満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

10.30 Psychedelic dinner with Magical Power Mako終了

2019-10-31 | 新規投稿
10.30 Psychedelic dinner with Magical Power Mako終了。出番トップは-KみかるMico with富久昌美(from N.Y)二人ともニューヨークを拠点にし、実験色の濃いライブ活動を行っている。これまでMicoさんとは何度か対バンしたり共演しているが、座り込んで、床に色んなガジェットを広げてポポル・ヴーのような一人儀式めいた音響やってたり、壁に物をぶつけてひんしゅく買うパフォーマンス、あるいは短パン姿で踊りながらピアニカを吹く等、全く捉えどころがなく、今回、何をやるのか始まるまで全く予想がつかなかったが、床に座りシンセ、エレクトロ、ピアニカを操作するスタイルをとった。そしてパートナーの富久昌美はエレピを太い音で独特の間を掴みながら弾く。現代音楽的でもあり、やはり実験色、即興色が強い演奏だ。2人のduoはダークな色彩でサケデリックの陰のイメージを醸し、そこにニューヨークアンダーグラウンドの前衛の表情を読み取る事ができた。それにしても今回のMicoさんは多彩な音響をタイミング良く発しており、その純粋、演奏に徹した姿に意外さを感じつつ感心。ファットなアナログシンセ多用し、音で埋め尽くす事無く、微妙な間で空間を描いており、ノイズ寄りじゃない所も個人的には好みで、nurse with woundnoのような硬質なサウンドコラージュを生でやっている感がとても良かった。
次にいよいよ、マジカルパワーマコがソロで登場。事前にソロのタイムを訊くと、「20分の曲を用意してきた」との事だったが、私が30分をオファーすると、「じゃあ、即興を最初にやる」と快く引き受けてくれた。しかもそれはギター弾き語りでマコ氏の一つの持ち味であるフォーキーサウンドを披露してくれた事が嬉しかった。「皆さんの宇宙と僕の宇宙が今、一つになる」というメッセージで導かれたラブソング。短かったがもっと長く聴きたかった。続く楽曲はマコ氏独特の細かい展開を持つトラックで、リブムボックスにシンセにギター、ボーカルを被せていく。ヘヴィイサイケなシンセの反復の上にエッジの強いギターソロを展開するあたり、オールドウェーブの技術、手法を手中に収めた巧者の姿を見るが、そこにピースフルなメッセージが言葉で投げかけられるあたり、フラワームーブメントの中から創出したマコ氏の基底を思い知る。マジカルパワーマコにとってサイケデリックとはダークサイドにストーンするものではなく、あくまでも陽性を本質に持つlove & peaceの世界なのだ。だから常に希望を歌い、ダンスをも志向する。得意の4つ打ちビートはいささかオールドファッションなディスコを想起する嫌いがないでもないが、マコ氏のヒューマンボイスはもはやスタイルを後方へ押しやるだろう。正しく個性は強し。追随を許さないメッセンジャーの本質はずっとブレず、表現の芯となる。精神の自由を訴え続けるそのスタンスの不変。45周年というメモリアルアルバムをリリースしたマコ氏の孤高をも感じたパフォーマンスであった。
そしてセッションにそのまま移行。奥田(初坂) 恵美はMagnetnotzで使用しているメインキーボードを持参してくれた。普段、即興セッションはあまりやらない彼女が、ストリングスをループさせながらエレピや多彩な音色でリードをとるソロを披露。これは聴き応え充分であった。やがて私が入り、松元隆(ds)が入る。彼は今年いっぱいでメインの活動であるサイケハードロックバンド秘部痺れを辞めると言う。元々、私とは即興やユニット、Ryu-Ryu-sでの付き合いだが、今日のセッションでもどっしりした力強いリズムとエレクトロパッドを使用した即興的アンビエントを見せてくれた。そしてマコ氏が加わり、4人によるサイケハードなセッションとなる。マコ氏はソロでは見せなかった大音量のギター音響を見せてくれた。ある意味、私はこれを待っていた。松元と私の重いオンビートな土台の上でマコ氏と初坂さんが弾きまくる事を想定し、選んだ人選だった。リハの時より音量が増し、やや粗いセッションだったが、最後のインパクトという事で良しとする。平日なのにお客さん多数というのも嬉しく、盛り上がったライブで、イベントタイトル「サイケデリック・ディナー」を十二分に味わっていただいたのでは自負している。津田氏による宇宙をテーマにした映像もライブのトリップ効果を強く後押ししたのは言うまでもない。MCで彼をお客さんに紹介するのを忘れてしまった失態に反省。

