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【Tokyo-k】東武東上線の高坂(たかさか)駅と言っても、位置を特定できない人が多いかもしれない。池袋から急行で50分、東松山の一つ手前の駅だ。それでもなお見当がつかないというお方には、関越自動車道の渋滞情報でよく耳にする高坂パーキングエリアのある街、と言ったら聞き覚えがあるだろうか。とにかく私は吉見百穴を見物した帰り、東松山界隈を歩きたいとネットを漁っていて、高坂駅前から延びる「高坂彫刻プロムナード」を知ったのである。
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プロムナードは「高田博厚彫刻群」の名を冠せられた野外ギャラリーだ。駅前広場に始まって約1キロ、ゆったりとした歩道を伴う高規格の並木道の両側に、高田の作品32点が並んでいる。駅西口の区画整理事業で、1986年に完成した街づくりのシンボルだ。東松山という地方都市の、そのまた中心部を外れた高坂に、なぜこれほど豊かな空間が生まれたのか。友情―師弟―敬愛といった幸福な連環が、高名な彫刻家と街を結びつけたのだという。
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私はそのすべての作品とじっくり対面し、台座に埋め込まれた作者の言葉を読んでまた鑑賞するという、贅沢な散歩を続けた。作品は「顔」と「人体」に大別できる。「私の人物像は『似ていない』とよく言われる。けれども容貌にそれが経てきた『時間』の層、その厚みが出なかったら意味を失う」「首も手も足もない『人間の中心なる胴体(トルソ)』だけで『美』を示せる作家が本当の彫刻家だ」。私はウンウンとうなづきながら、次の作品を目指す。
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その中の一つマハトマ・ガンジー像は、スイスのロマン・ロラン邸にガンジーが滞在した1週間、ロランがパリにいた高田を密かに招いたことで生まれた作品だという。そのドラマ性が、ガンジーの鋭い眼光とともに迫ってくる。クスノキとサトウカエデが緑を広げる並木は、もう一種、どうしても名を思い出せない樹が小さな赤い実をたくさんつけている。彫刻は、その樹の下ごとに設置されている。台座は低く、作品と見つめ合える高さがいい。
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(安曇野市の豊科近代美術館)
高田博厚(1900-1987)の作品とは、安曇野市の豊科近代美術館でも思いがけなく遭遇した。東松山にしろ安曇野にしろ、地縁があるわけでもない土地に、作品に来て欲しいと願う人たちがいたということだ。安曇野の美術館前に佇む『礼拝』は、高坂の中通公園でも花に囲まれている。戦中、毎日新聞のパリ特派員を務めるなどしたこの彫刻家は、作品以上にその思想的な生涯に憧れる年齢層が、私より一段、年上の日本人にあったような気がする。
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高坂は戦後間もない合併で松山町などと一緒になるまでは、高坂村であった。比企丘陵を下って来る都幾川が、岩殿丘陵を東行して来る越辺川に合流する土地に開けた村である。越辺(おっぺ)といったいかにもアイヌ語的な響きが残る大地は、地味が豊かだったのだろうか、朝鮮半島からの渡来人が政策的に移住させられ、定着していった土地だったかもしれない。広々とした秋空のもと、人間の肉体美と精神の豊かさについて思う、格好の散歩道だ。
岩殿丘陵一帯の航空写真は、緑の絨毯を虫が喰い削ったような醜い筋が無数に点在している。ゴルフ場だ。そして平坦部に細かい方眼紙を敷いたように広がる区画は、かつて緑豊かな住宅地として人気を博したニュータウンだ。今やオールドとなったそれらの地を、プロムナードのアランやタゴール、稲造、賢治、光太郎、元吉、志功らが見つめている。さらには大学のキャンパスも進出してきて、旧住民と若い学生が交差している。(2021.10.21)
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プロムナードは「高田博厚彫刻群」の名を冠せられた野外ギャラリーだ。駅前広場に始まって約1キロ、ゆったりとした歩道を伴う高規格の並木道の両側に、高田の作品32点が並んでいる。駅西口の区画整理事業で、1986年に完成した街づくりのシンボルだ。東松山という地方都市の、そのまた中心部を外れた高坂に、なぜこれほど豊かな空間が生まれたのか。友情―師弟―敬愛といった幸福な連環が、高名な彫刻家と街を結びつけたのだという。
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私はそのすべての作品とじっくり対面し、台座に埋め込まれた作者の言葉を読んでまた鑑賞するという、贅沢な散歩を続けた。作品は「顔」と「人体」に大別できる。「私の人物像は『似ていない』とよく言われる。けれども容貌にそれが経てきた『時間』の層、その厚みが出なかったら意味を失う」「首も手も足もない『人間の中心なる胴体(トルソ)』だけで『美』を示せる作家が本当の彫刻家だ」。私はウンウンとうなづきながら、次の作品を目指す。
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その中の一つマハトマ・ガンジー像は、スイスのロマン・ロラン邸にガンジーが滞在した1週間、ロランがパリにいた高田を密かに招いたことで生まれた作品だという。そのドラマ性が、ガンジーの鋭い眼光とともに迫ってくる。クスノキとサトウカエデが緑を広げる並木は、もう一種、どうしても名を思い出せない樹が小さな赤い実をたくさんつけている。彫刻は、その樹の下ごとに設置されている。台座は低く、作品と見つめ合える高さがいい。
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高田博厚(1900-1987)の作品とは、安曇野市の豊科近代美術館でも思いがけなく遭遇した。東松山にしろ安曇野にしろ、地縁があるわけでもない土地に、作品に来て欲しいと願う人たちがいたということだ。安曇野の美術館前に佇む『礼拝』は、高坂の中通公園でも花に囲まれている。戦中、毎日新聞のパリ特派員を務めるなどしたこの彫刻家は、作品以上にその思想的な生涯に憧れる年齢層が、私より一段、年上の日本人にあったような気がする。
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高坂は戦後間もない合併で松山町などと一緒になるまでは、高坂村であった。比企丘陵を下って来る都幾川が、岩殿丘陵を東行して来る越辺川に合流する土地に開けた村である。越辺(おっぺ)といったいかにもアイヌ語的な響きが残る大地は、地味が豊かだったのだろうか、朝鮮半島からの渡来人が政策的に移住させられ、定着していった土地だったかもしれない。広々とした秋空のもと、人間の肉体美と精神の豊かさについて思う、格好の散歩道だ。
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岩殿丘陵一帯の航空写真は、緑の絨毯を虫が喰い削ったような醜い筋が無数に点在している。ゴルフ場だ。そして平坦部に細かい方眼紙を敷いたように広がる区画は、かつて緑豊かな住宅地として人気を博したニュータウンだ。今やオールドとなったそれらの地を、プロムナードのアランやタゴール、稲造、賢治、光太郎、元吉、志功らが見つめている。さらには大学のキャンパスも進出してきて、旧住民と若い学生が交差している。(2021.10.21)
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