たびたび神社

ライターあかりの神社ブログ

限られた証人

2020-06-07 09:42:23 | 古代の出雲

<意宇の社 おうのもり>

 

「国引き」の大業を終えた八束水臣津野命は、

最後に意宇の杜(おうのもり)に

杖を突きたてて「おえ!」と叫びました。

のちに「意宇郡」と名付けられたその場所は、

奈良時代には国府が置かれるなど、

政治や文化などあらゆる面で、

出雲国の中心としての役目を担ったと聞きます。

 

一説に、「意宇の地」を物語のラストに登場させることで、

本来出雲西部の伝承であった「国引き神話」を、

「出雲東部の意宇郡の地名譚へと移し替えた」

などの話も耳にしますが、

国引き神話の立役者である八束水臣津野命を祀る社が、

意宇郡にはほとんど見られないことを考えると、

やはり意宇郡と国引き神話との関連は、

薄いと言わざるを得ないのでしょう。

 

ちなみに、いくつかの「意宇の杜」の

比定地の中で有力視されているのが、

昭和の発掘調査により出雲国庁跡が確認された、

「客の森(きゃくのもり)」および

近隣の「八幡社」のあたりです。

田んぼの中に残る小さな森と小さな祠だけが、

建国当時の出雲の「内情」を知る

「限られた証人」なのかもしれません。