梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

遅れると、待つことに…

2007年02月09日 | 芝居
昨日もお話しいたしました、厳粛至極の「四段目」。お客様も、シーンと静まり返ってご覧下さっていらっしゃいます(こういうとき、どうしても咳、クシャミをしてしまいたくなること、ありますよね~)。
ご存知のお方もいらっしゃいますでしょうが、このひと幕には、俗にいう<通さん場>という異名がございます。上演中のお客様の出入りを止める、つまり人を<通さない場>という意味でございます。
ひと幕ずっとというわけではないので、正確に申しますと、「四段目」が開いて10分ほどしたところ、ちょうど音羽屋(菊五郎)さん演じる判官が、黒の羽織着流しを脱ぎ、下に着込んでいた白装束となる場面から、約30分、葬送の行列が花道を入るまで。この間は、お客様の客席の出入りはご遠慮頂くことになっているのです。判官様の死の儀式の最中は、その厳粛な雰囲気を壊さぬために、お客様にもご協力を願うということなんですね。
普通の芝居では、幕が開いてからの着席、退席は基本的には制限されていません(花道での演技中には、花道脇の通路は通れないようになったりしますが)。急用で遅れて劇場入りすることだってありますし、トイレに行きたくなる、何時の電車で帰らなくてはならない、などなど、お客様のご都合もあるわけですからね。

とはいえ、演出効果を高めるため、あるいはすでにご着席のお客様の集中力を途切れさせることなくお芝居を楽しんで頂くため、我慢して頂く場合もあるということでございます。その点、なにとぞご理解頂いた上で、このひと幕をお楽しみ頂けたらと存じます。