思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

津村記久子『この世にたやすい仕事はない』仕事との良い距離感とは

2019-10-21 14:46:45 | 日記
裏表紙にて、
職業紹介所で「コラーゲンの抽出を見守るような」仕事が
あるかと聞いてみたところ、「ある」と言われ…。
みたいな内容紹介がなされていて、
なんとなく、そういうレア職業を巡る著者のエッセイかな?
と思ってしまった。
村上春樹と安西水丸の『日出る国の工場』みたいな。

そんなわけはなく、ちゃんとした小説でした。

しかし登場する職業はどれもこれも
「コラーゲンの抽出を見守るような」
なんだかヘンテコな仕事ばかりである。

監視カメラでひきこもり小説家の一日を見張るとか、
バス停留所周辺の店を紹介するアナウンスを書くとか、
なんの意味もなさそうなポスターをひたすら張り替えるとか。

ちょっとヘンテコな仕事を、淡々と、真面目に、
真正面から向き合う主人公が、また、
ちょっとヘンテコなんだけど、良い味を出している。

新卒で10年以上勤めた会社を「バーンアウト」して辞め、
職業紹介所で紹介された仕事を皮切りに5つのヘンテコ仕事を
渡り歩く36歳・女・実家住み。

職業紹介所の職員に「仕事との適切な距離感」が大事
とアドバイスされているものの、
どの仕事でも、自分と仕事の「距離」をはかりつつ
「やりがい」「よろこび」と「苦悩」みたいなものを
マジメに考察して、取り組んでいる。

そこはマジメに取らなくていいんじゃないか、と思うことも
ちゃんと考えたり、行動したり。
素直に、えらいなあと思えてしまう。

どんな仕事にも、いいとこわるいとこあるし、
自分なりにちょうどいい距離感を、一人ひとりが見つけるしかないな。

ということをしみじみ思いながら、
それはさておきで、
今日も「仕事したくないな~…」と思いながら電車に乗ってます。

2015年の芸術選奨新人賞を受賞。
って、もはや新人じゃない気もするけど。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【読書メモ】2011年6月 ④ やっちまった

2019-10-18 10:03:34 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年6月 ④>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。

『文藝 大草原の小さな家』森見登美彦
雑誌「文藝」が森見登美彦特集だったので買ってみた。
『美女と竹林』『四畳半神話体系』に出ている
“明石氏”との対談がおもしろかった。
実在の人だったんか。
やっぱり京大の人は変な人多いな。
『大草原の小さな家』は『新釈走れメロス』の海外女性作家版とのこと。

(これは『文藝 2011年5月号 特集・森見登美彦』を
 出版当時に買った際の、私の感想です。

 ちなみに…
 『太陽の塔』を今年に再読した際も、
 私は明石氏(仮)とのインタビューに言及しています。
 驚くなかれ。これは、2019年に発売されたムック
 『別冊文藝 総特集・森見登美彦』を読んだ際の感想なのです。

 そうです。
 2011年の文藝を読んだ記憶が、きれ~に、消えているのです。
 そして再読とも気づかず、同じような感想を、バカみたいに述べているのです。
 ある意味、安定感があるな!

 やっぱり私の脳みそはすごい!
 すごいぽんこつ!!!

 もちろん『大草原の小さな家』も、
 2019年版のムックでも読みましたよ!
 再読だと気づかずにね!!!
 やばいね!!!)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

円城塔『道化師の蝶』おもしろかった。よくわかってないけど。

2019-10-17 12:45:29 | 日記
『道化師の蝶』と『松ノ枝の記』の2篇が収録されています。
表題作で、第146回芥川賞受賞。

どちらも、ちょっと難解なトーンではあるものの、
結構おもしろく読めます。

『道化師の蝶』は、多数の言語で物語を紡ぐ友幸友幸という
謎の作家(女性か?)と、
思索の蝶をつかまえる実業家と、
友幸を追うエージェントの語り?翻訳?
が錯綜する話し。
と言われてもよくわからないと思います。
読んでるこっちもよくわかってないのです。
でも、読書として楽しめます。
ふしぎ。
この話者は誰だっけ?性別はどっちだ?という混乱も多々あって、
良い感じに混乱しながら読めます。

『松ノ枝の記』は、小説家であり翻訳家である「私」と、
互いの書を翻訳しあう「松ノ枝(仮称)」との、
やっぱり錯綜した話し。
ちなみに相互翻訳のきっかけになったのは、
海外でたまたま見つけて面白かった松ノ枝の本。
その内容はタイムマシーンが出てきて自分自身を撃ってしまう的な。
って、なんかデジャヴ!
というのも当然で、ここだけ実話だそうです。
円城塔が訳したチャールズ・ユウ『SF的な世界で安全に暮らすっていうこと』
を発見した際のエピソードである。

円城塔氏、『SF的な~』に関するインタビューでも
マイペースに語ってますが、
なんか、難しいことを全部理解しなきゃいけないとか、
全然ないみたいなスタンスみたいで。
個人的には、この小説もそんな感じで難しく読み解かずに
楽しく読み流せばいいのかなあという感想です。


