まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

追悼・高畑勲さん

2018年04月07日 | 日記

アニメ映画の巨匠
高畑勲さんが亡くなられたと言う。
宮崎駿監督とともに日本の映像文化を世界に認めさせた
まぎれもない巨匠だったと思う。

この朴訥な風貌が妙に好きだった。
この人がつくるものは信用できるという安心感があった。
良くも悪くも天才肌の宮崎駿に対して
じっくりと時間をかけて作品を練り上げる職人肌だったと聞く。
そのために制作予算をオーバーしたり
完成時期が大幅に遅れることも多く「遅筆」の監督だった。
興行成績でもヒット作連発の宮崎作品に比べて
遠く及ばず常に後塵を拝していた。
宮崎自身が「高畑さんはナマケモノの子孫です」などと
皮肉を言うこともあったと言う。
でも、外連味たっぷりで派手な宮崎アニメより
私はやっぱりこの人の堅実で説得力のある作風が好きだった。
と言っても、二つしか観ていないのだが・・・

「平成狸合戦ぽんぽこ」
多摩ニュータウンの周辺に生息する狸たちが
化学〈ばけがく〉を駆使して人間たちの開発に立ち向かう話だった。
環境破壊に対する強いメッセージでありながら
人間臭い狸たちの言動がとにかく面白くユーモラスな作品だった。
私はもともとアニメ映画が苦手で
漫画のイメージからどうしても感情移入できないのだが
そんなことは忘れて楽しめた映画だった。

うーん、「火垂るの墓」は駄目である。
泣いてばかりいて作品の評価どころではなくなってしまう。
電車の中で文庫本を読んでいるだけで
涙でズルズルになって周囲から奇異の目で見られたこともある。
もちろん野坂昭如の原作力もあるが
高畑さんはその世界を美しい映像美に昇華させながら
戦争の無慈悲さを鋭く描いていた。
無数のホタルが飛びかう原っぱの草むらに
放り棄てられた空っぽのドロップ缶が哀切極まりなかった。

名門・岡山朝日高校から東大仏文卒のインテリである。
その博識・博学ぶりはつとに名高く
宮崎監督もつねに高畑さんの助言に助けられたと言う。
ここ数年は病気がちだったと聞くが
その中でどんな「次回作」を思い描いておられたのだろうか。
高畑さんの新作を観たかったと心から思う。
こんな時代だからこそ高畑さんのアニメを観たかったと思う。
享年82歳、合掌。