常識について思うこと

考えていることを書き連ねたブログ

丁寧に議論するための分量

2010年02月05日 | 社会

Twitterの中で、他のユーザーの方とちょっとしたやり取りをさせていただきました。ただ、Twitterというのは140文字の字数制限があり、なかなか思うようなコミュニケーションができないような気がします。また、議論がぶつ切りになってしまうため、オープンなインターネットの良さを活用しきれない問題もあるように感じました。

ということで、ひとまず、やり取り(Twitter上の引用等、一部削除)を書き出してみました。

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■竹内
歴史共同研究の内容について、中国政府は関与していないと言っているらしいですが、その実、中国当局が大きく関わっていたという報道もあります。これが本当だとしたら、やっぱり大問題です。中国政府は大嘘つきで、案の定、南京大虐殺なんて、単なるでっち上げに過ぎないことの証左かもしれません。

■先方様
嘘をついていない政府が実在するなら、その国名を挙げて下さい。

■竹内
当然のことながら、それは当事者しか知らないことで、私が言える範疇にはありません。念のため申し上げておきますが、私は中国政府が嘘をついているとは断じていません。嘘をつくならお上手に、とは思いますが。

■先方様
思いっきり断じていますが・・・→【中国政府は大嘘つきで】 繰り返し質問しますが、嘘をついたことがない政府が存在するなら、その国名を挙げて下さい。

■先方様
質問を変えてみましょうかね、南京大虐殺が無かったと主張している学者が実在するなら、その名前を挙げて下さいな。

■竹内
ごめんなさい。こうした字数制限付きの短文での議論は控えさせていただきます。もし本当に議論をお望みなら、こちらにコメント下さい。http://blog.goo.ne.jp/sukune888。それと私の最初の投稿、今一度、熟読されることをお勧め致します。

■先方様
今君のような人たちに対して質問を書き込んだから、長文書ける暇ができたら君も書き込んでくれ、匿名でもかまわないよ。http://society6.2ch.net/test/read.cgi/kokusai/1259486366/

■竹内
お気遣い、ありがとうございます。ただ、ちょっと2ちゃんねる(匿名の掲示板)というのは苦手で・・・。また何かの機会がありましたら、議論させていただきたいと思います。

■先方様
もう二度と南京大虐殺は無かったと言う意味のことは言うなよ、ドイツだったらブタ箱行きだぞ。

■竹内
さて、ここは日本ですし、今後とも私は思った通りのことを申し上げていくつもりですので、よろしくお願いします。
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上記のやり取りから、私が思うことは以下の通りです。

1.本問題における「嘘」の危うさと重大性

南京事件については、肯定説から否定説の幅の中で、さまざまな意見があるものと認識しています。その中には、犠牲者の数はもとより、そもそもそうした事実すら全くなかったという論まで唱える人がいるというのが現状です。否定論者からすれば、「中国が嘘をついているのではないか」と勘繰るわけで、こうした懐疑的な見方を一掃するためにも、特に本問題をめぐっては、中国政府自身が真実のみを述べているということを堂々と示す必要があるものと思われます。

そして、そうした問題の性格上、本問題について、「二枚舌」と取られるような報道がなされることは、非常に重大な意味を持つのではないかと考える次第であり、そうした報道をされないためにも、当事者は極めて慎重に行動、及び発言すべきではないかと考えています。

2.私の投稿文の論理構成

私の投稿による最初の指摘は、大きく二つのポイントによって論理構成がされています。即ち、「これが本当だとしたら」という「仮定」と、「でっち上げに過ぎないことの証左かもしれません」という「可能性」の二つです。

これが意味するところは、まず現状において、その仮定が定まっていない以上、私自身、本件について、「中国は嘘をついているのではないか?」という疑念を排除できないながらも、結論のつけようがないということです。さらに、その仮定内容が確定したとしても、それによってもたらされる結論の可能性を述べるに留まっており、そこからさらにその可能性の中身を特定しなければ、最終的な結論に至らない論理構成となっています。

ところが先方様は、「思いっきり断じていますが・・・」とおっしゃられており、そのあたりの論理構成を全くご理解されていらっしゃらないように見受けられます。ただ、先方様は外国の方である可能性もあるため、そういう意味で、もしかしたら日本語の言語的な論理構成をご理解いただけていないかもしれない点、勘案しなければならないだろうと考えています(もし本当に外国の方であるとするならば、ある意味で、大変、日本語が堪能ですごい方だとも思いますが・・・)。

