沖至『夜の眼』(off note、2015年)を聴く。
Itaru Oki 沖至 (tp, 横笛, 縦笛)
Naohiro Kawashita 川下直広 (ts, vln)
Miki Tsukamoto 塚本美樹 (p)
Takayuki Hatae 波多江崇行 (g)
Kiyoshi Mamura 間村清 (b)
Keiichiro Uemura 上村計一郎 (ds)
まずは川下直広のテナーが悶える。川下さんリーダーのワンホーンでの演奏とはまた違ったように悶える。とは言え聴くたびに予想を超えてくる濃淡の大きさ、呼吸そのものを音楽にした感覚、ああこれだこれだと納得する。
沖さんの過去の作品は割と聴いているはずだが、それらの華やかさから一度も二度も爛熟し、腐敗し、またさまざまな色の花を咲かせたように聴こえる。強烈な香りも周りの草や泥や落ちて腐っている花の匂いも漂ってくる音。3曲目「My One and Only Love」が終わり、そのまま「Darn That Dream」に入っていったあとのトランペットなんて沁みる(それに限らず)。
「My One and Only Love」や「Soul Eyes」での波多江さんのソロは小さな空間のむんとした空気に音が混ざっていくようであり、とても良い。「The Girl from Ipanema」で皆と絡み溶けていくギターにも惹かれる。「Misty」での川下さんの濁りを受けての濁ったギターも良い(そしてピアノが入ると見事にギターの音を変える)。
「Ipanema」は、川下さんは『いぱねま』(2000年)でも演奏しており、それが不破さんらとのトリオであるためかテナーをより狂わせてゆくのに対し、本盤では共演者とともにじわじわと味を積み重ねていく。どちらも好きである。それにしても両盤とも福岡のニューコンボでの録音なのか。行ってみたい場所だ。
2枚目の「I Remember Clifford」ではピアノのコードを開いて受け止め、やはり有機生物の艶をもつトランペット。アンコールに応えての「Lush Life」ではトランペットが震えながらはじまるが、それはさらに深く震え続けて静かに驚かされる。静かに受け止める波多江さんのギターの歪みや和音、静かに音を重ねていくピアノがその場の空気を伝えてくれるようである。
Naohiro Kawashita 川下直広 (ts)
Kazuhiko Okumura 奥村和彦 (p)
Daisuke Fuwa 不破大輔 (b)
●沖至
詩×音楽(JAZZ ART せんがわ2018)(JazzTokyo)(2018年)
沖至+井野信義+崔善培『KAMI FUSEN』(1996年)
●川下直広
波多江崇行+川下直広+小山彰太(Parhelic Circles)@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2018年)
原田依幸+川下直広『東京挽歌』(2017年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2017年)
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』(2017年)
川下直広@ナベサン(2016年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2016年)
渡辺勝+川下直広@なってるハウス(2015年)
川下直広『Only You』(2006年)
川下直広『漂浪者の肖像』(2005年)
川下直広+山崎弘一『I Guess Everything Reminds You of Something』(1997年)
『RAdIO』(1996, 99年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(1988年)
●波多江崇行
波多江崇行+加藤一平@なってるハウス(2018年)
波多江崇行+川下直広+小山彰太(Parhelic Circles)@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2018年)
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』(2017年)