霧が峰高原の3つの高層湿原のなかで最も知られていない踊場湿原は、やはり出会う人も少なく静まりかえっていました。
その周回路沿いで、名前も知らない、はかなげな白い花の草を見つけ写真に収めました。
帰って調べてみるとナデシコ科ミミナグサ属でタガソデソウ:誰が袖草という名を持つ草とわかりました。
低山から亜高山のやや湿った草地に生える多年草で、高さは30~50cm、茎は直立し、葉とともに白柔毛があります。
5~6月、集散状に直径約2cmで長楕円形の花弁を持つ白い花をつけます。
牧野博士によると、和名の「誰が袖草」は、花が白くて香気があることから、たぶん古今集の歌に由来するのではないかとされます。その歌は「色よりも香こそあはれと思ほゆれ誰が袖ふれし宿の梅ぞも」だと思われます。
高原で、人知れず袖触れあったこの花が、このような優雅な名を持つことを知り、思わず嬉しくなりました。