思惟石

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『突然ノックの音が』 扉を開けると物語が始まる

2024-02-14 11:29:33 | 日記
『突然ノックの音が』
エトガル・ケレット
訳:母袋夏生
(新潮クレスト・ブックス)

カバー裏側の惹句
(「さりげない始まり。大胆な展開。あっという間のエンディング」)
のとおりで、一編が3ページくらいのものもある、
超超短編。
38篇収録。

カラッとした文章。
奇抜な設定&展開。
なのに心の不思議なところを抉ってくる。
この人は凄い人だなあ。

そして途中まで読んで気づいたね。
この本、読んだことあるわ…。

と気づいたのは4作目の『セミョン』だった。
一度しか会ったことのない(偽装)結婚相手の
死亡を知らされる女性の話。
ぜんぜん自覚無いところから、
ちょっと切なくなる流れがすごく胸にくる。
これは印象的な名短編だと思う。

あと良かったのは、以下。

『嘘の国』
どうでも良い言い訳で嘘ばっかついてたら、
その嘘(親戚の叔父さんが事故にあって的な)の国に
落っこちてしまった青年の話し。
キレがあって、切なくて、すごく良い。

『創作』
妻が創作教室で書いた物語の概要を夫が語るのだけれど、
そのプロットだけでもめちゃくちゃ面白い。
作者、天才かな。

表題作も、偽装結婚をした『セミョン』も他数篇も同様、
ドアが開くところから物語が展開します。
訳者あとがきでもドアを開ける描写の多さ、
「突然のノックの音」で様々な現実(もしくは不思議)と
対峙することを書いている。
いやあ、すごいなあ。

前回、ケレットのエッセイを読んだときも
この小説を読んだ記憶が喪失されていたようだけれど
良い小説は、まあ、何度読んでも良いよね!

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