思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『犯罪者』すごい!おもしろい!

2022-02-17 11:55:35 | 日記
『犯罪者』太田愛

これ、少し前から気になっていたのです。
何かの賞に入ったわけでもないのに
ブクログが4.3とかの高評価で。
何者?何事?と思っていたわけで。
読み始めたら、とまらないとまらない。
これはすごいわ〜となります。

特に上巻のジェットコースター感がすごい。
二転三転しながら謎と新事実が惜しげもなく投入されるあたり、
圧巻です。

しかも登場人物のディテールが良い。
ちょっとしたセリフや仕草が良いんですよねえ。
オッサンって呼ばれてちょっと凹むとか。
正論パンチに対して、哀れみで切り返すとか。
挙動の芸が細かい。

作者はこの作品が小説デビュー作らしいのですが、
元々がテレビドラマの脚本家で、
さらに元々が小劇団の脚本を書いていた方なんですね。
人物のつくりこみというか、「人となり」が細かいのは
そこらへんで培われた能力なのかな。

読んでいてとても楽しかったです。
次作以降も登場人物が継続するらしいので、
刊行順に読み始めて正解だった…!!
(私としては珍しい)

余談ですが、
この作品に限らず
「現代日本で大企業や政治家の巨悪を暴く」
をテーマにすると勧善懲悪にはなりにくいですよね。そうよね。
『震える牛』『ガラパゴス』なんかもね。そうよね。
とはいえ『ワイルド・ソウル』くらい、
スカッとしたのもたまにあるし、良いよね。そうね。
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『孤高の人』新田次郎

2022-02-15 17:01:03 | 日記
新田次郎氏は「山岳小説」の先駆者でもあるそうです。
私は20代半ばで一度だけ富士山に登りましたが、
「一生に一度の経験だな(良くも悪くもな!)」
と思いました。
いつか高尾山のビアホールに行くのが夢です。

それはさておき、私には縁遠い「山」の小説。
新田次郎も読んだこと無かったし、と思って
なんとなく読んでみた。

『孤高の人』は、不世出の登山家・加藤文太郎の人生を描いた小説。
主人公は実在&実名です。
え、そうなの?
令和のご時世では無さそうな話である。

主人公の登山記録も実際の山行に沿っていますが、
それ以外の人間ドラマ的なところはフィクションです。
そうなの?
フィクションとノンフィクションのバランスが不思議な作品である。

作者の新田次郎は元々兼業作家で、気象庁に長年勤務しています。
富士山頂観測所(!)にいた頃に
富士山をスタスタ登頂する加藤文太郎本人に会ったのだとか。

加藤文太郎が亡くなったのは1936年。
新田次郎が気象庁を辞して専業作家になったのが1966年。
『孤高の人』出版は1969年です。

作者の、山が好きで加藤文太郎が好きという情熱が感じられる小説!

ですが、若干、長いよね…!
山行描写が細かいのは『山と渓谷』の連載小説だからさもありなん。
しかし、人間関係部分が、薄い割に長い気がしたな。
うーん。

とはいえ一人の男の人生を淡々と描ききるというのは
こういうことなのかも、とは思う。
おもしろかったし。

とはいえとはいえ、加藤のコミュ力の無さと学習能力のなさは圧巻ですよ笑

相手を怒らせたって自覚してるなら、下手なりに謝ろうよ。
言葉が下手でも誤解を解くために何かを発しようよ。
笑顔が下手すぎて「冷笑に見える」って、あんた。
どこかで気づこう????直そう????

