡獅子』の胡蝶以来、久々の女方。しかもいわゆる“子役”の役柄ではございませんうえに、物語の展開において重要な役割を果たします。(“人”じゃないってのがミソなんですが、何度も申しますが詳細は話せません。お許し下さい)

本人いたって意気軒昂。
ご声援をよろしくお願いいたします。




<乱歩歌舞伎>体験日記・第十三夜

2009年10月09日 | 芝居
当公演、初めての2回公演でした。
昼の部1時開演、夜の部7時開演。
う~ん、これまで体験したことのないタイムスケジュールです。
昼夜の空き時間が3時間! せっかくなので近所のマッサージ店で上半身のコリをほぐしてもらいました。
研修生は道場でトンボの稽古をしてました。

夜の部は、お仕事を終えた方もご覧頂けるようにという公演。そういえば、確かにスーツ姿の方が多かったような…。
<ええじゃないか>を昼の部と同じパワーでやりきれるか心配でしたが、意外と平気でした。
始まってみると、やっぱりあっという間の3時間。しかし終演は9時40分。
帰宅したのは11時少し前…。

毎週金曜日は、こんなかんじです!

<乱歩歌舞伎>体験日記・第十二夜

2009年10月08日 | 芝居
台風18号、すでに太平洋上に抜けたようですが、被害に遭われた地域の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

東京は雨はそれほどではなかったですが、風はすごかったですね~。交通機関の乱れは、予想していたこととはいえ大規模なものでした。大事をとって、楽屋入りの時間を早めて正解でした。
出演者の中にも、運休や途中停車,大混雑に巻き込まれ、ひと苦労もふた苦労もなすった方がいらっしゃるくらいですから、本日の公演、はたしてどれだけのお客様がいらして下さるか、皆々心配しておりましたが、若干(これは来られなくなった人の席かな)と見受けられる空席ができていたくらいで、本当に有難いことでございました。大変ななかご来場下さいました皆様に御礼申し上げますとともに、残念ながらいらっしゃれなかった方々へは、是非後日改めて! とお願い申し上げます。

さて、本日の開演前に、舞台監督さん(国立劇場の公演にはこの職務がございます)から『第1幕上演中は楽屋の窓を閉めるように』というご指示がございました。どういう理由かわかりますか?
国立劇場は舞台も楽屋も1階で、舞台裏からそのまま楽屋へとつながっています。おりからの強風、窓を開けていると、そこから入り込んだ風が全て客席方向へ流れこみ、緞帳や各種の幕があおられて正常な操作ができなくなるおそれがあったのです!
とくに第1幕では,浅葱幕の<振りかぶせ>がございます。一瞬にして舞台全面を隠さないと、演出が台無しになってしまうので、かくのお達しとなった次第。

…終演後にはすっかり晴れ上がった青空!
久しぶりのまぶしい日差し!
こんな天気が続いてくれたらよいのですが…。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第十一夜

2009年10月07日 | 芝居
<乱歩歌舞伎>第1弾である昨年の『江戸宵闇妖鉤爪』、そして今回第2弾となる『京乱噂鉤爪』の脚本を担当なすった岩豪友樹子さんは、その筆による『大力茶屋』が平成8年に、『斑雪白骨城』は平成15年に、それぞれ国立劇場の本公演におきまして上演されておりますから、新作歌舞伎の脚本としてはこれで4作目となるわけですね。

とりわけ『斑雪白骨城』は、師匠の演出・主演での上演でしたので、印象深く記憶しております。
黒田如水と、敵対する宇都宮鎮房の娘である鶴姫の屈折した愛を描いた作品ですが、森英恵さんのデザインによる衣裳での所作事も入るという、常の新作とはひと味もふた味も違う“歌舞伎”でした。
私にとりまして、初めて携わる新作歌舞伎の現場。大変面白く、また難しく、貴重な体験をさせて頂きましたが、あれから6年、ふたたび岩豪さんの作品に出ることができますのも、巡り合わせと申しましょうか、有難いご縁を感じます。

新作は難しい!
ついつい常のお芝居とは違ったことをしてみたくなったりしてしまいますが、それでは歌舞伎ではなくなってしまいますし…。
戯曲は新しくても、演じる側の方法論は、あくまで歌舞伎でないと、意味がないのですから…。
まして今回は、衣裳が現代的だったり、装置が常の定式とは違う形式だったりと、おもわず何かを試してみたくなる要素が満載!
なんとか踏みとどまらなければ…と、いつも思いながら3つのお役を勤めておりますが、未熟ゆえにいたらぬところも多々あるかと思います。かえってこういう舞台のほうが、普段の自分が出てしまうから怖いですね…。



↑6年前の『斑雪白骨城』より。
「合元寺門前の場」領民の男

              ◯

今月のお稽古中、帰りの電車で偶然にも岩豪さんとご一緒しまして、少しでしたがお話しさせて頂くことができました。
ご了承を頂きましたので、ホームページのリンクを貼らせて頂きますね。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第十夜

