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『金・銀・銅の日本史』 赤銅色は赤黒くないぞ!

2024-09-06 15:02:52 | 日記
『金・銀・銅の日本史』
村上隆

主に日本の遺跡から発掘された
金属製品にまつわる分析や研究のお話し。

そして落ち着いてほしい。

作者は現代アーティストではありません。
立派な学者です。

村上隆(むらかみりゅう)先生です。
漢字も読みも紛らわしいお名前ですが、
工学と美術研究を専攻し
材料科学の見地から歴史材料学を専門にしている先生である。
石見銀山資料館名誉館長だったり、
正倉院宝物や法隆寺宝物の鑑定をしたりする先生なのである。

ついでにこの本は岩波新書の新赤版である。
(文庫と違って色はジャンルでなく年代で分かれている。
 岩波新書は背表紙には色がついていない。
 申し訳ないが本棚に並んでいてもテンションは上がらない。失礼)

なんか文句ばかりに見えないか心配になってきた。
いや、この本、おもしろいんですよ。

いろんな遺跡の出土品調査に関わった先生が、
その経験値を一冊にまとめたって感じです。
なので「日本史」を期待するとそうでもないのだけれど、
金属という観点から歴史を垣間見ることができるのは
なかなかおもしろい視点です。

日本の古いお金といえば「和同開珎」を習うじゃないですか。
これよりも古いのが「富本銭(ふほんせん)」。
銅とアンチモンの合金でできているそうです。
というか、アンチモンてなんだっけ?となりました。
私、高校から理系クラスなのに。
(アンチモンは元素番号51、元素記号Sb。周期表に堂々載っているレアメタル)
スズ(元素番号50)に似ているが毒性はスズより高いそうです。
古代の貨幣職人さん、大丈夫かな。

そして、これよりもさらに古い、日本最古の銭と呼ばれているのが
「無文銀銭(むもんぎんせん)」。
日本書紀でも触れられているそうで。
和同開珎が最古だと思っていたぜ…。

銅の化合物も、歴史の本や小説を読んでいると
登場頻度がめちゃ高いのに、よく考えたことなかったんですよね。

<青銅>
銅―スズの合金。
古代人類が持ちえた中で最も安定した合金。
スズが多く白味を帯びたものを「白銅」と呼んだらしい。
(現代で言う「白銅」は銅―ニッケル合金)
銅にスズ20%の組成「佐波理(さはり)」は
正倉院や法隆寺の銅製容器に見られ、新羅から来たと言われる。
胡(中国より西方)由来説もある。

<黄銅>
銅―亜鉛の合金。
日本では16世紀後半から見られる。

<赤銅(しゃくどう)>
銅に金を3~5%加えたもの。青紫がかった黒色。
烏の濡れ羽色を想起させるので「烏金」とも書く。
え?赤銅色の肌って、日焼けで真っ赤っか、みたいな色じゃないの?!
ずーっと勘違いしてた!恥ずかしいな!!

<四分一(しぶいち)>
銅に銀を25%加えたもの。いぶし銀のような色。銀灰色。

あと、「蛭藻金(ひるもきん)」という
金箔みたいに薄く延ばした金の話しが面白かった!
重さ=価値である秤量貨幣(ひょうりょうかへい)として
「じゃ、この重さで」と、切って使った形跡がある。
なにその買い物、おもしろそう。やりたい。

遺跡のゴミ捨て場の話しとかもあり、
古代の生活感溢れるシーンが垣間見れて
ついでに久しぶりに周期表も見直せて
良い一冊!

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