10.30、Psychedelic dinner with Magical Power Mako
◍Magical Power Makoマジカル・パワー・マコ
◍KみかるMico with富久昌美(from N.Y)
◍奥田(初坂) 恵美 (keyboard)宮本隆(bass)松元隆(drums)
◍Kenji Tsuda (visual)
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ROMAN✴︎SHOW(山本無二企画)、終了。

2019-10-27 | 新規投稿
10/26(SAT) ROMAN✴︎SHOW(山本無二企画)、終了。
トップバッターKERUKO+H.WAKABAYASHI。wakabayashi氏の自作ギターによる微分演奏、ピアノ、ボイスに載る形でKERUKOちゃんの不思議な寸劇を交えたダンス。静かな場面沈黙を交える多彩のシュールな世界。Wakabayashi氏の器用さはリコーダーにも現れ、動揺やら即興を織り交ぜる。KERUKOちゃん、体躯を全面的に駆使するダイナミックなダンスではなく、面を使ったり歌を歌ったりとその幅広い表現を披露。2番目は硝子(山本無二vo,g+上坂明也ds)初めて観るユニット。山本氏の不思議な楽曲を上坂氏の器用なビートが支える。ニューウェーブ的な感性が窺え、アレンジも一筋縄ではいかない面白さ。XTC等のヒネたポップロックや情緒的な場面のメランコリー度など、イギリス臭もある。時折、聴かれるストリングスの残音がすごく美しい。この楽曲、キーボードなどを加えたフルメンバーのバンドでやってほしいと感じた。歌もうまい!味わい深いステージでした。
トリは豊永 亮g +宮本 隆b +竹内 圭ds。3回目の演奏だが、これまでは豊永+竹内のレギュラーコンビに私がゲストで加わる形だったが、今回は純粋なトリオとして臨む。じわじわと始まるか思いきや、豊永氏、最初からアクセルトップに踏む勢い。そのままあっという間にラストまで持っていった感じ。竹内氏、いい音出してました。エッジの効いた演奏できたのでは。勿論、全て即興。打ち合わせもほぼ、なし。これが豊永流。彼は時計も見ない。時間も気にしない。誰も見ない。自分に向かう。聴き耳立てながら。ギター、鋭かった。
私も満足のセッション。山本無二氏のROMAN✴︎SHOW。ジャンル偏らずナイスな企画でした。ありがとう。
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Shinya Jazz Quintet

2019-10-27 | 新規投稿
Shinya Jazz Quintet


時弦旅団のギタリスト植島くんがアメリカ時代(1989年)の音源をアップ。95年、バンドを結成する時、彼と出会い、家で聴かされてビビったのを今でも覚えている。「いや、こんなんはできへんけど・・・・」と私は言った。ジミースミスのツアーに参加したり、後にジョーザヴィヌルのグループに入るプレイヤーとフュージョンライクなバンドも組んでいた。ただ、出会った時、アメリカ時代の苦しみ、悩みの方を多く語っていた事も覚えている。だからこの音源をアップした事は意外だった。彼は決してアメリカ時代の事を多くは語らなかった。消耗しての帰国だった事も僅かに言っていた。ここでの演奏の凄さ。このレベルの演奏者と私はバンドをやっている。帰国後の彼は音楽へのスタンスはゆったりしたものになっている。だから上手く付き合っていられるのかもしれない。そんな植島君は私の誇りでもある。

11/4、時弦旅団ライブします。

11.4(mon)-アヴァン・JAZZという名の陶酔,或いはImprovisationの夜-OXYD (from France) japan tour in OSAKA
[時弦旅団Time Strings Travellers]伊藤誠 sax 植島伸哉 guitar山田真紀子keyboard 宮本隆 bass 山浜光一 drums

[OXYD​]
Alexandre Herer : fender Rhodes
Julien Chamla : drums
Oliver Degabriele : electric bass
Julien Pontvianne : ténor sax
​Olivier Laisney : Trumpet

[Ogino Yasuyoshi荻野やすよしtrio]
Ogino Yasuyoshi荻野やすよし: guitar
Saito Keishiro斎藤敬司郎: bass
Mastuda“GORI”Hiroshi松田“GORI”広士: drums

@ environment 0g [ zero-gauge ] 19:00open 19:30start
Charge2200yen (exclude 1 drink)
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11.10(sun)DRAW SPACE FOLDS(辰巳小五郎×藤掛正隆)new album release tour in OSAKA

