最近、竹島や尖閣諸島をはじめとした領土問題が大きく取り上げられます。殊、日韓関係に関しては、領土問題のみならず、 天皇への謝罪要求や従軍慰安婦問題など、しばらく聞かなかったテーマまで耳に入るようになってきました。私は学生時代に東アジア研究のゼミで、日韓関係を研究しており、そのなかで従軍慰安婦をはじめとした戦後補償問題を卒論のテーマにしていました。もう16年も前のことです。その当時ですら、元慰安婦とされる方々はかなり高齢になられていたこともあり、日韓における戦後補償という問題は、そんなに長く論じられることはないだろうと思っていました。それがここにきて、にわかに話題になり始めたのです。私としては、この状況を少々驚きをもって受け止めています。
大学時代に私が出した結論は、日韓関係における戦後補償問題は、国家間において既に決着済みであり、ここに交渉の余地はないというものです。その根拠は、1965年に調印された「財産及び請求権・経済協力に関する協定」において、両国間の請求権の問題が「完全かつ最終的に解決された」ことが明記されているからにほかなりません。しかしながら昨年、韓国の憲法裁判所から、慰安婦問題解決のために韓国政府が外交的努力を行わないのは違憲との判決が下され、この問題が再び注目を集めるようになりました。
もちろん、私が卒論を書いた1996年以降、いくつか状況が変わってきています。もっとも大きな変化は、慰安婦募集の強制性について述べた1993年の河野洋平官房長官(当時)による「河野談話」に対して、2007年の安倍晋三内閣によって「強制連行を示す資料はない」という閣議決定がなされたことでしょう。それ以外にも新たな資料、論文、書籍などが出されるなど、本問題を論じるうえでの材料もだいぶ増えているのではないかと思います。そんななか、16年も昔に書いた論文は、多少ピントがずれるようなことがあるのかもしれません。しかしそれでも、こうした問題を考える誰かにとって、私が書いた論文が少しでもお役に立てばという思いから、これを本ブログにアップしてみることにしました。
ここで、あらためて本論文を書き上げるにあたり、大変幅広いご指導を賜った故 小島朋之先生に感謝したいと思います。
第1章 戦後補償の足跡
1.1 「戦後補償」の登場
1.2 人道的立場と「戦後補償」
1.3 加害責任と補償責任
1.4 ドイツの補償実績
第2章 日本の戦争責任
2.1 敗戦責任論、被害者意識
2.2 日本の戦争責任と東京裁判
2.3 日本の政治家による「妄言」
2.4 アジアに対する戦争責任
2.5 ドイツとの比較
第3章 日韓関係のなかで
3.1 日韓基本条約の意義
3.2 旧軍人・軍属への補償
3.3 従軍慰安婦への補償
3.4 原爆被爆者への補償
第4章 戦後補償の今後
4.1 謝罪と補償
4.2 「戦後補償」の原則
4.3 北朝鮮との関係
終章 おわりに
注釈及び参考文献
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます