新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ニワトコ:接骨木(お国変われば歌変わる) 

2011-04-01 18:59:57 | 植物観察1日1題
日本人が忘れられない日となった2011年3月11日から3週間、原発問題を含めて復興の道が見通せないまま新しい月を迎えました。頑張れ日本のためには、いたずらに自粛ムードに浸るのではなく、普通の活気ある生活に戻ろうとの考えもようやく出始めました。
取るに足らないつたないブログですが、そろそろ再開したいと思います。


3月のミラノの街かどで見かけた蕾をつけた木は、どう見ても日本の山野でよく見るニワトコ:接骨木(スイカズラ科ニワトコ属)でした。付近にレンギョウの黄色い花や、赤い実をつけたナンテンがあったので、てっきりこれも日本あたりからの移入種かと思いました。
ところが帰国して、何気なく歌の本を見ていると、こんな記事がありました。
宝塚歌劇のシンボル的な歌の“すみれの花咲く頃”は、もともとは、昭和4年ウイーンでつくられた“WENN DER WEISSE FLIEDER WIEDER BLUHT”(白いニワトコの花が今年も咲いた?)という歌で、これが翌年フランス語になったとき“QUAND REFLEURIRONT LES LILAS BLANCS”(リラの花咲くころ)でリラになり、さらに当時パリ留学中の白井鐵造が、宝塚歌劇で帰朝第1作のレビューで披露した時にスミレにしたというのです。
♪春 すみれ咲き 春を告げる 人なぜみな 春をあこがれ待つ・・・♪、すみれなればこそ宝塚の代表的な歌となったわけで、これがニワトコでは、これほど愛唱されることもなかったでしょうから、白井鐵造のセンスはさすがというべきでしょう。
そんなことで、異国で見た変哲もないニワトコは、ヨーロッパ産だと信じることにして、忘れられない木になりました。

追記
①独語辞書には、SPANISCHER fLIEDERというのがあり、ライラック(リラ、ムラサキハシドイ)となっています。最初の歌詞のfLIEDERが、ニワトコではなく、リラのつもりであったかどうかはわかりません
②セイヨウニワトコの話題:セイヨウニワトコの学名Sambucus nigraのSambucus はラテン語で、ラッパの一種の楽器がこの木で造られたことに由来します。英名のエルダーは古語のエルド(炎)に由来し、髄を抜いた中空の枝が火起こしに使われたことを物語ります。またこれで空気鉄砲(エルダーガン)を作ることも古くから子供たちに親しまれていたようです。
魔よけの木として家の近くに植える習慣があったり、木を切ると縁起が悪いといわれました。また様々な薬効に富む木としても尊ばれており、花でつくった化粧水はシミやしわを防ぐといわれ、果実を醗酵させたワインはリウマチや風邪、ぜんそくにお薬になりました。
ちなみに和名のニワトコは「ミヤツコギ」(庭に植える木)という古語に由来し、漢名の接骨木は、折れた骨がつながる薬に使われたことを表しています。
日本では農耕神事として若枝を水田にすきこまれたことから、ナワシロタズ、クサジキの別名もあります。このようにニワトコは洋の東西を問わず、人々にとって大事な木でした。
早春いち早く花をつけるこの木に、昔の人が寄せた思いは深かったのかもしれません。
(②は、財団法人 公園緑地管理公団実施の「緑・花試験」問題を参考にしました)