2019-10-26 | 新規投稿

未聴だったDRAW SPACE FOLDS(辰巳小五郎×藤掛正隆)のファーストアルバム「draw space folds」(2017)を遅ればせながら聴く。疾走するビートの上にエフェクティブなトランペットがDUB的にこだまする開放的で発熱体のような音楽を予想したが、かなり違った。想定外とも言える内省的な音響がむしろメイン。勿論、アッパーでオーバーヒートに突き進む場面もあるにはあるが、少なくとも辰巳氏が不破大輔氏と組むユニット、Space Baaのライブを過去に観た時に植え付けられた先入観は消し飛んだ。確かに同じタイプのユニットを二つもやる謂われはない。アルバム「draw space folds」を聴いて私が想起したのはマイルス・デイビスの"He Loved Him Madly"のような裡に沈み込むスペースミュージック、言わば内的宇宙の表現だった。

アルバム一曲目「shining darkness」‘輝く暗闇’と解せば良いか。このタイトルが言い得て妙なのは音を聴けばわかる。暗黒的ムードを醸し出すSEから始まり、徐々に重いビートのジャズロック的展開になるが、上に載るのはトランペットによる音響的拡がりではなく、軋むようなエレキギター音なのである。あれ?ギタリスト参加してる?とクレジットを確認してもいない。辰巳氏のI phoneによる操作か。いずれにしてもオンビートなスリリングさよりもダークなヘヴィイネスとアンダーグラウンド感覚が先行する。2曲目「noisy silence」もそうだ。‘騒々しい沈黙’とここでも一曲目同様、相反する意味の単語でタイトルを作る二義性を表現し、サウンドはエスノビートにゆったりとしたディレイ・トランペットの反復を融合させた静的アンビエント・トラック。ここまでは序章であり、3曲目以降、クライマックス的高揚感へと導いていくのかと思いきや、むしろ実験色を強めていく。こんな内容だったのか~。これはいい意味で裏切られた感があり、「宇宙のひだを描く」というバンドコンセプトがより明確になった。Spaceという単語から受けるイメージに縛られてはいけない。むしろ宇宙の暗部、裏、内側、影、謎、そんな場所に焦点を当て、それらをなぞっていくような音響を表現していると言えよう。4曲目「extra terrestrial intelligence」の神秘的な音響リフにトランペットのクールなソロが連なり、やがてクレジットにはないが、二人による(?)叫びが綿々と続く場面のちょっとした無重力な浮遊感と閉塞的なムードを言葉で表すのは難しい。しかしこの素晴らしさは‘単純ではないもの’そんな音楽の快楽の一段上のステップを提示してくれている事こそにあるだろう。DRAW SPACE FOLDSはありきたりのグルーブ感ではなく驚異感こそを提示した。

アルバム「draw space folds」の神秘的ムードはラストの6曲目までずっと継続した。その様相はビート・アンビエントであり、祈祷的でもあった。地球の周りをゆっくりと回る電磁波が時に光を鈍く放つ。私はそんなイメージをこの音楽に抱いた。勿論、今回の大阪公演はニューアルバムのレコ発なので、このファーストとまた違った内容のDRAW SPACE FOLDSの姿が観れるのかもしれない。それはまた、楽しみである。

11.10(sun)DRAW SPACE FOLDS(辰巳小五郎×藤掛正隆)new album release tour in OSAKA

◍DRAW SPACE FOLDS
辰巳“小五郎”光英 Tatsumi Kogoro : el-trumpet,theremin,iPhone,etc
藤掛正隆 Fujikake Masataka : drums, electronics

◍ 宮本 隆 Miyamoto Takashi(bass)
◍ KAZUYA ISHIGAMI (electronics) ×Sunao Inami (electronics)
◍ Yasushi Utsunomia(超純音・テレパスボイス)


@ environment 0g [ zero-gauge ]
open 18:00 start 18:30
charge 2200+ drink order
environment 0g [ zero-gauge ]大阪市西区南堀江3-6-1 西大阪ビルB1


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10/21(mon) Dedicated to AGI Yuzuru - Modernist and Mass Silencer

