思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『はじめての構造主義』 おもしろい「本質本」の代表

2023-04-19 15:52:48 | 日記
『はじめての構造主義』
橋爪大三郎

レヴィ=ストロースの親族研究、神話研究を
わかりやすい言葉で説明していくれています。
大変にありがたい本質本。

構造主義が登場する前の西洋文明至上主義からの流れ、
わかりやすいなあ。

人類学のこと。
ソシュールのおかげで前進した言語学のこと
(弟子への低評価がすごい笑)。
音素のこと。
数学(ユークリッド幾何学の絶対性から現代まで)のこと。

わかりやすくておもしろかった。

私がこれ以上構造主義を学ぶことはないと思いますが
(さすがにもう無理だ笑)
その意味でも、読んでおいて良かった。

冒頭、橋爪先生が若かりし東大生の頃、
リーバイ・ストラウスLevi Straussの広告を見て、
レヴィ・ストロースはこんなに流行ってるのかあ、
と思ったエピソードとか強すぎる笑
ずるいわ。


以下、メモ

<神の真理と数学の真理>
・ギリシャ人はやることないから、ずっと証明してる。
 で、ユークリッド幾何学に到達。
 貴族かよ!

・アラビア人はギリシャ人のように貴族じゃないので、
 商売をするかたわらで算術をする。代数学の発展。
 ゼロの概念もギリシャやイタリアに伝えてあげる、偉いね!

・デカルト、xy座標軸を発明する。
 これ、あなただったのですか?

・カント『純粋理性批判』
 ちょっと何言ってるのかわかりません。

・19世紀、非ユークリッド幾何学の発見。
 ガウス:双曲線幾何学
 リーマン:球面幾何学(リーマン幾何学)←エポニム?

・フランスの数学者グループ「ニコラ・ブルバキ」
 アンドレ・ヴェーユがレヴィ=ストロースの論文を手伝う。


<言語学>
・ソシュール、ジュネーヴ大学で『一般言語学講義』(1916)
 言語の「恣意性」、記号のシステム
 弟子のノートに対して橋爪先生、厳しい笑

・プラーグ学派(1920−1930)、言語論を研究するグループ
 トゥルベツコイ、「音素」を発見。
 ローマン・ヤコブソン、音素の三角形をつくる。
 ヤコブソン、アメリカでレヴィ=ストロースに影響を与えまくる。


<人類学>
・歴史主義、伝播主義、機能主義の限界。
 フレイザー『金枝篇』は伝播主義だそうです。
 古いのかあ。まあ、日本の項とか、けっこうまちがい多いもんな。

・モース『贈与論』クラ交換
 これ、ゆる言語学ラジオでもめっちゃ説明してたな。
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『メディチ家』 意外と脳筋かもしれない一族史

2023-04-18 18:40:06 | 日記
『メディチ家』
森田義之

講談社現代新書。
メディチ家の歴史を一通り俯瞰できる内容です。

イタリア人名って読みにくいしわかりにくいのだけれど、
何かとあだ名がつくのは覚えやすくてありがたいですね。

イル・ゴットォーゾ=痛風病み、
イル・マニフィコ=偉大な、
イル・ポポラーノ=民衆派、
みたいな呼び名がおもしろい。

メディチ家を大銀行家且つフィレンツェ有力市民として
確立した「称号を持たない実質上の王」は
コジモ・イル・ヴェッキオ。

イル・ヴェッキオ=老人。
おい。

あれかな?「始祖」的な意味なのかな?
純粋に「おじいちゃん!」なのかな…?

その後に続く絶頂期のメディチ家からは
レオ10世とクレメンス7世という、
ふたりの派手好き教皇が出ています。
ヴァチカンの宮廷化を進めた二人でもあるそうで。

この二人の頃は、フィレンツェが共和制になって
メディチ家が追放されたり、
フランスや神聖ローマ皇帝がイタリアにちょっかい出してきて
大変な時期でもあります。
それでも美術品の蒐集とパトロン業は欠かさない!
それがメディチ!

(ちなみにフィレンツェ共和制時代にソデリーニ体制下で
 役人としてがんばったのがマキアヴェッリ。
 だからメディチ家復帰後に再就職で苦労する。
 不器用なマキアヴェッリ…)

メディチ家といえば、銀行家で、派手好きで、
芸術パトロネージの一族。

メディチの人々がイベントごとに大盤振る舞いをする
いわゆる“演劇的祝典”は、
ルイ14世バロック期の「顕在的消費」のルーツらしいです。
おもしろいね!

