思惟石

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『二度寝とは、遠くにありて想うもの』 時間泥棒エッセイ

2023-09-07 15:28:29 | 日記
『二度寝とは、遠くにありて想うもの』
津村記久子

津村記久子さん、好きなんですよねえ。
私は現代作家ってなんとなく話題なものとか旬のもの
(直木賞とか本屋大賞とか)ばかりをつまみ食いしていて、
作家を追いかけるということは少ないのですが。
津村さんはデビュー作から追いかけています。
『君は永遠にそいつらより若い』の
女童貞の描き方にすげえ〜ってなって、それ以来。

と言いつつエッセイはあまり読んでなかったな。
と思って読んでみた。

2010年から2014年にかけて新聞やWEBメディアに
掲載されたエッセイをまとめた一冊。
2012年6月に作家と兼業していた会社を退社されているので、
大きく生活スタイルが変わった前後のお話しも読めて楽しい。

会社員時代のエピソードで好きなのは、
机の下の大きな引き出しが「裏紙」専用になっていて、
用途に悩んでいる(メモは当然として、コースターやあぶらとり紙
としての可能性まで探っている…!)という話し。
私も若手の頃は裏紙収集者だったからグッとくる。
(書き捨て用のメモに使う派)

退社後エピソードで印象的だったのは、
兼業なら辛くて大変なときには「どちらかを辞めてやる」と思えたが、
専業作家になると簡単にもう辞めるとは思えない、という。
さすがのなるほど感。

後半の、いろんな美術展(結構マイナー)体験シリーズも
おもしろかったです。
美術館グッズ情報がとても良かった。
オリジナルインク、買いすぎでは。
岡倉天心はぜんぜん知らなかった人だけれど、
ヘンテコな彫像が気になって検索したついでに
Wikiで人生まで読み込んでしまった。
なにかと時間泥棒するエッセイなのである笑

どれもこれも津村さんらしい角度で世界を見ていて
大変おもしろい。
が、やはり冒頭一発目の
「ついに布団に話しかけるようになってしまった」
エピソードがぶっちぎり優勝だった。

ちなみに深澤真紀さんとの対談集『ダメをみがく』
近しい時期のエッセイなので、
同じネタの演出違いみたいな読み方もできます。
マニアックな読み方だけど…。

(『ダメをみがく』対談連載2012年10月〜2013年3月
『二度寝とは、遠くにありて想うもの』2010年〜2014年)
コメント
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