ひとりじめ

妻から珍しく「読んでみる？」と聞かれたので
大した考えもなく手に取ってみた。
図書館に予約を入れてから一年以上も経つのよと妻。
余程の人気本らしいが知らない。
表紙の老婆らしいイラストにはＫＩＫＩ　ＫＩＬＩＮとある。
やはり女優の樹木希林さんのことらしい。

いわゆる「タレント本」である。
著者はあの浅田美代子。
アイドルタレントでデビューしその後ドラマや映画の世界へ。
笑顔の可愛らしい庶民的な女優さんだった。
彼女の出世作と言えばＴＢＳの人気番組「時間ですよ」だ。
都内のお風呂屋さんが舞台のバラエティードラマで
毎回、堺正章と二人で銭湯の屋根上で歌うシーンが名物だった。
このドラマで共演したのが樹木希林さんである。
彼女が浅田美代子を気に入って可愛がっていた話は有名で
１７歳でデビューして以来、４６年間にわたって交流があったと言う。
長い年月、樹木希林を「ひとりじめ」して来たと綴る
まさに自伝的告白本なのである。
なかなかよく書かれていて文章も達者だし
出て来る数々のエピソードも興味深く読ませてもらった。
「時間ですよ」の演出家・久世光彦との交流も
最初の結婚相手である吉田拓郎との出会いも印象的だった。
中でもやはり心惹かれるのは芸能界一の個性派女優
樹木希林の知られざる素顔であった。

遊びをせんとや生まれけむ。
樹木希林のモットーであり座右の銘でもある。
その言葉通りに二人はありとあらゆる場所で邂逅を重ねる。
六本木のバーで、麻布のお気に入りレストランで
大好きなワインを傾けながら話は弾む。
誰にでもズバズバものを言う樹木希林の毒舌にハラハラしながらも
その強烈な個性の裏にある深い愛情に
グイグイ惹かれて行く浅田。
樹木希林もまた素直で飾らない性格の浅田の気性に
我が娘のような愛情を感じ始める。
生涯にわたって夫・内田裕也との別居婚を貫いた希林だが
彼の純粋さを生害に渡って見放さなかった愛情は
そのまま浅田に通じる思いでもあったのではないかと思う。
その内田も久世も希林もすでに闇の人となり
６６歳の浅田は今日もかわらずボランティアに精を出す。

 

緑陰

相変わらずの猛暑日。
仕事帰りに生ビールでもと思ったものの
なぜかぐっと我慢の子でした。
フラフラと夢遊病者のようにしてたどり着いたのが
公園のクスノキの大木の根元でした。

巨大な枝を茂らせた木陰は格好の避難場で
ベンチに腰を下ろすと気持ちいい風が吹き抜けます。
まさしく「緑陰に憩う」ですねえ。
夕方５時だと言うのに日は髙く空には入道雲。
この暑さはいつまで続くやら・・・
思いながらあの警備員の人のことを思い出していました。

わが職場マンションの前では
ちょうどビルの建設工事が行われているのですが
その現場に派遣されている警備員の方です。
私よりちょっと年かさでしょうか。
私が出勤する頃にはもう長袖の制服を着こんで
現場に立って忙しく働いておられます。
作業を手伝ったり大型ダンプカーを誘導したりと
休む間もなく立ち働いておられます。
私など汗をかいたらすぐエアコンきいた管理人室に避難するのですが
その方は日盛りの中で一日中立ちっぱなしです。
ここ数日はまさに灼熱地獄のようで
ああ、大変な仕事だなあとつくづく感心してしまいます。
こんな涼しい場所でサボっていては申し訳ない。
ましてやビールなんてとんでもない。
と私のせめてもの罪滅ぼし（？）の気持ちでした。
今日も昼間は４０度越えとか。

 

ホタル翔ぶ

コレ、何という花か知っていますか？
薄紫色の釣鐘のような細長い形状が特ちょうで
初夏に咲くキキョウ科の花です。
最近はあまり見かけなくなっていましたが
公園の森の中で見つけて嬉しくなってしまいました。

ホタルブクロ（蛍袋）と言います。
昔は子供が袋の中にホタルを入れて遊んだことから
その名がついたと言われています。
この袋の中に明滅するホタルを入れると
それはそれは幻想的で美しいと聞いたことがありますが
残念ながら見たことはありません。

ホタルが翔ぶ季節ですねえ。
都会ではもうめったに見られなくなりましたが
昔はわが実家（島根県出雲市）では
家のすぐ横を流れている農業用の用水路でも
夜にはごく普通に見られたものです。
　
　♪　こっちの水は甘いぞ　あっちの水は苦いぞ・・・

そんな歌を口ずさみながら
弟と二人、はかなげに飛び交うホタルの光に
ひたすら魅入ったものです。

猛暑なり

まだ６月だと言うのに・・・
梅雨も明けていないと言うのに・・・
この猛暑はなんなんだ！
誰に怒ってみてもしょうがないと思いながら
何やら腹立たしい思いでした。

公園の池ではカモが意味不明のでんぐり返り。
いったい何をしているのか？？？
あまりの暑さに耐えかねて頭から水浴びでしょうか。
オジサンもこの際プールにでも飛び込もうかと思いましたが
公園内のブールは大混雑で二時間待ちとか。
仕方なくカモの逆立ち見物でひとときの涼でした。

二日連続の猛暑日だったようです。
早々と電力不足アラートが点滅中でしたが
エアコンはガンガン状態でした。
節約ポイントなどと言われてもアホらしくて
この暑さではとても協力などする気にもなれません。
熱中症に熱帯夜と灼熱地獄が続いて
カモではありませんが頭から水に飛び込みたい気分です。

リテラシー

リテラシーという言葉がある。
物事を正確に理解し活用できる能力のことで
情報リテラシーとかＩＴリテラシー

などという使われ方をする。
私には大いに苦手な分野であるのだが・・・

尼崎市の情報紛失事件には驚きを通り過ぎて呆れ果てた。
全市民４６万人の個人情報が漏洩ではなく
データを記憶したＵＳＢメモリそのものを紛失したと言う。
その紛失の過程も驚くべきもので
業務を委託された業者がメモリを勝手に外部に持ち出し
帰りに立ち寄った居酒屋で酔いつぶれてしまい
シラフに戻ってやっとカバンの紛失に気付いたというお粗末だ。
大事なメモリが入ったカバンを持ったまま
酔いつ潰れるまで飲むかと思うが気のゆるみとしか言いようがない。
いつもながらの外部委託の体質が招いた事件である。

という訳でいつもながらの謝罪会見。
行政機関のＩＴリテラシーの低さは今に始まったことではない。
先日、大騒ぎとなった誤送金問題もしかり。
そもそもＩＴ関連の部署は人員も少なく給料も安いと言う。
他に比べると低くみられる傾向にもあるらしい。
面倒くさいから外部業者に委託する悪弊も昔から絶えない。
住民の個人情報を扱う大事なのに虐げられている。
今回の事件も氷山の一角ではないかと思う。
私自身、パスワードを手帳にメモしているような人間で
偉そうなことは言えないが日本は間違いなくＩＴ後進国である。
マイナンバーカードなんてとんでもないと思う。