高速道路が値下げされて、それなりの経済効果はあるのだろうと思います。ただ、これが切り札のような言い方をされても困ります。問題の解決には、もっと高速道路を使いたくなるようにするための観点が必要でしょう。
最近、新任の知事が、ある高速道路の値下げを高らかに主張していましたが、本当に高速道路を使ってもらいたいと思うのなら、もっと知恵を働かせる必要があるのではないかと思えてなりません。もちろん、料金が安くなったという理由で、高速道路を使うようになる人がいることは確かだろうと思います。しかし、それはあくまでも一時的なものであり、それによって持続的に高速道路がバンバン使われるようになるというのは、幻想に過ぎないように思えてならないのです。
せっかく知事になられたのであれば、高速道路の出口、あるいはそこからちょっと先のところに、多くの人々を呼び込める「何か」を造ること等を考えてはどうかと思います。そして、そうした方策こそが、本来、この問題の解決に求められるものではないかと考えます。料金を安くして、高速道路の通行量を増やすということもひとつの解決策にはなり得ますが、本来的には「そこに行きたくなる」、「高速道路を使わなければいけなくなる」理由を作ることのほうが、より重要であり、また生産的な解決策になるのではないかと思うのです。そういう意味で、あまりに料金論ばかりが論じられることに対して、私としては、少なからぬ違和感を覚えてしまいます。
特に同県では、ディズニーのコンテンツを活かして、あれだけ大層なものを造って、大勢の人々を呼び込んでいるのですから、日本のコンテンツが持つ可能性に対して、きちんと目を向けられていないことについて、とても不思議、且つ残念な気がするのです(「別世界の演出ができる国」参照)。
もちろん、日本のコンテンツ業界に問題があることも否めません。テレビやDVDといった既存のメディアや流通に縛られている現在の業界にあっては、そうした不動産的なサービスへの展開が、極めて困難であるということも事実でしょう。
しかし今後、インターネットというメディアが、ますます成熟していく過程において、既存のメディアや流通の役割や業界の仕組みは、大きく変化していくことになると思われます。インターネットがどのように成熟していくかについては、もはや論じる段階ではなく、実践のフェーズに入っているため、ここで殊さら取り上げるつもりはありません。端的に言えば、単に無法地帯と化しているインターネットが、責任を自覚できるユーザーたちが集い、きちんとマーケットとしても、メディアとしても機能するようになるということです。
テレビを中心とする既存のメディアが限界を迎えていくなか(「広告業が直面する問題点」参照)で、コンテンツ業界は、これまでの枠組みに縛られなくなってくるでしょう。そして一方で、インターネットのようなメディアが台頭してくることで、コンテンツの活用方法は、より広がってくるはずです。
その時に、高速道路等の交通インフラをいかに活用するかという観点はもとより、世界中から日本という国に観光客を呼び込むような方策としても、コンテンツを不動産のような分野で展開していくという発想は、今後、非常に重要度を増していくように思います。
ひとまず国際的な観光事業としての観点はさておいたとしても、単に高速料金の引き下げばかりを叫ぶのではなく、こうした計画の実現に向けて活動を展開する方が、多くの雇用が生まれたり、たくさんの人々が楽しめたり、クリエイターの方々が潤ったり・・・そしてもちろん、高速道路の通行量も上がったり、いろいろと経済の活性化を伴いつつ、きちんと未来が開けていくようなプロジェクトになると思うのでした。