梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

梅之博多日記・あらら~

2008年06月07日 | 芝居
『髪結新三』の「永代橋」での通行人。雨を避けるために前掛けを頭にかぶっております。
最初は手拭にしようかなと考えていたのですが、ほかの女役の人がみな手拭で、印象が同じになり過ぎてもと思い、衣裳さんにお願いして用意して頂いたのです。
今日は舞台を走り抜けている途中、空気抵抗をうけたのか、頭からハラリと外れてしまいまして、慌ててかぶり直しているうちに舞台を横断し終えてしまいました(止まるわけにはいきませんからネ)。御覧になっていた方は、さぞ(何をしているのだろう)とお思いになったことでしょう。

こんなこともあるのですね。明日から心配になってしまいました。
素に戻らずに、うまく芝居でフォローできるようにしませんと!

梅之博多日記・達陀は聖なる火

2008年06月06日 | 芝居
博多座初お目見得の舞踊劇『達陀(だったん)』が、大変盛り上がっております。
奈良に春を呼ぶ行事として名高い東大寺の<お水取り>に題を取ったこの作品、音羽屋(菊五郎)さんがお勤めの、僧集慶の若き日の恋も幻想的にからみながら、厳かな儀式のもようが再現されます。

何と申しましても、歌舞伎舞踊としては珍しい<群舞>が魅力でございます。“水”と“火”がせめぎ合い混じり合う様をみせるくだりや、降りしきる火の粉(に見立てた紙吹雪)の中で繰り広げられる出演者総出のフィナーレは、振りの斬新さや動きの激しさが、ティンパニやシンバルといった普段ではなかなか使われない楽器も交えたダイナミックな音楽とあいまって、観る者の心をいやがおうにも躍らせます。
そして名題下10名による<五体投地>の緊迫感! 体を大地に打ち付ける修行の様を、トンボで表現したものですが、ピラミッド状に並んだ僧たちが、次々と返ってゆくところでは、毎日お客様からの熱い拍手がおくられております。

私も、一度この『達陀』に出させて頂いたことがございますが、気持ちが高揚してくると申しましょうか、テンションがおのずと上がってくるのです。ことにフィナーレは、全員一丸で盛り上げてゆく一番の見せ場ですし、照明や紙吹雪、体にズンズン響く音楽の幻惑で、なんだかホントに涅槃を見たような…っと、これは思い込み先行没入型人間の悪い癖ですね。

菊五郎劇団ならでは、とも申せます、チームワークの『達陀』、博多の皆様のご記憶に、しっかり残ると思います。

梅之博多日記・外食続き

2008年06月04日 | 芝居
昨日今日と仲間の誘いで外食に。
昨晩は奈良屋町の《博多餃子 まるさん》。いわゆる鉄鍋餃子です。こじんまりとしたお店で、アットホームな感じがとても居心地よく、日替わりで供される数種の<本日の小鉢>など、餃子以外のメニューも心のこもったホッとする味。これはオススメです。
今晩は博多座楽屋口から30秒の《焼鳥 信秀》。串をお任せでたのみましたが、どれも新鮮な具材、沢山食べてももたれない味付け。馬刺も美味しかった~。店長がマア面白いご仁で、カウンター越しにマジックを披露してくれるんですからね。超近場ながら、いままでお邪魔しなかったのがもったいなかった!

…明日はちゃんと自炊です。すでに鶏とナスのキムチ炒め、小松菜とおジャコのおひたしを作っておきました。


梅之博多日記・雨の初日

2008年06月02日 | 芝居
おかげさまで、《博多座六月大歌舞伎》の初日が無事にあきました。
『娘道成寺』の<花笠踊り>も大丈夫でした。明日からは1日交代。少ない舞台数を無駄にしないよう、心を込めて、行儀よく、丁寧に…。
2年ぶりの博多座ですが、なんだかお客さまの反応が、今までよりもとっても良いように感じました。
皆様から沢山の元気を頂きまして、梅雨時ではございますけれど、明るく爽やかにひと月の舞台を勤めたいと思います。

終演後に、劇場近くのラーメン屋『龍』に行ってきました。こちらは<烏骨鶏(うこっけい)ラーメン>が売り物です。旨味たっぷりの烏骨鶏のお肉をほぐしたものがたっぷり入ったもので、芝居仲間はよく食べに行っています。
ご観劇後に是非、どうぞ。

梅之博多日記・6月になりました

2008年06月01日 | 芝居
午前11時半から『対面』の<初日通り舞台稽古>。
師匠演じます工藤祐経につく黒衣の後見は、弟弟子が勤めますので、ここでの私の仕事は着付作業まで。
幕開きに、師匠の工藤をはじめ、傾城や朝比奈、親子梶原が居並んでいる二重(にじゅう)屋体の位置が、博多座の舞台機構の関係で、少々奥まってしまうというのを、可能な限り前へ出すことになりました。役者と客席との距離が、あまり離れてしまいましてもね。まして動きの少ない芝居ですし…。

『髪結新三』も<初日通り舞台稽古>。
私は「永代橋の場」の通行人(女)。開幕早々、降り出した雨に道を急ぐというお役で、“通行”というより“走り去る”感じ。30秒も舞台にいないのではないかしら。
とはいえ、濡れないように裾を端折ったり、手拭をかぶったり、水たまりを避けるように走ったりと、それぞれが芝居しながら勤めます。お客様に<雨>を感じて頂けるよう、気を抜かず、丁寧に演じたいです(といってできるだけ長く舞台にいようというわけではないので念のため)。

いよいよ明日から公演がはじまります。まずはぶっつけ本番の<花笠踊り>が無事勤められますよう、おさらいをしてから寝ることにいたします。