3.質問の意図が分からない

先方様からは、「嘘をついていない政府が実在するなら、その国名を挙げて下さい」、「南京大虐殺が無かったと主張している学者が実在するなら、その名前を挙げて下さい」といった質問が寄せられました。私としては、まずもって質問の意図が分からないため、何ともお答えのしようがない気がしております。これは、そもそもTwitterの字数制限によるもので、先方様もきちんと質問の内容を説明できていないだけなのかもしれません。

ただ一応、これだけの内容から、同質問に答えるとするならば(既に答えた内容を除いて)、まず前者については、「もし質問者の方が、嘘をついていない政府など実在しないという回答を期待されているとして、それが本問題に与える影響が不明です。仮に、他の政府もやっているだろうから、中国政府が嘘をついたとしても見逃してやれというのであれば、それは大いに筋が違うと思います。あるいはみんな嘘をついているのだから、何を根拠に信じるのかという類の話かもしれません。そうだとしても、そういう状況の中で、何を是とするかは個々人の判断でしょう」という程度のコメントを寄せるくらいかと思います。

また、後者に関しては、「本件については、実に多くの方々が、研究や考察をされていると理解しており、学術的見地も含めて、さまざまな議論があるものと認識しております。ただし、この問題に絡んでの「学術的」という言葉は、政治的な思惑も絡み、非常に恣意的であるとも考えられるため、私自身、あまり重要性を認めておらず、個別の論者の名前を挙げる必要性も感じません。また、もし仮に「南京で大虐殺があった」という学術的なコンセンサスが得られているということであれば、これに異を唱える人間は、世の中から「無学」扱いされる等の社会的不利益や冷遇を受けるものと思われます。しかし、少なくとも今の社会で、私はそれを感じませんし、それを感じない以上、仮に「学術的コンセンサス」があるとしても、むしろその「学術的コンセンサス」の方に問題がある可能性もあるように思います」といったところでしょうか。

4.ドイツを引き合いに出す安易さへの注意

先方様が、本件に絡んで「ドイツ」を持ちだされました。日本の戦争責任について、ドイツと比較する考え方があるのは理解します。しかし、日本の戦争に関する責任については、ドイツのそれと全く異なるものと考えております。

この点、もう15年近く前(1996年の1月頃)に書いた、私の学士論文でまとめております。時代は移り変わっておりますし、何よりも私自身が学生で、問題認識が浅はかな部分も散見されますが、ドイツとの関係性に関しては、それなりに整理ができているのではないかと思います。
※「日本の戦後補償問題

5.匿名の掲示板へのスタンス

先方様からは、匿名性が確保される掲示板への書き込みを勧められましたが、私はこれを辞退いたしました。私としては、インターネットにおいて、匿名で参加できることをいいことに、無責任な発言や荒らし行為が繰り返される問題について、非常に重く受け止めております。そして私自身、それらの行為者と同等レベルで、匿名の無責任な書き込みをすることには、強い抵抗感を覚えるため、インターネットでの議論には、基本的に実名で参加したいと考えている次第です。

そう考える以上、お誘いがあった掲示板に対して、私は実名で書き込むことしか頭にありません。ただし、今回の件について、私がそこまでして書き込んで、それに対してどのような反応があったか等、いちいちその掲示板をフォローする等という手間はかけたくないとも思っています。

匿名でコメントできるという意味では、このブログも同じではありますが、少なくともコメントが寄せられれば、自動的に私がそれを認識することができますし、そもそも、そんな実名の私宛にわざわざコメントをくださる方に対しては、きちんと対応したいと思っているため、外部の掲示板と本ブログへのコメントでは、まったく意味合いが異なると考えています。お誘いをお断りして心苦しくはありましたが、こうした理由により、私としては、外部掲示板との距離を一定に保ちたいと思っています。

ざっと、こんなところです。先方様には、このブログ記事のことも伝えましたし、何かご意見があるようなら、こちらにコメントをいただけるものと思います。

それにしても、オープンに議論をするというのは、とても大切なことです。そして、議論をする以上、それに相応しい真剣味や緊張感というのは、あって当然だろうと思います。さらに議論する相手に対して、できるだけ丁寧に伝えようとすると、私の場合、これくらいの分量になるのは、やむを得ないところでもあります。

こんなことを踏まえて考えると、Twitter上で深い議論をするというのは、とてもとても難しいと思うのでした。

コメント (18)
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