梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

計2時間30分!

2007年02月07日 | 芝居
『忠臣蔵』話も、そろそろ「大序」から先に進みましょう。
『仮名手本忠臣蔵』では、刃傷が起きた「三段目」と切腹の「四段目」の間で、数日が経過している設定になっており、これは史実(即日切腹)とは違う点でございますが、この時を隔てた二幕を、休憩を挟まずに続けて上演することが、東京式のやり方ではよく見られます。
といっても、舞台の飾りかえもありますから、全くのノンストップというわけではございません。いったん定式幕をしめ、下座で三味線を演奏させておき、その間で転換作業。全てが整ったところで柝をいれて開幕となるのですが、こういう時間の取り方は<つなぎ幕>といわれておりまして、<幕間>(休憩時間)とはみなされません。
今月はだいたい5分ほどで次の幕へと移っておりますが、この間演奏される三味線のみの曲が<つなぎ三重(さんじゅう)>で、他の演目ではあまり聞かれないものでございます。

理屈をいえば、日が違うふた幕を<つなぎ幕>扱いすることは不自然なのかもしれません。しかし、連続して上演することで、「三段目」、とくに刃傷の場の緊張感、切迫した雰囲気をそのまま『四段目』にもっていくという意味や、判官をお勤めになる方の<役の心>を薄れさせない、という意味があるのだと伺っております。
とはいえ、1時間半ちかい幕をふたつ続けてご覧になる負担も大きいもの。食事時間にもあたりますし、「三段目」と「四段目」の間に、30分ちかい休憩をとることもままございます(歌舞伎座での前回の通し狂言ではそうだったと思います)。その場合でも、<つなぎ三重>の演奏は行われ、あくまで<つなぎ幕>あつかいとする考え方がございます。

続く「四段目」は、これまた超がつく厳粛な舞台。こちらにも様々なしきたりがございますので、明日以降お話しさせて頂きます。