『七段目』で、九太夫が由良之助に差し出すタコの刺身。おりしも主君塩冶判官の逮夜(月命日)、生臭い食べ物を口にするか否かで、忠誠心の有無を知ろうという魂胆なわけですが、由良之助、いとも簡単に食べてしまいます。
このタコ刺、ご覧になるとわかります通り、由良之助役者は実際に口に含んでいらっしゃいますが、まさか本物のタコでは、すぐに噛み切れるはずもなく、また磯臭いモノを食べてすぐに台詞を言うのも気持ち悪いもの。このような理由で、それ<らしく>見える代用品を用意しております。それは<羊羹>…。
色々ある種類の中で、赤い羊羹がございますでしょう? あれを薄切りにすると、お刺身に見えませんか? 箸でもつまみやすいですし、柔らかいのですぐ食べられ、あと味も、しょっぱかったり苦かったりするよりも具合がよいというわけで、昔から代用されておりまして、これも<消えもの>の範疇に入ります。
『髪結新三』での、鰹の刺身もやはり羊羹。『若き日の信長』で食べる柿の実も、練り菓子を使ったことがあるそうですから、和菓子というのはなかなか便利な食材ですね。
そういえば、私も出演させて頂いた『野田版 鼠小僧』で、鼠小僧と間違えられて捕まった<鼠喰う蔵>が、捕まえたネズミをパックリ食べるシーンがありましたが、あれは喰う蔵役の役者さんのアイディアで、<イカめし>に紐で尻尾をつけて、ネズミに似せたものを使っておりました。なかなかの名案だと思いますが、何かに似せて食べ物を誂えるというのは、実は大変なことなんですよ。
このタコ刺、ご覧になるとわかります通り、由良之助役者は実際に口に含んでいらっしゃいますが、まさか本物のタコでは、すぐに噛み切れるはずもなく、また磯臭いモノを食べてすぐに台詞を言うのも気持ち悪いもの。このような理由で、それ<らしく>見える代用品を用意しております。それは<羊羹>…。
色々ある種類の中で、赤い羊羹がございますでしょう? あれを薄切りにすると、お刺身に見えませんか? 箸でもつまみやすいですし、柔らかいのですぐ食べられ、あと味も、しょっぱかったり苦かったりするよりも具合がよいというわけで、昔から代用されておりまして、これも<消えもの>の範疇に入ります。
『髪結新三』での、鰹の刺身もやはり羊羹。『若き日の信長』で食べる柿の実も、練り菓子を使ったことがあるそうですから、和菓子というのはなかなか便利な食材ですね。
そういえば、私も出演させて頂いた『野田版 鼠小僧』で、鼠小僧と間違えられて捕まった<鼠喰う蔵>が、捕まえたネズミをパックリ食べるシーンがありましたが、あれは喰う蔵役の役者さんのアイディアで、<イカめし>に紐で尻尾をつけて、ネズミに似せたものを使っておりました。なかなかの名案だと思いますが、何かに似せて食べ物を誂えるというのは、実は大変なことなんですよ。