連・断・続の部屋  

捨てる過去など何もなく、日々の社会との繫がり、自己の活性化、整理のためにつぶやく。

信じた治療の先に訪れる  

2017-11-11 16:50:19 | 健康・病気
もともとは、急性白血病などを専門として診療を行っていましたが、
今は、入院患者は、重度の意識障害者を受け持っています。

脳の悪性リンパ腫に対する、照射療法後の患者も対象患者です。
脳の疾患は、特殊で、治療も臓器特有の制限があります。
血管脳関門のためです。
血液系の疾患が、脳に発生した場合は、放射線療法となります。
放射線照射治療は、終了後も、細胞の変化が生涯続くと認識されています。
成人急性リンパ性白血病の血液学的寛解中に、
強烈な頭痛、吐き気を伴う、中枢性白血病再発。
髄腔内にメトレキセート注入、全脳照射。
メトレキセートと照射の併用は、白質脳症が起きることは周知ではあったのですが、
目先の症状を取り去ることが優先。
寛解にならなければ生命予後は、近い将来に絶たれます。
血液学的寛解を維持し、中枢性白血病も寛解となりました。
かなり経ってから、聡明だった彼女の表情が、幼児のような透明な表情に輝き始めました。
白質脳症が徐々に顕性となってきたのでした。
家族を傷つけるような言動、行動を示す変化ではないことは、救いでしたが、
治すことを目指した治療が、また新たな疾病を引き起こし、しかも治療法がない病変をつくりだした!
この衝撃は、大きく、カルテに向かう異様なたたずまいの私に声をかけてきましたが、
彼女の検査結果を伝えるために、心を平静に向かわせるのに時間を要しました。
もう40年も前のことです。

血液専門医というよりは、高度障害者の緩和的治療を求めて入院してくる患者に対応しながら、
立て続けに、脳悪性リンパ腫治療後の白質脳症患者を受け持ち、
いまだに、起きるのが必発とも思える治療を選択せざるを得ないのかという思いと、
信じて治療を続けた先がこれかという医者としての絶望感を、どうたてなおしたのかしら?
患者、家族は、治療に先だっての説明でも、避けられない現実で治療を受け入れ、
それでも、起こらない可能性に欠けて治療を受け入れ、
しばしは症状は消失、軽減に喜び、
しばしの後に、白質脳症の症状発現、そして病状宣告。
来るべき時を覚悟し、
認識できるうちにと語り、面会に訪れる家族。
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