上下巻の長きに渡って、ずっとこのレベルなので、
心配を通り越して説教したくなる。
それ、絶対に加藤に嫌われるヤツだけど。
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【読書メモ】2015年12月 ② 『有頂天家族』2回目

2022-02-14 09:47:06 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年12月 ②>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『有頂天家族』森見登美彦
2009年3月に図書館で借りて初読。
好きすぎるので、文庫を買い置きしておいた。
仕事で青葉台まで行くので電車内読書で、再読。
好きすぎてつらい。ふはふは!毛玉!
続編がハードカバーで出ているらしい。
でもぶ厚いらしい。重いのか…。
でも買おうかな…。

(初読はここですね。
 何かと図書館を使う私ですが、
 森見作品は結局、全作購入しています。
 というか頭ポンコツだから、うっかり2冊買っちゃったりしてる。
 後悔はない。
 ちなみに続編は『2代目の帰朝
 3作目、まだかなあ。

 余談ですが、友人の実家が哲学の道のすぐそばらしいのです。
 試しに『太陽の塔』の下宿近辺の描写をメールで送ったら
 「私の小学校時代の通学路だよ」と。
 なにそれ超うらやましい!!!実家、遊びにいかせて!!!
 大変、興奮いたしました)
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【読書メモ】2015年12月 ① クライシスノベル?

2022-02-09 16:59:26 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年12月 ①>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。

『M8(エムエイト)』高嶋哲夫
東京直下型大地震がテーマの小説。
クライシスノベルというらしい。
当然というべきか、東日本大震災を思い出すけれど、
この小説の初版は2004年だ。すごいな。
2011年の大震災のとき、私は都内のオフィスビルにいたし
危機感も漠然としていたのだけれど、
こういう本を読むと改めて怖いと思う。
前半の瀬戸口くんがシミュレーション予測を信じてもらえない!
というパートはすこし冗長なのだけど、
地震の後のいろんな人の視点から被災シーンを切り取る後半戦は
ぐいぐい読める。そして怖い。

(これは東日本大震災前に書かれた小説なのですが、
 95年の淡路大震災を経験した3人が主人公のお話し。
 作者も神戸に住んでいたことがあるようです。
 市井に生きるひとりの人間の、震災からの学びがすごくリアル。
 そして学閥やら政治家やらの腰の重さもリアル笑

 それはさておき、
 「クライシスノベルというらしい」って、
 誰に聞いたんでしょうね、当時の私は。
 あまり調べても出てこないし、定義も曖昧っぽいのだけれど
 ”『日本沈没』を思い出す小説”といえば当たらずとも遠からずか。
 とはいえ最近だとパンデミック系の小説を指すのかも。
 
 と考えると、この作者の『首都感染』(2010)も
 いわゆるクライシスノベルなのか。
 現在のコロナ禍を連想させる作品らしいので、読んでみようかな)
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『時をかけるゆとり』朝井リョウ

2022-02-07 09:13:08 | 日記
『時をかけるゆとり』朝井リョウ

この人の作品、読んだことないんです。
話題なのにね。すみません。
しかしまあ、『桐島、部活やめるってよ』を書いたのが
20歳らしいですね。すごいわ。
しかも同窓生じゃないですか(学部が違うけど)。

というわけで、
『時をかけるゆとり』は作者が学生時代のことを綴ったエッセイです。

100キロハイク(もちろんスタートは本庄である)や
学祭を楽しんでいる話などがあって、
羨ましい限りである。
私の学生時代の思い出と全然違う笑

ユーモア全開ながらも、結構、大人な視点を持っているというか、
熟考して文章を書いている感がある。
そして笑える。
うまい人なんだな〜。

自転車で東京〜京都なんて、無謀な青春ど真ん中!って感じで
めちゃくちゃ憧れますが、
痔が爆散するところまで読んでしまうと
ヤメておくわ…と思います。

ちなみに作者は男性最年少の直木賞受賞作家。
中学生の頃に、当時19歳だった綿谷りささんの
芥川賞受賞のニュースに触れ、
小説家になりたいというのは手の届かない夢ではないのだと
衝撃を受けたそうです。

夢は夢じゃないと気づけるのって、大きいですよね。
良い話である。

まったくの余談ですけど、
そんな作者が通う講座の先生である堀江敏幸氏は
最近の学生に「何が書きたいの?」と聞くと「小説家になりたい」と言われて困る
と、ラジオで言ってました。
良い話である。
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