思惟石

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山本幸久『笑う招き猫』なんか、元気になれる!

2019-11-01 11:03:19 | 日記
山本幸久『笑う招き猫』です。
第13回小説すばる新人賞(2003)を受賞した、
著者のデビュー作。

駆け出しの漫才コンビ「アカコとヒトミ」の
一年ちょいを描いた物語。

駆け出しと言いつつ28歳、若くないですけどね…。
大学卒業後、3年ほどしてコンビを組み
なんとかちっちゃ~い事務所に所属できて
マネージャーもつき(と言っても所属芸人ほぼ全員掛け持ち)、
一年ほどが経った今…、というところ。

ふたりのキャラが良いのです。
ノッポのヒトミと、豆タンク体型(ってよく考えるとわからん
表現だけど)のアカコ。
ふたりが良い感じに言い合いしたり、いちゃこらしたり、
けなしあったり、チャリに二人乗りしたり。
なんか、元気良いなあ、お前ら!あと仲も良いな!
というほっこりした気分になれます。
私のような通勤読書人は、読むだけで
元気のおこぼれをもらえます。ありがたやぁ。

まあ、でも、28歳ですよ。
アカコは裕福な家の「家事手伝い」身分だけど、
ヒトミはバイトしながら狭いアパートで独り暮らし。
金無し、恋人無し、社会的評価も無し、という無しづくし。
大丈夫かお前ら!

と冷静な部分では心配しちゃうんですが、
その割に、二人が明るい。良い感じ。
漫才を楽しんでいて、ネタづくりも楽しんでいて、
なんというか、明るいトーンで読めます。
今が良ければきっとこの先も大丈夫だ!という気分に
ならないこともない。

いや、なかなか周囲の状況は笑いごとじゃないんだけど。
相変わらずの、無しづくしだけど。

おまけに、頼れるマネージャーがいなくなったり、
この先どうすんだよ!って感じの終わり方なのに、
読後感も良いんですよね。
なんでだろ。
ずるいなあ(誉めてます)。

おまけにおまけに、文庫の解説は片桐仁です。
なんか、作者の印象まで良くなるナイス解説です。
(作者は元編集者で、ラーメンズの連載の担当をしていたそうな)

イヤミスとかで心乱されるのがイヤだ!という人(私です)におススメ。
コメント
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