子供番組というのは、実にシンプルなつくりでありながら、鋭く物事の本質を捉えます。最近ではヒーロー番組でも、いくつもの正義があったりして、複雑化したものも多いですが、基本的には正義の味方と悪役のふたつに分かれます。
大体、上記ふたつの勢力には、以下の特徴があります。
■正義の味方
-みんなのため(みんなの笑顔のため)
-力をあわせる(自分の限界を知る)
-緩い身分制度(人間に貴賎なし)
-信じる心(他人や未来を信じる)
■悪役キャラ
-自分のため(権力、力を手に入れる)
-自分が最強(力など合わせない)
-厳格な身分制度(大ボスには絶対服従)
-憎しみの心(他人は信じない)
これらを非常に単純な表現で言い換えると、正義の味方は「全体主義的」であるのに対し、悪役キャラは「個人主義的」であることが分かります。人間は誰かのために役に立ちたい、誰かの喜びのために生きていたいと願いながらも、結局は自分がかわいくなってしまうという心の弱さを「正義の味方」と「悪役キャラ」にたとえて、「本来こうありたい」という思いを正義の味方に託して見ているのでしょう。
ところで、子供のヒーロー番組のなかで、悪役キャラが正義の味方に止めを刺す寸前「ふふふ、お前もここまでだ」などと言って、なかなか止めを刺さず、結局は、そんなことをしている間に、正義の味方に助っ人が現れて、悪役キャラが敗れるなどという場面を見たことがある人も多いと思います。「さっさと殺せばいいのに。やっぱり、子供番組だから都合がいい」などと言って、片付けてしまう人も多いでしょう。しかし、悪役キャラのこの行動にはきちんとした理由があるのです。
悪役キャラは、自分が最強だと思っていたいし、憎しみの心を原動力に生きている人たちです。そんな彼らにとって、正義の味方がピンチに追い込まれ、もがき苦しむ姿をみるのは、彼らの喜びであり、自分が最強だと思える幸せな時間なのです。そのなかで、正義の味方に止めを刺す直前などは、悪役キャラにとって、まさに至福のひと時。それは長く味わいたいはずです。
しかし、結局はそれが心の隙となります。そして負けてしまうのです。
-何のために戦うか-
自分が正義の味方か、悪役キャラか。
心の隙ができてしまうか、どうか。
最終的に勝つのか、負けるのか。
大人の私たちは、自分自身が社会で戦う理由を冷静に見つめなおし、自分がどちらに属するのか、よく考えるといいでしょう。自分の生きるべき姿が見えてくるかもしれません。
ちなみに、正義の味方になることは喜びでもあり、辛いことですが・・・。