2009年10月06日 | 芝居
写真の扇は、師匠演じます陰陽師・鏑木幻斎が使う扇で、<六骨(ろっこつ)>という種類です。

その名の通り、骨が6本あることからついた名称で、扇の歴史の中ではごく初期の形態です(蝙蝠<かわほり>扇と呼んでいました)。
そのためお芝居では、平安から鎌倉にかけての時代設定の演目で、貴族や武将がよく使います。『源氏物語』の諸役、『狐と笛吹き』の春方、『高時』の北条高時、『佐々木高綱』の高綱などなど…。

鏑木幻斎は“陰陽頭”。宮中の人間です。
しかし、この度の『京乱噂鉤爪』は、幕末が舞台。
そのころは、すでに<六骨>から進化、発展した様々な扇が生まれています。
公家社会でも、いわゆる<中啓>や、それを小ぶりにした<雪洞扇>、古写真では<鎮折扇>(いわゆる<舞扇>に近いもの)のようなものを手にしている画像がありました。

ですから、最初は考証的に正しい扇を使おうかという話もあったのですが、鏑木の衣裳や演出、雰囲気を考えまして、あえて“時代な”六骨を使っております。地紙の折り幅が広い上に、一尺強の長さがありますので、見た目の強さもでるのです。お芝居のウソ、といってしまうとそれまでですが、有職故実にとらわれず、あくまで歌舞伎として、よりそのお役<らしく>見せるための方法かと存じます。
色は舞台稽古まで銀無地でしたが、衣裳が真っ白ですので目立たないということで、初日からは御覧の通り金無地になりました。

この扇が、舞台上ではあんなことに使われようとは…。


<乱歩歌舞伎>体験日記・第九夜

2009年10月05日 | 芝居
いや~、困りました。
何を書いていいかわかりません…。

いつもの歌舞伎興行ですと、お馴染みの演目から色々と話題を取り上げることができるのですが、今回は全くの新作、しかも「秘すれば花」(用法が違うか!)の、口外できない見どころばかりの作品となりましたから…。
稽古レポも終わり、昨日無事に開幕した当月、これから御覧になる方のためにも、ストーリーや演出に関わることはお話しできませんし…!

とりあえず、2日目の感想を述べさせて頂きますね。

昨日の終演後にも、さらにダメだし、演技や段取りの変更がございました。
今朝になって、お達しがあったものもございます。
お客様を前にして、どう芝居が“動く”か。ご見物の反応は、舞台上からも実はよくわかるもので、正直申せば、良い波悪い波を常に感じながら演じているわけでございます。
といって、お客様を受けさせようとかいう、迎合するような方向には絶対持っていってはいけませんが、どうすればより物語が伝わるのかを、公演期間中常に模索することは、ましてこの度のような新作の場合、怠ることができない作業かと存じます。

明智小五郎をお勤めになりながらも、私どもの演技、仕事を御覧下さり、的確なご指導を下さいます高麗屋(幸四郎)さんの熱意を無駄にすることのないよう、心して勤める所存でございます。
常に変わり続ける、といっていいいかもしれない今回の舞台、皆様におかれましても、何度でもご覧頂きたいと存じます!

それから…。
チラシにも謳われている高麗屋(染五郎)さんの宙乗りは、客席上空を斜めに飛んでゆきます!
先年の『貞操花鳥羽恋塚』におきまして、音羽屋(松緑)さんが復活なすった“筋違の宙乗り”を、さらにパワーアップしたものです。(ただ飛んでゆくだけじゃないんだなぁ、これが!)

2階席、3階席が特等席になる素敵な趣向。
これからチケットお求めになる方は、是非この辺りのお席をご注文頂くことをオススメします。
全体的にスペクタクルな演出ですし、立体的な装置だったりしますから、宙乗り以外の場面も上からの角度で充分楽しめますよ(かえって面白いかもしれません)。
どうぞよろしくお願いいたします!!

              ◯

明日からは、ネタバレにならないよう気をつけながら、今回ならではの趣向の一端をご紹介できますよう、準備してまいります。どうぞお楽しみに~。



<乱歩歌舞伎>体験日記・第八夜

2009年10月04日 | 芝居
ついにはじまりました『京乱噂鉤爪 人間豹の最期』!!
おかげさまで大入りです。有り難うございます!

果たして、お客様がそれぞれどういうご感想をお持ちになったか。とても気になるところでございます。
どうかご遠慮なく、ご意見をお寄せ下さいましたらと存じます。

…やっぱりほとんど休みなしの3時間!
早く帰れるけど、慣れるまではけっこう疲れそうです。
頑張ります!

国立劇場10月公演
『京乱噂鉤爪 人間豹の最期』
本日4日(日)より27日(火)まで

全く新しい世界です。どうかお確かめを!
大勢お誘い合わせのうえご来場下さいませ!