メディチ家といえばカトリーヌ・ド・メディシス
(フランス宮廷にフォークとマカロンとテーブルマナーを
持ち込んだことで有名。息子は3アンリの戦いという
紛らわしいやつでヴァロワ朝最後の王になったアンリ3世)と
マリー・ド・メディシス(ルーベンスに描かせた自分美化史の
連作が有名。中野先生も失笑のやつ)。
女性はこの二人くらいしか有名人は出てないんですね。

ちなみに銀行家&芸術パトロンって、
知性と文化の香りしかしないじゃないですか。
その割に、身内に暴力沙汰や殺人沙汰が結構あるんですよ。
意外と脳筋な事件が多い一族でもある。
そこらへんも含めて、まるごとおもしろかったよメディチ家。
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『逃亡テレメトリー』 読んだ直後に新作待ちになる。好き。

2023-04-17 14:03:46 | 日記
『逃亡テレメトリー』
マーサ・ウェルズ
中原尚哉:訳

「弊機」が文句言いながらがんばるシリーズ第3弾。
第1作第2作はこちら)
このシリーズ、やっぱり好きだ〜。

表題作と、数ページほどの短編2作が収録されています。

『逃亡テレメトリー』は、
弊機がプリザベーション連合に落ち着いた直後、
ステーション内で殺人事件が起きる。
という中編。

警備ユニットへの偏見から操作がサクサク進まないけれど、
今日も弊機は奮闘する。
がんばれ弊機!
今回も愚痴っぽいぞ!
でも文句言いながらちゃんと働くのは偉いぞ!
はやくドラマに耽溺できるといいね!!
という温かい感情しかない笑

時系列としては、
第二作の『ネットワーク・エフェクト』の前日譚になるのかな。
贅沢を言いすぎだけれど、今回はARTが出なかった。残念。

このシリーズはまだ続くみたいなので、
新作待ちができるのはうれしい。
早く出ないかな〜。
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『ワン・モア・ヌーク』 東京2020で原爆テロって、切り込むな〜という小説

2023-04-14 10:18:27 | 日記
『ワン・モア・ヌーク』藤井太洋

超優良なお仕事小説だった『オービタルクラウド』作者による
2020年初版の作品。

ヌークは「核」ですね。

東京五輪直前、国立競技場建設予定地に核爆弾を仕掛けた
という予告動画が流れる。
「原爆テロ」をめぐる怒涛の三日間のストーリー。

おもいっきり「つい最近」が舞台ですね。
ザハ・ハディトのコンペ勝利案が急遽中止されて、
見積もり競合かな?みたいな不思議な勝ち方をした
国立競技場が舞台です。
背景やら思想やらデザインやら、
なかなかひどい書かれようである笑
(私もザハ建築を見てみたかった)

核爆弾と核融合は違うんだ、とか、
核爆弾が爆発する仕組みは意外とシンプル(怖い!)
(そういえば『まず牛を球とします』に収録されていた
『沈黙のリトルボーイ』でも解説されてたな〜)とか、
そっち系の学びもありました。

お仕事小説としては『オービタルクラウド』の方が
スカッとするかな。

とはいえこちらは東日本大震災と原発事故のその後に切り込んだり
外国人労働者問題をさりげなくガッツリ描きこんでいたり、
(相葉英雄『ガラパゴス』『アンダークラス』を彷彿とさせる)
取材力を感じる厚みがあった。
おもしろかった。
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『ハプスブルクをつくった男』

2023-04-13 11:55:35 | 日記
講談社現代新書『神聖ローマ帝国』
おもしろパワーワードを連発していた
菊池良生先生の本です。

その中でもだいぶ著者の愛着が大きめだった
「ルドルフ4世(1339−1365)」が主人公なのが
『ハプスブルクをつくった男』。

ルドルフ4世は「建設公」と呼ばれ
後に神聖ローマ皇帝を世襲するハプスブルク家の
基礎をつくったと言われる人。

ですが、彼自身は皇帝ではなくオーストリア公。
当時の皇帝はルクセンブルク家のカール4世。

カール4世の娘さんが、ルドルフに嫁いでいるので
舅と婿の関係でもある。

歴史的には、皇帝カールVSハプスブルク家ルドルフ
なのだけれど、この本を読んでいると
革新的で暴れん坊でトリッキーなルドルフの
斬新すぎる治世に振り回される国民&皇帝(舅)の図、
にしか見えない。

楽市楽座っぽい施策をしたり
貨幣改鋳権放棄と消費税導入など
当時としては新しすぎる改革をゴリゴリ進めるあたり、
織田信長みがある人である。

ハプスブルク家初期の暴れん坊ですが、
なかなか強烈な施策と歴史的偽書「大特許状」を繰り出し、
26歳の若さで夭折します。

惜しいな〜と思ったのだけど
15世紀の年代記作者トーマス・エーベンハルトが
『オーストリア年代記』に
ルドルフが長生きしていたら、オーストリアを天まで昇らせたか、
あるいは奈落の底までつき落としていただろう

と書かれているそうです。
いずれにせよ、歴史と国民をぶんぶん振り回すタイプ笑
なるほど〜、ちょっと早すぎたか〜。

ハプスブルク家よりすこし遡るホーエンシュタウフェン朝の
最後の神聖ローマ皇帝であるフリードリッヒ2世も、
先進的かつ偉大すぎたせいで次の代に続かなかったことを考えると、
歴史ってこういうことなのかな、と思う。

ちなみにハプスブルク家のフリードリヒ3世は
菊池先生曰く「神聖ローマ帝国の大愚図」である。
厳しい〜笑
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