「プリ!キバ!ゴー!夏のキャラクターまつり」に行ったときの話は、既にブログでも書いたとおりです(「ヒーローたちに魂を」参照)。その時に渡された袋に、「正義のヒロインとガイアークがアイドルユニット結成!?」という資料が入っていました。炎神戦隊ゴーオンジャーに出てくる女性3人で、「G3プリンセス」ということだったのですが、私個人的には番組制作者 / 提供者側の商売っ気をムンムン感じてしまい、少々引き気味に見ていました。
それが、本日の放送で、実際にデビューしてしまいました。今後の作品におけるストーリーにどのような意味があるのかは不明ですが、少なくともこれまでの話の流れからすると、あまりにも唐突で、単純に「彼女たちをエサにして、商売したいのね・・・?」と突っ込みを入れたくなるような展開でした。それと同時に、そこまで商業主義を貫かなければならない現在のメディアの仕組みに限界を感じます。
番組制作者 / 提供者側が、こういう売込みをしたくなる気持ちはよく分かります。スーパー戦隊モノの視聴者は、子供たちだけではなく、それを一緒に見ているお父さんたちも含まれます。お父さんたちのハートをガッチリ掴めば、そこから新しいヒロインやアイドルが誕生する可能性は十分にあるわけです。
実際、昨年の獣拳戦隊ゲキレンジャーに出てきていた悪役ヒロインのメレ様こと平田裕香さんの人気は、ものすごかったのではないかと思います(すみません。私が個人的にメレのファンであるため、勝手に「様」を付けさせていただきます)。人によっては、獣拳戦隊ゲキレンジャーという作品は、ゲキレンジャーが主役なのではなく、ゲキレンジャーと力を合わせて戦う悪役、理央とメレ様のラブストーリーという評がなされるほどです。
先日もある超大企業の方とお話をさせていただいていた折、いつの間にか日本のコンテンツの話になり、このメレ様の話題になったのですが、その途端、ガッチリと握手を求められました。
「私も大ファンなんです。自分だけかと思って、恥ずかしくて言えませんでした。」
どうやら、隠れメレ様ファンだったようです。すかさず、私は返しました。
「大丈夫、あなただけではありません。」
そのやり取りはともかく、あれだけ一途に一人の男性に恋焦がれるメレ様が、魅力的でないはずがありません。その人気にあやかって、いろいろな商売が成立し得たことは事実だろうと思います。
しかし実際には、ゲキレンジャーの関連グッズとして、メレ様の商品が出回ることはほとんどありませんでした。ゲキレンジャーの人形やアイテムが大量に売り出されているのに対して、メレ様のそれがなかったことは、商売として明らかに失敗だったのではないかと思うほどです。以前、東京ドームシティにゲキレンジャーショーを見に行って、玩具売り場を覗いたとき、一応、メレ様グッズを探してみたのですが、メレ様ではなく、平田裕香さんのDVDが置いてありました。事情は分かりませんが、ゲキレンジャーにおけるヒロイン関連の商品戦略は、後手に回ってしまった可能性があります。
今回の「G3プリンセス」結成は、メレ様のときの教訓を活かして、綿密なヒロインたちの商品化戦略に基づいて、行われたのではないかと思えてなりません。実際に(これも個人的な感性ですが)ゴーオンイエローの逢沢りなさんは、とても可愛らしいと思います。アイドルユニット結成も大いに結構なことでしょう。
ただし、メレ様が多くの人々に支持されたのは、あくまでも一途な愛に自らの命を捧げた彼女の生き様にあったのであり、それが彼女の魅力だったのだろうと思います。モノを売るための人気は、その作品が人々を感動させていることによって生まれているという点を見逃してはならないということです。そういう観点において、今回の「G3プリンセス」誕生のプロセスは、炎神戦隊ゴーオンジャーという作品のなかで、彼女たちが視聴者を感動させ惹きつける前に、モノ売りに走ってしまった感が否めません。
①純粋に良い作品を生み出し、②人々を感動させ、③それを想起させるようなグッズを販売していくという当たり前の順序で物事が運べば、作品の制作者や提供者、そして視聴者や消費者たちが、皆ハッピーになれるはずです。テレビというメディアが生まれ、それが発展してきた過程で、その「当たり前の法則」は、当たり前に機能してきました。それは時代の要求でもあったのでしょう。
しかし、それが通じなくなってきたとき、そこに軋みが生じます。誰が悪いというわけではありません。
別の作品ですが、最近、ゴーオンジャーの直前に放映されるようになった「バトルスピリッツ少年突破バシン」は、まさに「バトルスピリッツ」というカードゲームを売るための番組になっているようです。グッズを売ることを主目的として制作される番組に、いったいどれだけの人々を惹きつける魅力があるのか、非常に興味深いところです。今のところ、私が見る限りでは、カードゲームを行うときのCGはよくできていると思います。しかし、それ以外の普通のアニメーション部分は、作画やモーションなどについて、けっして高いクオリティーを感じませんし、またストーリーについても非常に安直に作り上げられた感があります。
私は、テレビというメディアの仕組みが、時代の流れとともに古くなったと考えるべきだろうと思っています。それぞれの関係者の方々が、その古くなった仕組みのなかで、一所懸命にベストを尽くしている結果について、誰も批判することはできません。ただし、無条件に、その結果を受け入れることもないだろうとも思います。時代が移り変わっていくにしたがい、①純粋に良い作品を生み出し、②人々を感動させ、③それを想起させるようなグッズを販売していくという当たり前の順序で、当たり前のように制作者 / 提供者、視聴者 / 消費者の皆がハッピーになるような仕組みがなくなるのならば、それに代わる仕組みを新しく作っていくことが、現在を生きる私たちにとって、とても大切なことではないかと思うのです。