<乱歩歌舞伎>体験日記・第七夜

2009年10月03日 | 芝居
午前11時より、公開での<初日通り舞台稽古>。
とはいっても、客席にぎっしりというわけではございませんから、ヘンに緊張するとかいうことはなかったですが、なんだか不思議な感じデシタ。
昨日の稽古後、さらに変わった部分もあり、また師匠の用事の段取りもかなり変えましたから、結局初めての<通し>といったおもむきでしたが、無事に終わってなによりです。

やっぱり休む間はありませんでした。休憩いれて約3時間。全力で突き進むのみ!

さあ皆様! 明日からいよいよ、<乱歩歌舞伎>第2弾が開幕!!

神出鬼没の人間豹 天地を駆けて民草の 罪なき血肉をむさぼりし
その悪業も陰陽の ことわりなるか鏑木の 秘術をふるいし策謀も 砕くる因果の花がたみ 
何思いけん小五郎の 情を知って悪を断つ 十手もむなし 大文字
大子の命もろともに 送る哀れの 恋の初風   
 

とにかく全く新しい歌舞伎が生まれます。どうかその目でお確かめ下さいませ!

<乱歩歌舞伎>体験日記・第六夜

2009年10月02日 | 芝居
当初の予定だった、午前11時からの<初日通り通し舞台稽古>を午後1時にずらし、まず大道具の<転換稽古>を行うことに。
基本的に大道具さん照明さん音響さん中心の稽古ですが、昨日大変だった洪水シーンは、転換に関わっていることなので我々も入ってもう一度。
またまた変更点があり、ついてゆくのが精一杯でしたが、おかげでよい方法が見つかりました。こういうものも、やっぱり数やらないとわからないのですねえ。

そんなこんなでいろいろ直してゆくうちに、午後1時の舞台稽古開始予定が2時になり、さらに3時に変更…。
これも新作を生み出すための苦労の一つでしょうか。この時期、我々は<待つ>のも仕事です…。
さあ、初の<通し舞台稽古>ということでしたが、マア本当にあれよあれよと進んでゆく! 今までは場面ごとになんとなく空き時間が合ったから、それを利用して衣裳替えをおこなったり、師匠の用事をしたり一息ついたりしていましたが、そんな余裕なんぞどこにもありゃしません。
最初の出番を終えて着替えて師匠を舞台に送り出してその間に自分の次のこしらえしてそれが終われば黒衣になって…。
当初のプランでは間に合わない、手が足りないところも多々! 一門総出の分担作業、もう一度組み立てなおさなくては…ハァァ…。

多少の課題点はございましたものの、最後までたどり着くことができましたが、ドッと疲れが。
うん、持久力より瞬発力が必要な芝居だな、これは。
テンション上げて頑張ろう!

              ◯

<乱歩歌舞伎>は初めての参加ですが、歌舞伎のもつ様々な要素が各場ごとに繰り広げられる感じが新鮮です。

現代的な群舞もあれば、常磐津の振り事もある。
新歌舞伎かとおもえば、義太夫も入る。
S・Eも存分に使うけど、下座もあしらう。
特殊効果、現代技術のオンパレードでも、浪布も用いるし黒衣も出る。

明日はゲネプロっていうんですか? 公開舞台稽古です。
『人間豹の最期』の一端を、垣間みることができると思います。
テレビや新聞を要チェックです!


<乱歩歌舞伎>体験日記・第五夜

2009年10月01日 | 芝居
午前11時より、昨日やり残した第1幕5、6場、そして第2幕全部の<舞台稽古>です。

11時より、とは書きましたものの、第一幕5場は大掛かりな<洪水シーン>がございますので、その確認や修正をしてからでしたから、実際芝居がはじまったのはどのくらいあとでしたでしょうか…。
なかなかベストなやり方が見つからず、小返しが何度も繰り返されました。実はこの場面、名題下俳優総出で効果を担当しておりますので、かなり大変でしたが、最終的にはなんとかまとまりまして、よかったです…。

7場面ある第1幕に、時間がかかるのは当然なわけですが、第2幕は5場面、仕掛けも少ない展開なので、意外と早く進むのでは…と楽屋ではウワサしておりましたが、そうはいかないのが舞台稽古というもので…。
この時点になっての、振り付けの変更、出番の増減(私もセリフが増えた!)もあり、しっかり細かく!!
ばっちり夜までかかりました…。

とりあえず、全場の稽古が済み、いよいよ明日は<通し稽古>!
各場ごとに異なる雰囲気を大事に、スピード感と集中力を保って突き進みます!

              ◯

さて、このたびの公演には、来春卒業の第19期歌舞伎俳優研修生7名が<舞台実習>として出演いたします。
3年目の研修で、このような本興行へ出演することが、最近は多いようですね。(私のときはなかったです)
諸先輩方と一緒になることで、化粧の仕方とか衣裳の着方、小道具の扱い方など、より実践的な勉強ができることと思います。
なによりも、これから自分たちが入ってゆく世界の雰囲気が掴めるというというのがよいですね。
作品が作品なので、いわゆる<その他大勢>に限らず、けっこう活躍してますので、どうぞご声援をよろしくお願いいたします。
(しかしまあ、私たち14期からみたら、5期10年後輩なのですか。月日の経つのは早いものですネ…)