Sightsong

自縄自縛日記

イーサン・アイヴァーソン w/ トム・ハレル『Common Practice』

2019-10-21 21:24:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

イーサン・アイヴァーソン w/ トム・ハレル『Common Practice』(ECM、2017年)を聴く。

Ethan Iverson (p)
Tom Harrell (tp)
Ben Street (b)
Eric McPherson (ds)

もちろんイーサン・アイヴァーソンもベン・ストリートもエリック・マクファーソンも気が効いていてカッコよくて素敵である。そんなことはわかっている。しかしもっとはじめからわかっているのはトム・ハレルがトム・ハレルであることだ。もう主役は決まりであり他の腕利き3人の影はどうしても薄くなるのは仕方がない。

トム・ハレルのトランペットは、ナチュラルに震え、雲を作り、妙なところから吹き始めて妙なところに着陸する。奇妙な円環、その繰り返しのスタンダード集。ひとりでスタンディングオベーションをしている、泣き笑いしながら。

●イーサン・アイヴァーソン
アルバート・"トゥーティー"・ヒース『Philadelphia Beat』(2014年)

●トム・ハレル
トム・ハレル『Infinity』(2018年)
トム・ハレル『Something Gold, Something Blue』(2015年)
トム・ハレル@Cotton Club(2015年)
トム・ハレル@Village Vanguard(2015年)
ジョン・イラバゴン『Behind the Sky』(2014年)
トム・ハレル『Trip』(2014年)
トム・ハレル『Colors of a Dream』(2013年)
デイヴィッド・バークマン『Live at Smalls』(2013年)
ジム・ホール(feat. トム・ハレル)『These Rooms』(1988年)


酒井俊+纐纈雅代+永武幹子@本八幡cooljojo

2019-10-21 07:49:58 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/10/20)。

Shun Sakai 酒井俊 (vo)
Masayo Koketsu 纐纈雅代 (as)
Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)

最初の「It's A Most Unusual Day」で驚いたのは纐纈雅代のアルト。歌伴らしくもなく、ソロでもなく、隙間にがっちりと入ってライヴをいきなり高みに持ち上げた。続く「There Will Never Be Another You」での熱に浮かされたような音色のアルト、次いで俊さんがゆっくりとためるヴォイス。永武さんが入って、アルトは(敢えて)音が割れるのも厭わず強い。会いたいという想いの語りから入るトム・ウェイツの「Martha」、永武さんのキーボードとのマッチングが面白い。アルトは終わりにかすれ、静かに泣くよう。

前回知って驚いたことは、俊さんが齋藤徹さんと一時期毎月のように共演していたということだ。その徹さんの「街」では、散歩するように跳ねるピアノから入り独特の世界を創り上げた。いちばん好きなレパートリーだと俊さんが語る「Both Sides Now」では、アルトのエネルギーを受けとめるように声を強くしていった。「Beautiful Love」でも纐纈さんは印象的で、息を抜くことで強弱を付けた。

そして林栄一「回想」。俊さんは林さんに「ナーダム」とともに歌詞を付けてくれと頼まれ時間がかかっていたのだが、歌詞の世界について林さんにあらためて聴いたところ「だから色々あるじゃない」と答えたのだという(いい話!)。そんな色々の人生、「かけらたち」と呼ぶ些細なものへの俊さんの愛情が強く伝わってきた。

セカンドセットはクルト・ヴァイルの「Lost in the Stars」から。終盤の「blowing through the night」のところ、急に声量とともに想いが強くなって驚く。そして「We're lost here in the stars」において声もこちらも震える。続く「My Man」での叫び、疲れたあとに独白するようなアルトがとても良い。3人一緒に始める「On a Slow Boat to China」、そして一転して「Send in the Crowns」では自虐的にもなってしまう淋しい人を歌った。永武さんは残響でそれに優しく貢献した。

エンリコ・カルーソーのことを歌った「カルーソー」、イタリア的に字余りな歌詞と歌い方が愉快。友川かずき・ちあきなおみの「夜へ急ぐ人」では、断片化されたサウンドから各々がつなぎあわされてゆき、心の猛追。ちょっと間を挟むアルトとピアノの走り方も見事。

アンコールはちあきなおみが歌った「紅い花」、そして「Over the Rainbow」。ピアノのイントロから、俊さんはこの歌に入るのが恥ずかしいように合わせる。

それにしても3人それぞれの強度も、サウンドに向かっての協力も素晴らしいバンド。次回も観たい。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●纐纈雅代
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
秘湯感@新宿ピットイン(2019年)
原田依幸+纐纈雅代@なってるハウス(2019年)
The Music of Anthony Braxton ~ アンソニー・ブラクストン勉強会&ライヴ@KAKULULU、公園通りクラシックス(JazzTokyo)(2019年)
【日米先鋭音楽家座談】ピーター・エヴァンスと東京ジャズミュージシャンズ(JazzTokyo)(2018年)
纐纈雅代@Bar Isshee(2018年)
纐纈雅代トリオ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年)
纐纈雅代@Bar Isshee(2016年)
板橋文夫+纐纈雅代+レオナ@Lady Jane(2016年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)

渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『秘宝感』(2010年)
鈴木勲 フィーチャリング 纐纈雅代『Solitude』(2008年)

●永武幹子
かみむら泰一+永武幹子「亡き齋藤徹さんと共に」@本八幡cooljojo(2019年)
酒井俊+青木タイセイ+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
古田一行+黒沢綾+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
蜂谷真紀+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
佐藤達哉+永武幹子@市川h.s.trash(2018年)
廣木光一+永武幹子@cooljojo(2018年)
植松孝夫+永武幹子@中野Sweet Rain(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)

永武幹子+類家心平+池澤龍作@本八幡cooljojo(2018年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
酒井俊+永武幹子+柵木雄斗(律動画面)@神保町試聴室(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年)
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)