満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

11.10(sun)DRAW SPACE FOLDS(辰巳小五郎×藤掛正隆)new album release tour in OSAKA

2019-10-26 | 新規投稿

未聴だったDRAW SPACE FOLDS(辰巳小五郎×藤掛正隆)のファーストアルバム「draw space folds」(2017)を遅ればせながら聴く。疾走するビートの上にエフェクティブなトランペットがDUB的にこだまする開放的で発熱体のような音楽を予想したが、かなり違った。想定外とも言える内省的な音響がむしろメイン。勿論、アッパーでオーバーヒートに突き進む場面もあるにはあるが、少なくとも辰巳氏が不破大輔氏と組むユニット、Space Baaのライブを過去に観た時に植え付けられた先入観は消し飛んだ。確かに同じタイプのユニットを二つもやる謂われはない。アルバム「draw space folds」を聴いて私が想起したのはマイルス・デイビスの"He Loved Him Madly"のような裡に沈み込むスペースミュージック、言わば内的宇宙の表現だった。

アルバム一曲目「shining darkness」‘輝く暗闇’と解せば良いか。このタイトルが言い得て妙なのは音を聴けばわかる。暗黒的ムードを醸し出すSEから始まり、徐々に重いビートのジャズロック的展開になるが、上に載るのはトランペットによる音響的拡がりではなく、軋むようなエレキギター音なのである。あれ?ギタリスト参加してる?とクレジットを確認してもいない。辰巳氏のI phoneによる操作か。いずれにしてもオンビートなスリリングさよりもダークなヘヴィイネスとアンダーグラウンド感覚が先行する。2曲目「noisy silence」もそうだ。‘騒々しい沈黙’とここでも一曲目同様、相反する意味の単語でタイトルを作る二義性を表現し、サウンドはエスノビートにゆったりとしたディレイ・トランペットの反復を融合させた静的アンビエント・トラック。ここまでは序章であり、3曲目以降、クライマックス的高揚感へと導いていくのかと思いきや、むしろ実験色を強めていく。こんな内容だったのか~。これはいい意味で裏切られた感があり、「宇宙のひだを描く」というバンドコンセプトがより明確になった。Spaceという単語から受けるイメージに縛られてはいけない。むしろ宇宙の暗部、裏、内側、影、謎、そんな場所に焦点を当て、それらをなぞっていくような音響を表現していると言えよう。4曲目「extra terrestrial intelligence」の神秘的な音響リフにトランペットのクールなソロが連なり、やがてクレジットにはないが、二人による(?)叫びが綿々と続く場面のちょっとした無重力な浮遊感と閉塞的なムードを言葉で表すのは難しい。しかしこの素晴らしさは‘単純ではないもの’そんな音楽の快楽の一段上のステップを提示してくれている事こそにあるだろう。DRAW SPACE FOLDSはありきたりのグルーブ感ではなく驚異感こそを提示した。

アルバム「draw space folds」の神秘的ムードはラストの6曲目までずっと継続した。その様相はビート・アンビエントであり、祈祷的でもあった。地球の周りをゆっくりと回る電磁波が時に光を鈍く放つ。私はそんなイメージをこの音楽に抱いた。勿論、今回の大阪公演はニューアルバムのレコ発なので、このファーストとまた違った内容のDRAW SPACE FOLDSの姿が観れるのかもしれない。それはまた、楽しみである。

11.10(sun)DRAW SPACE FOLDS(辰巳小五郎×藤掛正隆)new album release tour in OSAKA

◍DRAW SPACE FOLDS
辰巳“小五郎”光英 Tatsumi Kogoro : el-trumpet,theremin,iPhone,etc
藤掛正隆 Fujikake Masataka : drums, electronics

◍ 宮本 隆 Miyamoto Takashi(bass)
◍ KAZUYA ISHIGAMI (electronics) ×Sunao Inami (electronics)
◍ Yasushi Utsunomia(超純音・テレパスボイス)


@ environment 0g [ zero-gauge ]
open 18:00 start 18:30
charge 2200+ drink order
environment 0g [ zero-gauge ]大阪市西区南堀江3-6-1 西大阪ビルB1


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする