梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

甘い刺身?

2007年02月23日 | 芝居
『七段目』で、九太夫が由良之助に差し出すタコの刺身。おりしも主君塩冶判官の逮夜(月命日)、生臭い食べ物を口にするか否かで、忠誠心の有無を知ろうという魂胆なわけですが、由良之助、いとも簡単に食べてしまいます。
このタコ刺、ご覧になるとわかります通り、由良之助役者は実際に口に含んでいらっしゃいますが、まさか本物のタコでは、すぐに噛み切れるはずもなく、また磯臭いモノを食べてすぐに台詞を言うのも気持ち悪いもの。このような理由で、それ<らしく>見える代用品を用意しております。それは<羊羹>…。
色々ある種類の中で、赤い羊羹がございますでしょう? あれを薄切りにすると、お刺身に見えませんか? 箸でもつまみやすいですし、柔らかいのですぐ食べられ、あと味も、しょっぱかったり苦かったりするよりも具合がよいというわけで、昔から代用されておりまして、これも<消えもの>の範疇に入ります。
『髪結新三』での、鰹の刺身もやはり羊羹。『若き日の信長』で食べる柿の実も、練り菓子を使ったことがあるそうですから、和菓子というのはなかなか便利な食材ですね。

そういえば、私も出演させて頂いた『野田版 鼠小僧』で、鼠小僧と間違えられて捕まった<鼠喰う蔵>が、捕まえたネズミをパックリ食べるシーンがありましたが、あれは喰う蔵役の役者さんのアイディアで、<イカめし>に紐で尻尾をつけて、ネズミに似せたものを使っておりました。なかなかの名案だと思いますが、何かに似せて食べ物を誂えるというのは、実は大変なことなんですよ。

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1 コメント

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よーかん! (小吉)
2007-02-24 20:32:31
今月の七段目はすでに五回見たのですが、前回見た時に播磨屋さんの手の上に赤いものが乗っているのがちゃんと見えました。(笑)何かなぁ?と思っていたらこの日記。そうですかぁ!明日はいよいよ千穐楽ですね。最後まで気をひきしめてがんばってください!
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