すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第7号 「クルマ」は「来る魔」?

2004-08-04 12:24:59 | Tokyo-k Report
 トヨタの利益がまた過去最高を上回ったのだそうな。企業が利益をあげることは結構だし、評価されることではある。しかしこの莫大な数字を突きつけられると、「自動車の出現によって人間は、利便と引き換えに事故死、大気汚染苦、騒音被害と、取り返しのできない社会苦を抱え込んでしまったのにな」という思いも募ってくる。

 自動車大手4社の今年度第1四半期(4―6月)での最終利益は、トヨタが2866億円、ホンダ1124億円、日産1232億円、マツダ116億円。トヨタとホンダは過去最高益なのだという。4社合わせて5338億円。単純に年間ベースに換算すれば2兆1千億円超だ。売上高でない、利益!である。その半分超がトヨタ1社の金庫に納まる。

 こうなると、世の中総出でトヨタ賛歌だ。経営トップは無条件で「名経営者」と奉られるし、財界総理の座には当然その会長が座る。メガバンクさえトヨタの顔色をうかがい、広告で牛耳るマスコミは思いのままだ。いったい、トヨタとは何者なのだ。こんなに稼いでどうしようというのだ。

 自動車は鉄、アルミ、ガラス、ゴム、繊維、電子機器…あらゆる素材を活用して組み立てられる、産業連鎖の頂点にある製品だ。その発明・実用化は、人類が到達した文明のひとつのピークだろう。生活の利便だけでなく、流通に革命を起こし、そのスピードが人命を救助したケースも数え切れないであろう。

 しかしその一方で、自動車が走るから生じる事故、汚染、騒音といった負の要素も爆発的に発生した。文明の進展とはそういうものだと言ってしまえばその通りであろう。しかし自動車メーカーは、運転する側(購入者側)の利便性のみを宣伝して売りまくった。反面、車の外側にはトンと無頓着であった。

 最近でこそ排ガス環境基準とか、衝突衝撃度を弱めたボンネットの開発など、「車の外側」にセールスの軸足を置く傾向が見られるようになったが、それも消費者の意識が変化し、その方が売りやすくなったからに過ぎない。

 自動車産業に関係する人はあまねく、最高利益を謳歌する前に謙虚であって欲しい。自分たちの利益は、どれだけの事故死、怪我、環境汚染、騒音被害を社会に負わせての結果なのかを考えて欲しい。経営者も自分は優秀な財界人なのだなどと錯覚して、独禁法の強化に反対したり、政治に口を出すため献金を増やすなどといった愚かな行動に走らないほうがいい。

 自動車産業の発展には、確かに「プロジェクトX」的な努力もあったろうし、膨大な雇用を生んだ効用も否定しない。それでもなお社会に与えた負担を思えば、利益の大半は「車の外側」のために使う公的な基金に回すなど、利益至上主義の株式会社形態を改革すべきではないか。自動車メーカーという存在は、いまやそうした社会的ゾーンに突入したのである。
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