『SF的な~』を読んだ際にも

「わからんけど、まあ、わからんなりに楽しめた!」
という同様の感想を抱きましたが、
円城氏、自分とチャールズ・ユウを「どっか行っちゃう系」
ということで同方向だと認めてます。
ふむふむ、方向的に似てると思いますよ。

そんな塔&ユウがお好きだと言うパワーズとやらは
さらにエモくてボンクラらしい。
絶対に理解できないと思うから読まないけど。

『道化師の蝶』もおもしろかったけど、
『SF的な~』のインタビューがめちゃくちゃおもしろい。
よくわかってないけど。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【読書メモ】2011年6月 ③ 二笑亭を知ってますか?

2019-10-11 14:02:56 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年6月 ③>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。

『二笑亭綺譚』式場 隆三郎
式場先生はゴッホを日本に紹介したり、山下清を見出したりした
精神病理学と芸術の関係に興味を持っていた人。

(<二笑亭>は、深川に実在した奇想天外建築です。
 その記録が、式場隆三郎『二笑亭綺譚』(1939)ですが、
 現在手に入るのは、藤森照信、赤瀬川源平らによって
 再構成された『定本 二笑亭綺譚』か『二笑亭綺譚―50年目の再訪記』です。
 私が読んだのは、「定本」だったはず(手元に無いけど…)。
 「定本」も「50年目」も絶版中っぽいですね。

 <二笑亭>は、シュヴァルの理想宮と同様で
 とある個人の異様な情熱と執着による怪建築です。

 深川の地主である渡辺金蔵氏が
 関東大震災後に、自ら大工に指示を出しながらつくった個人宅。
 これ系の建築のセオリー通り、
 手さぐり&試行錯誤&手作り(エンドレスループ)で
 竣工までにめちゃくちゃ時間がかかります。
 というか、永遠に竣工しないんじゃ…的なやつ。

 さらに、こちらはシュヴァルと異なり、
 呆れて別居していた家族に
 病院へ強制入院させられ、強制終了。
 その後、さくさくっと取り壊されてしまいます。
 「これはオモシロ建築だぞ!」と嗅ぎ付けた
 式場隆三郎によって撮影&調査資料が残っているのが奇跡!
 ありがとう式場先生!!)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【読書メモ】2011年6月  ②

2019-10-10 13:42:53 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年6月 ②>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『ニシノユキヒコの恋と冒険』川上弘美
ニシノユキヒコが付き合った女性たちのモノローグ集。
って、どんな人間離れした男だ!と思って読んだら、
とても人間臭いニシノ氏が様々な角度で描かれていて、楽しい。

(楽しいですよ!)


『海のある奈良に死す』有栖川有栖
「海のある奈良」が小浜だと知らず、
そもそもの設定にしばらく気づけなかった…。

(<作家アリスシリーズ>の長編ものです。
 動機や人物造形に文句をつけつつ、結構読みやすくて
 立て続けに読んでいました)


『私は赤ちゃん』松田道雄
赤ちゃんの視点で書かれたエッセイ。
1960年に出版されたものなので、知識としては古いけど(団地族!)
赤ちゃんの気持ちはすごくよくわかる。かわゆい。

(かわゆいですよ!)


『建築探偵 奇想天外』藤森照信
久しぶりに読んだけど、勉強になりますな。

(東大名誉教授でもある建築探偵・藤森照信先生の
 為になって面白い、建築紹介本です。
 ※実在の人物ですよ。小説じゃなくて。
 建築探偵は藤森先生の肩書みたいなもんなので、
 ちくまやら朝日やら色んな出版社に似たタイトルの本がありますが、
 これは『建築探偵 + 四字熟語』のシリーズです。
 東奔西走、雨天決行、神出鬼没、奇想天外の4冊だと思います。
 学生時代に一通り読んだはずですが、
 手元には一冊も残ってないという私あるある。
 というか絶版になってる…?ちゃんと保管しておけば良かった…!!!
 近ごろ、このパターンが多いな)


『キッドナップツアー』角田光代
読まず嫌いだったけど、悪くない。
少なくとも夫よりは良い。

(夫ではなく、元夫ですね。まちがってすみません。
 しかし、この元夫婦の作品は、どちらも、
 イマイチぐっと来ないんだよなあ…。なんでだろう…)


『仏果を得ず』三浦しをん
文楽の話し。おもしろかった。文楽も観てみたいな。

(氏の文楽ラブエッセイ『あやつられ文楽鑑賞』と
 併せて読むと100倍楽しめます!
 あ、『仏果を得ず』は、一応、青春小説です)


『十二国記 風の海 迷宮の岸』小野不由美
<十二国記シリーズ>を時間ができたら読んでみようと思ってた。
これはまあまあ面白かったのだけど…。
『月の影 影の海』は途中で放棄。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする