すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第1646号 アラメダのマーケットで考える

2019-11-11 11:49:43 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】旅の終わりに、北米最大と聞くアラメダ市のフリーマーケットに行く。サンフランシスコ湾東岸の埋立地なのだろう、広大な広場に露店がひしめき、大変な雑踏である。湾の向こうにはサンフランシスコのビル群が霞んでいる。IT産業で活気付くベイエリアの中心、米国経済の先頭を走る街だ。そんな煌びやかさには背を向けて、こちら側では庶民的な面々が使い古した家具や雑貨を漁って、それなりに楽しそうである。



毎月の第1日曜日、早朝から午前9時までは入場料が高く、プロたちがめぼしいものを仕入れて行く。私などは9時以降ののんびりしたアマチュア組だ。米国の家庭で使われていたのだろうから、移民の国らしく家庭雑器も多種多様で、眺めていて飽きない。しかし北欧からの移民の子孫も多いだろうに、私好みの陶器などに出会うことがない。米国も英国やポルトガル同様、北欧デザインはあまり浸透していないらしい。



バンクーバーに始まってシアトルーポートランドーサンフランシスコと南下してきた今回の旅は、北米大陸西海岸のサンシャイン・ベルトの旅だったと言える。サンシャインとは私の勝手な命名で、世界の都市の連なりの中で、最も陽が降り注いでいるように思える地域だからだ。バンクーバーは映像産業などで世界の才能を吸い寄せているし、シアトルやポートランドは、全米1のビジネスに適地であるとの評価を得ている。



しかし街は人生に似ている。いい時もあれば陰る日もある。もともと自然環境に恵まれるこのエリアは、時代の先端を行く産業の街となり、投資が集中し雇用も増大した。その勢いは素晴らしいものであったが、勢いがつきすぎたのか、生活コストの高騰という反動が庶民層を苦しめている。なかでもサンフランシスコの住居費は驚くべき高騰ぶりで、とても暮らしていけないという人々が街を離れ、人口は減少傾向にある。



国民の1%が所有する富が、残る99%の人々の合計を超えるという国の姿は、どう見ても尋常ではない。全く不健全な社会構造が、これまでの繁栄を蝕み始めているのだ。そうした傾向は西海岸の主要都市にも広がっているらしく、立地する大企業は、行政の住宅政策に多額の寄付を申し出ているそうだ。これはシステム化されてしまった富の集中が、富める側にも危機感を及ぼしている証左で、美談でもなんでもない。



しかしだからといって米国の人々が、苦悩の表情を浮かべて暮らしているかといえば、そんなことはなかったと、短期間の旅行者は思う。社会の分断を激化させる政権を苦々しく感じている人は多くても、ビジネス社会はまずまずの好景気に潤っているからだ。深刻な社会矛盾は、旅行者などが垣間見ることはできない底辺に沈潜するものだ。経済大国には、矛盾を爆発させない知恵を働かせ、恐慌を回避する責務がある。



お世話になった妻の妹さんが、ベイエリアで評判のマッサージ師を自宅に招いてくれた。日本人の中年女性で占いも優れているのだという。彼女によれば私は「ストレスの強い仕事を生きてきて、今も心配事が尽きない」のだとか。「身体が語っています」と言われると、思い当たることがあるから不思議な気分になる。だがこの先は「元気に楽しく暮らせますよ、あと30年は」とか。100歳を超える。大変だ!(2019.7.7)












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