常識について思うこと

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2.5GHz帯を巡る責任

2010年02月23日 | 会社

ここ数日、本ブログ記事に対するコメントで、総務省の電波政策に関する内容をいただいております。私自身、過去に電波に関する事業に携わっていた関係もあり、議論するのは全く構わないと思っております。ただし、当該記事は、元々南京大虐殺に関する議論を巡る内容(「丁寧に議論するための分量」参照)であり、コメントが本来の論点からかけ離れてしまったため、あらためて、ここで整理をさせていただくことにしました。

いただいているコメントは、以下の通りです。

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「総務省へ」

ウィルコムを企業再生支援機構という半官半民族の仕組みを使って、救済し、何故ZTEとファーウェイに次世代通信システムLTETDDをやらせるのか。説明せよ。いい加減にしろよ。

「総務省の中国ベンダ育成」

許せないのは、総務省がPHSを失敗した事ではない。勝敗は兵家の常。関係者が責任を取ればいい。
問題は、総務省がPHSの失敗隠すために、800MHz電波割当を餌にソフトバンクにウィルコム救済を依頼をした事だ。
結果、ソフトバンクは企業再生支援機構が支援を乗り出す事を前提に、2.5GHz帯を利用して、LTE TDDシステムの導入を中国ベンダ2社を中心に検討してる。日本勢は入っていない。総務省は本件把握しているのか?

LTEはWCDMAで失敗した日本にとって、生命線だろう。TDSCDMAは北京オリンピックで失敗が明らかになった。中国勢はLTE参入の巻き返しのために、日本市場での参入をウィルコムを使って仕掛けてきている。

何故、国の税金を投入して創られた産業再生支援機構を使って、中国通信産業の育成に戦略的に手を貸し、NECや富士通潰しを、総務省が手を貸すのか。日本の国益を考える官僚の仕事だろ。いい加減にしろよ。

「審議会制度を守れ」

ウィルコムに割当された2.5GHz帯は、元々、総務省が第三世代移動通信方式の拡張バンドとして、アジア全体の取りまとめに取り組んできた。しかし、米国インテル社のWIMAX技術普及の流れに屈して、敢えて同周波数帯は移動通信技術を対象から外した。
総務省はウィルコムが保有する2.5GHzを電波返上せずにLTE TDD方式での利用を認めてはならない。

LTE TDDは3GPP方式であるため、技術的条件で定められていない。もしウィルコムがLTE TDDを利用するならば、ウィルコムは、一旦、電波を返上し、新たに電波割当の審議会プロセスを経なければならない。最低1年は必要である。

そもそも報道の通り、ウィルコムを2社に分離して、電波を保有する事業を売却するのは、電波の転売を認めるのと同じである。一体、何の為の審議会だったのか。

審議会制度は公明正大なプロセスである。中国の利権屋に屈して、形骸化させるな。
今、総務省の良心が問われている。

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上記のご意見に関して、私自身、実情がどのようになっていて、それを総務省がどこまで把握しており、またどうしようとしているのか、全く情報を持ち合わせておりません。したがって、これらに対する具体的なコメントを返すのは難しいだろうと思っております。

ただ一点、2.5GHz帯の扱いについては、当時、私も多少、関わっていたので分かります。ご指摘の通り、2.5GHz帯の技術的条件の策定は、当初Wi-Max一色で、かろうじて次世代PHS等が滑り込んだ状況でした。この時点で、3GPPのような移動体通信方式は、徹底的に排除されたのを覚えています。これは、私も関わっていたことで、最終的に3GPP等の移動体通信方式については、今後の課題という記述を入れ込むのがやっとだったと記憶しています。

非常に基本的なことですが、周波数帯の割当は、当該周波数帯の技術的条件が策定した後、それを踏まえて事業者を募るという順序になっています。したがって、周波数帯の割当に名乗りを上げる事業者は、その技術的条件を確認した上で、応募の是非を決めることになります。ご指摘のように、もしその前提たる技術的条件が改定(同一技術方式のバージョンが上がった等の次元ではなく、全く新しい技術方式を導入するというレベルで改定)されるのであれば、その新しい条件の下、あらためて事業者の募集を行なうというのは、至極、当然の流れであろうと考えます。当たり前のことながら、このプロセスの中で、ウィルコムは電波を返上しなければなりません。

しかし仮に、このプロセスを経ずに、総務省がウィルコムに2.5GHz帯の継続保持を認めながら、技術的条件を改定するということであれば、それは同省の責任者、担当者の方が、「国策」として、そうした対応が必要であると判断したと見るべきでしょう。この場合、それは日本国政府としての判断であり、そうした裁量を否定することはできないと考えます。ただし、そうした政策実行には、必ず責任が伴います。したがって、このような措置を取ることの意義や重要性については、その責任者や担当者の方々が、必ず説明責任を求められることになるでしょうし、私たち国民は、その責任者、担当者とは誰なのかを注視する必要があるのだろうと考えます。

その中で、ご指摘のような中国ベンダーに関する問題があった場合には、今後、それなりの説明があるのかもしれません。

ただ、私個人としては、中国ベンダー云々もさることながら、そこまでウィルコムに肩入れしておいて、万が一、ウィルコムの2.5GHz帯事業がおかしなことになったら、それこそ大変なことになるのではないかという気がしています。ウィルコムを支援すると報道されているソフトバンクについては、その経営状態の脆さに関して、いろいろな情報が飛び交っています。仮に、そうしうた状況を把握しているにも関わらず、見通しの甘い意思決定をしておいて、後々になって、その損害を国民に押し付けるようなことがあったとしたら、それは絶対に許されません。もちろん、その場合の損害は到底一個人で負えるようなものではありませんので、そうしたことを十分に肝に銘じつつ、同省の責任者、担当者の方には、文字通り、命を懸けてお仕事に臨んでいただきたいと思うのです(「命を張る仕事」参照)。

そういう意味を含めて、ウィルコム関係の問題を裁く同省の責任者、担当者の方々の立ち振る舞いには、一人の国民として、今後も注意深く見守っていきたいと思います。

コメント (19)
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