思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『機巧のイヴ』世界観独特系ファンタジー

2022-04-08 14:33:39 | 日記
『機巧のイヴ』乾緑郎

立て続けに
「世界観の独創性」押しファンタジーである。

『機巧のイヴ』は帯に「時代劇×SF」みたいな書かれ方していて
ちょっと損しているんじゃないかな。
それだと山田忍法帖っぽく思われないか?私だけか?

どちらかというと、根底に王道SFの感じがある。
命はどこから来るか、とか、進みすぎた技術を人は使いこなせるのか、
みたいな骨太なSFが提起しがちな「深淵なる問い」みたいなものが
コアにあるというか。
まあ、適当なこと言ってますけど。

で、舞台は江戸時代のパラレルワールド的な、「天府」。
機巧人形(オートマタ)を巡る連作短編集。
なんか、ごちゃごちゃ言ってしまいましたが、おもしろかったです!

吉原の町が一つの建物にまとまったような「十三層」や、
女系が継ぐ「天帝」、船での出張サービスもしている「湯屋」に、
古代中国の伝統が元ネタらしいコオロギを戦わせる闘蟋(とうしつ)。

江戸時代にあったような、なかったような、
絶妙な文化が描かれていて、おもしろいです。

機巧人形の命はどこから来るのか?という問いはあるのだけれど、
そういう哲学的問いよりも、
各短編でのストーリーテリングや登場人物の意外性がおもしろい。

三部作らしいので、続きも読んでみよう。
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『煌夜祭(こうやさい)』ファンタジーノベル

2022-04-07 13:39:15 | 日記
『煌夜祭(こうやさい)』
多崎礼

中央公論新社が主催しているC★NOVELS大賞を受賞して
刊行された、作者のデビュー作。

C★NOVELSらしい(?)ファンタジーノベルです。
『スカイクロラ』を筆頭とする、
舞台が独特かつ説明してくれない系世界観というか。
偏った個人の感想です。

そんなレーベル受賞作なので、
世界観が不思議で独特で、いい感じです。

生物が住めない死海に浮かぶ、18の島。
王都のある島を中心に、その周りを囲む島々は周回運動をしている。のか?
それぞれの島のサイズも小さそう(人口数万人規模?)で、
遠望郷で隣の島が見えるという記述もあるので
群島が形成する円環もだいぶ小さいのかな?

蒸気に乗って島々を移動したり、
毒を吸う毒キノコと農業の共生関係があったり、
細かい設定がいろいろとおもしろいです。

とはいえ、この小さな世界の割に
軍隊規模だの戦争の頻度だのが、ちょっとバグっている感じもある。
群島の外の世界もあるだろうけど、どういう関係なのかな?
わからん。

まあいいか。

物語は、アラビアンナイト方式というのかな?
「語り部」ふたりが交互に語る、昔話のような、歴史のような、
連作短編か…と思いきや、同じ名前が出たぞ?となり、
現代に繋がってきて…というような構成。

物語の雰囲気はいいと思う。
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読書メモ】2016年2月 ② アーチャー!!

2022-04-06 10:03:10 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年2月 ②>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『誇りと復讐』ジェフリー・アーチャー
すごいおもしろい!
殺人の罪を着せられて服役した青年の復讐劇。
モンテ・クリスト伯かよ!
と思ったら、作中でも主人公が読んでいた。
おもしろいのは、主人公の青年が同房のニックの教育を受けて、
知識と教養をメキメキ吸収していくところ。
マイフェアレディかよ!
「復讐」の内容が、単純に痛い目に遭わせてやる、
というものではなくて…。
そこらへんも、まあ、いろいろ考えさせられる。
最高におもしろい!

(ジェフリー・アーチャーはイギリスの破天荒作家です笑

 若くして政治の世界に入ったかと思えば投資で失敗して
 借金まみれになったり。
 作家デビューの後もスキャンダルやら一代貴族に叙せられるやら
 実刑くらってプリズン入りするやら。
 浮き沈みが激しいというか、騒がしい人生の人である笑

 小説も、借金返済のネタをつかったり獄中記を書いたり、
 人生をしっかり換金している感じ。
 読みやすいストーリーで、スカッとする読後感で、
 おまけに作家本人がおもしろいという。

 いや、うまいんだけどね。
 作品の幅もあってすごい人なんだけどね。
 なんか、エンタメ感のある人物である笑)
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『ストーンサークルの殺人』良いミステリ!ゴールドダガー!

2022-04-05 18:45:03 | 日記
『ストーンサークルの殺人』
M.W.クレイヴン
東野さやか:訳

イギリスの田舎で起きた老年男性を狙った
連続殺人事件。

主人公は停職中のいわく付き一匹狼タイプの
ワシントン・ポー警部(降格して部長刑事)。
いいですね〜。

複雑な生い立ちを持ち、独特の正義感を持ち、
古いタイプの捜査をして愚直で粘り強い。
いいですね〜〜。

訳者が解説でハリー・ボッシュを引き合いに出していたけど、
ボッシュより良い奴ですよ、ポー部長刑事!
不正への怒りとか、不幸への共感とか、良い奴だと思う。
なによりも、ボッシュほど女を見る目がなくないし、
ボッシュほど老害コースでもない笑

捜査の経緯や、謎が謎を呼ぶ理由、
真犯人の心理など、すべてが「わかる!」と思える
よくできたプロットです。
猟奇的な殺人の割に、読後感も悪くない。

主人公のポーが、調書を読みながら、
児童虐待していた義母の悲惨な末路を読んで満足した風な描写とか、
ソーシャルワーカーの女性に寄り添う言動とか、
「いわゆる正義ではないかもしれないけれど、私は共感する」
部分があちこちにあって、良い意味で気になっていた。
そして回収された。
なにこれ、すごいじゃん!!

イングランド北西のストーンサークルがたくさんある
カンブリア地方の雰囲気も良いですね。
湖水地方と呼ばれて、風景とともに石造りの建築物も有名。
というか、ピーター・ラビットの舞台と言った方がわかりやすいですね。
あの風景です。

英国推理作家協会最優秀長篇賞、
通称ゴールド・ダガー賞受賞作。
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『わたしに無害なひと』韓国純文学

2022-04-04 16:43:28 | 日記
『わたしに無害なひと』
チェ・ウニョン
古川綾子:訳

Amazonとかで見ると、本のタイトルが
『わたしに無害なひと となりの国のものがたり5』
となっています。
ん?十二国記みたいなシリーズものか?
サブタイトルが表紙には入ってないけどな…
と思ったら、「となりの国のものがたり」は、
亜紀書房が出版する韓国文学のシリーズ名でした。

というわけで、『わたしに無害なひと』は、
これだけを手に取って読んでも問題なし。
韓国人作家による、若者の葛藤を描いた短編集。

冒頭に収録されている
10代の少女同士の恋愛を描いた『あの夏』は
韓国の第8回若い作家賞受賞作だそうです。

どの作品も共通して、なんというか、
読者の若い頃への後悔や不安や切なさ恥ずかしさに
ぐいぐいアプローチしてくる物語。
つまり私が苦手なやつ。
ほっといてくれ。

まあ、未熟な若者のすれ違う恋愛模様や、家庭内暴力、不和、
姉妹の圧倒的すれ違い等、テーマにエッジが立っている一方で
語り口がとても静かなのは、うまいと思う。

まあ、しかし、今更ほじくり返されたくない
心の柔い部分にぐいぐいくる。
ほっといてくれ。
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