思惟石

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『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』ちょうどブレードランナーの今に

2019-11-27 17:06:24 | 日記
フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
朝倉久志訳のハヤカワ文庫1994年版で読みました。
初版は1968年、邦訳は1969年(文庫化は1977年)、
あの有名すぎる映画『ブレードランナー』は1982年です。

原作と映画はだいぶ異なる内容ですが、
あの映画の舞台は2019年11月のLAなのです。
あれ?今じゃん!
今まさにリックが酸性雨降りしきる多国籍都市 LAで
レイチェルに翻弄されながらアンディー(映画ではレプリカント)を
追いかけてるのか!!
なんたる偶然。

いや、まあ、小説は映画とはだいぶちがうんですが。
こういうのがあると読書のテンションも上がるもんですね。

ざっくりストーリーは警察に所属する賞金稼ぎのリックが
逃亡アンドロイド8体(うち2体は処分済み)を
追いかけるというもの。

アンドロイド技術はものすごく進化していて、
もはやパッと見では人間との区別がつかないレベル。
見分ける方法としては「フォークト=カンプフ感情移入度測定法」
というものが用いられています。
質問項目は生命動物に対する感情の希薄さだったり、
共感性を問うているものが多いイメージですが。
なんか、知能パワーで偽装できそうなファジーな内容だし、
アンディーにはもはや感情がしっかり芽生えているのではと思える言動が多く、
小説内の社会はとっくに危うい状態な気がします。

孤独を癒す共鳴ボックスだの、感情をコントロールする情調オルガンだの
本物そっくりの電気羊を必死に世話して飼うだの、
生産性ないなあって思ってしまう日々を送っている人間たちに対し、
たった4年しか寿命が無いのにも関わらず
命がけで火星を脱出して自由に生きようとするアンディー
という皮肉な対比も気になります。

(アンディーにも、やっぱり、誤魔化しようの無い情緒的欠陥があるのだけど)

レイチェルも、なんというか、めちゃくちゃ複雑な心理構造だよなあ。
すでに「感情」はあるけれど、「感情移入」が苦手、ということなのかな。
それって処分しなければならないレベルなのかな。

考えちゃいますね。
作者に見事に転がされてるのかな。

何はともあれ、この年のこの時期に偶然読んだのは
良いことだったと思う!よかった!
コメント
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