満月に聴く音楽

宮本隆の音楽活動(エレクトリックベース、時弦プロダクションなど)及び、新譜批評のサイト

『3RENSA』:Merzbow、Duenn、Nyantora

2017-06-01 | 新規投稿
今日のようにアンビエントやドローンと呼ばれる音楽がここまで裾野レベルでの広がりを見せると、リスナーとしては数多の心象風景的なサウンドに時折、飽き足らなさを感じてしまうのも事実で、それらの多くはややもすると、かつてのヒーリングやニューエイジ系と同一の消費ベクトルを形成し、BGM的な定着度を増してゆく事にもつながっていく気がしている。そんな中、瞬間消費型ではない、反復リスニングに耐えうる作品を求めてしまうのは私のロック世代特有の性なのかもしれないが、『3RENSA』はそんな私の欲求に十分に応えてくれるいわば重量級の音源として現れた。
ここでは三者三様の構築性、立体的な音像こそが魅力であり、各々、20分弱で構成されたミックスが流れるように展開するのではなく、むしろ一つ一つの音粒を噛みしめながら、吟味する事を促されるようなワクワク感が満載です。即ち、Merzbow(秋田昌美)はスペーシーな音響やメロトロンを異化させたような音色が時折、顔を出す局面やゆったり変化させる物語性など、もはやプログレ風味すら感じさせるテイク。そしてDuennの緻密なサウンドスケープは奥行きに加え、様々な音粒が各方位から点で鳴っているような聴覚作用を促します。そしてNyantoraのテクノ&ノイズのニュアンスをベースに音響リフとでも言うべきビートを基調にしたテイクは何度でも聴きたくなるような、メジャー感覚を有したもので、三者の個性が見事に表出した作品で楽しめました。

2017.5.31

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする