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『生き残った帝国ビザンティン』 印象ゼロの千年国家!

2023-09-14 10:48:32 | 日記
『生き残った帝国ビザンティン』
井上浩一

歴史系の本を読んでいると、
遠い昔に学校で習った内容が更新されているなあ
と感じることが多いですよね。
鎌倉幕府は「いいくにつくろう」ではないし、
教科書で見た頼朝像は頼朝じゃないらいしい。
あと新羅は「しらぎ」じゃなくて「しんら」らしい。

って小学6年生に言ったら「しらぎだよ」と言われました。
あれ?そうなの…?
中公新書『日本史の論点』(2018)では
「しんら」だったんだよ…。

何が正しいか分からなくなりました。

で、ビザンツ帝国が専門と公式プロフィールに書かれている
井上浩一先生の『生き残った帝国ビザンティン』。
ビザンツじゃなくてビザンティンなのね…。

「ビザンティン」は英語由来、「ビザンツ」はドイツ語由来、
いずれにせよ、どちらも後世での呼び名であり
当時の人々の意識では「ローマ帝国(の正統な末裔)」です。
ギリシャ語のギリシャ系人種でコンスタンティノープル在住ですが。

そんなビザンティン…は書きにくいし読みにくいから
ビザンツ帝国で行こう。ビザンツ帝国の本!です!

というか、良く考えたら、ビザンツ帝国って、
ローマ帝国分裂の際に誕生したことと、
最終的にオスマントルコに滅ぼされたことしか知らない。
1000年続いた国家なのに、最初と最後の印象しかない。
印象ゼロの千年国家…。

この本は皇帝のキャラを踏まえながら、
歴史の流れを説明してくれるので
感情移入しやすく読みやすいです。
ざっと読むだけでも他で読んだ歴史知識とコネクトして楽しい。

395年、ローマ帝国の東西分裂
412年、コンスタンティノープル名物の城壁工事。
フン族(ゲルマン大移動の原因になったつよつよ民族)の侵入に備えて。

6世紀、ユスティニアヌス1世時代には、
西方から蚕の密輸に成功!
主要産業の絹織物が始まる。
って、これは別の本で読んだアレじゃないか?
(522年にキリスト教僧侶が中国から蚕を盗んだエピソード)

622年、マホメットがイスラム教を開く。
以来イスラム教系アラブ人が勢力を増し、
領土を奪われまくっていく。

10世紀、ビザンツ帝国の最盛期。
初期の神聖ローマ皇帝が「ローマ皇帝って名乗って良い?」と
お伺いに来たりするの威光がある。意外である。
その後ゆるやかに衰退。

11世紀、アレクシオス1世は死にかけの帝国をギリギリ再建。
ローマ教皇に救援を求めて十字軍のきっかけをつくってしまう。

1204年、第4次十字軍がコンスタンティノープル占拠。
お前ら何しに来たんだよ。
で、13世紀にオスマン帝国誕生、
1453年5月29日、
メフメト2世によってコンスタンティノープル陥落
コンスタンティヌス11世は混戦の中で一兵士として戦死。
切ない。

ビザンツ皇帝は、それぞれで見ていくと
優秀な人材がたくさんいる。
でも歴史の中での「ビザンツ帝国」というポジションが
もう落ち目というか、環境がハードモードすぎるというか、
皇帝ひとりの力ではどうしようもない状態じゃん…。
でも首の皮一枚ギリギリ状態で生きてるじゃん…。
というしんどい時代が400年くらい続いている。
めちゃ切ない。

それはそれとして、
ビザンツ帝国側から歴史を眺めると、
やっぱりビザンツ皇帝たちを応援したくなるものですね。
私はなかなかちょろくて優秀な読者なのかもしれない。
コメント
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