2019-10-23 | 新規投稿
10/21(mon)10/21(mon) Dedicated to AGI Yuzuru - Modernist and Mass Silencer
会場に到着するとフロアーの奥に謎のオブジェ。そしてH_D__Kによる硬質なエレクトロDJがすでに始まっていた。この非日常的なムードの音がワッと吹き上げる空気感一つで、ここは先端エレクトロの聖地だと実感できる。人波をかき分け、謎のオブジェに近つけば、それが普段は店内に配置されているイスやテーブル、脚立、マット、ライト等であり、それらがまるで建造物のように高く積み上げられていた事が判明。そして点滅するフラッシュライトがフロアに鈍く光を放つ仕掛けになっているのだ。アートギャラリーでの作品と音楽という常套的なセットではなく、アート自体が何やらビートを作り、動性を伴ったものとして、提示され、今夜のシュル・アヴァンギャルドとでも言うべきイベントの性格を決定付けているかのようだ。壁面に蛍光色で所々に配置された長方形のオブジェもまた、記号めいた意味性を醸し出し、フロアに広がるエレクトロ・ミュージックの異端性がくっきりと浮かび上がる。デザイナーの秋山伸氏が奥にいた。彼の手によるものだろう。阿木譲氏の追悼イベントの最終日であるこの日、晩年の阿木氏が最も信頼したクリエターである秋山氏はその追悼をここに空間をデザインする事で表現した。
続くYuri Urano [a.k.a Yullippe]によるジャーマンビートに乗せるボイスパフォーマンスは煌めくような美を放ち、その濃厚なロック色がテクノとの対比を見せ、先ほどとは異なる場面をイベントに施した。更にはzero-gaugeオーナー平野氏によるDJに私は感嘆した。そう、まるで阿木氏が晩年、展開したbricolageを再現させているかのようなその音響の混在感覚に私は聴き惚れてしまう。平野氏は手早くレコードを次から次へと2台のターンテーブルでプレイしてゆき、ミキサーのつまみを操作しながら左右に音の塊を散らしていた。彼はずっと阿木氏のDJをサポートし、今も先端への嗅覚を持ち続け、いわばその後継にならんとしているかのようだ。恐らく関西で平野氏は最も先端への音の判別、選択、再生が長けている一人だろう。伊達に長くこの世界にはいない。阿木氏と最も長い時間を共有した事でそのセンスは研ぎ澄まされている筈だ。それがこのDJ-ing(これも阿木氏が使っていた言葉)に現れ出たようだ。そしてイベントのラストライブはKentaro Hayashiだ。阿木氏がseiho氏と共に称賛したクリエターであるHayashi氏のライブは最初、鎮魂の心を込めたかのような荘厳なシンフォニーから始まった。このあたり阿木氏が晩年に西洋の先端音楽の中のキリスト教回帰を見出していた事に呼応するかのような音響である。聞く所によると昨日、seiho氏も床に座り、セレモニー的なパフォーマンスをしていたようで、二人の阿木氏との特別な結びつきを表現したような共通性を感じる。Hayashi氏のサウンドはやがて強烈なインダストリアルビートに入り、その流れのまま、音階のついたマシーン音が上下する中でドラムンベースのリズムが登場し、スリリングな真摯的ダンスミュージックが拡がる。こうなってくるとオーディエンスは体を揺らさざるを得ない。やがてドラムンベースのリズムが徐々にテンポアップしてゆき、最後はノイズの塊と化す。Hayashi氏による演奏は場面転換の妙とアイデアを手早く盛り込んでいく事でフロアーで機能しながら、同時にホームリスニングに耐えうる作品として存在できるものだと感じた。阿木譲氏はよく、日本人のアーティストには基本的に興味がないと言っていた。それは阿木氏の視点が西洋音楽の背景的なものにフォーカスされ、西洋人の‘内面’という基底から生じる形而上的な‘不安感’を象徴化する創造物に惹かれるセンスがあったからだと思うが、そこには‘個人’を徹底できない日本人の体質に対するアンチもあった。そんな阿木氏がHayashi氏の音楽に認めたものは東洋的無我の色合いを帯びてしまうアンビエンスではない西洋的物語のセンスだったのかもしれない。私はHayashi氏のトラックの素早い場面展開はその事を象徴しているようにも感じた。
イベントの最後、‘阿木氏との付き合いが最も長い人’と紹介されたフォーエバーレコード東瀬戸氏による献杯の音頭があり、歓談の時間となる。生前の阿木譲を知っている人は皆、彼が寂しがり屋で自分の事を気にかけてくれる事を常に気にしていた事を知っている。従って各人が阿木氏の事をああだこうだと喋る事ほど故人にとって嬉しい事はないのだと思う。そんな暖かい時間がzero-gaugeに流れていた。そしてこの日のイベントに雨宮ユキさんが姿を見せていた事は特筆すべき事だろう。阿木氏の長年のパートナーであり、晩年の氏の介護、亡き後は様々な対応に終われ、体調を崩してしまい、姿を見せなくなっていた。それまでは指定席のようにzero-gaugeの受付の椅子に居続けた彼女が不在になって一年が過ぎていた。そんな雨宮さんが今日は元気な姿を見せていた事が私は何より嬉しかった。
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