幾多の苦難を乗り越えて、今日まで伝えてくれた先達に感謝しながら、
久しぶりの再会に心を向けて、入館待機の列の一員となっていましたら、
年金暮らしと思しき年齢構成の数十人の集団が、私の前でした。
「入館料1500円もとって。国宝だろう。無料にしろよな。国宝を展示しているのに、高齢者から金を取るなんて、無料で当然だろ。」と、同道の仲間に賛意をつのっていました。仲間は、賛意を唱えるでもなく否定するわけでもなく、前に進み入館となりました。
今回の展示物が、1300年の時を経て、現在の私たちに伝えられてきたのは、信仰の対象として、保護してきたそれほど多くない人々のおかげでしょう。
明治時代の、廃仏毀釈のあらしを潜り抜ける努力をしてくださった方々の、英知の賜物でしょう。
国宝だからといって、無料拝観を要求できるようなことをし続けてきたでしょうか?
廃仏毀釈の時代を思うとき、
信仰の対象であった、仏をいとも簡単に廃棄した一般民衆
信仰の対象の仏様を守るために、知恵の限りをつくした寺族、そして檀家
信仰の対象の仏様に御すがりして、仏の力で寺を守り抜くという思いが、
今日につながった結果の、国宝でしょう。
意地汚い高齢者に出会ってしまいましたが、
如来様、菩薩様は、気持ちをほぐしてくれました。