自然と人間などと書くと
何やら小難しい論文のように思われますが
趣味の写真の話です。
先日、東京ミッドタウンに立ち寄ったついでに
とある写真展を覗きました。
その会場で一枚の写真に思わず引き込まれました。
寒々とした薄靄の中にたたずむ
一本の柿の木の写真です。
その枝先にはまだいくつかの柿の実が残っていて
吹き抜ける風の音や鳥の声がどこからか聴こえて来そうな一枚です。
福島県の北部、裏磐梯の山麓にある農村だそうです。
この「残り柿」の風景にはいつも惹かれます。
お馴染み「富士フィルム」のギャラリーです。
写真を趣味とする人なら一度は立ち寄ったこことがある筈です。
私も一応「写真家〈?〉」を自称していますから
ちょくちょく覗いています。
この日は日本有数の自然景観を誇る
裏磐梯の自然に惹かれわざわざ移住したという
風景写真家・黒原範雄さんの展覧会が開催中でした。
タイトルはズバリ「自然との邂逅」。
どの写真もなかなかの力作ばかりです。
わざわざ写真を撮るために移住するのは生半のことではありませんが
さすがにどっしりと腰を落ち着けた視点の写真がおおく
思わず見惚れるような作品ばかりです。
でも、私は「風景写真」というのはどうも苦手です。
ピントやら絞りやらいろいろ高度なテクニックを要求される写真ですし
どうせなら自然より「人間との邂逅」を撮りたいと思います。
この日も人間が登場する写真は一枚もありませんでした。
息をのむような美しい写真より
ちり芥にまみれた「人間臭い写真」を撮りたいと思っています。
まあ、人間も自然の一部という言い方も出来ますが
その目指すところは根本的に違うのでは・・・と思ったりします。
などと偉そうなことを言いながら
最近では撮る写真のほとんどがスマホになってしまって
情けない限りでありますねえ。
でも、対象に真正面から対峙し本質をえぐるという視点から言えば
結局は「風景」も「人間」も同じかもしれません。
今回の一連の作品の中にも
珠玉の風景を切り取りながらも風景だけにとどまらない
人間の本質に通じるようなドキリとする写真も何枚かありました。
でも、人間の本質ってなんだろ・・・
写真の本質ってなんだろ・・・
いろいろと思いを致しながら帰路につきました。