Sightsong

自縄自縛日記

パトリック・シロイシ『Descension』

2019-10-15 23:10:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

パトリック・シロイシ『Descension』(2019年)を聴く。

Patrick Shiroishi (sax, loop pedal)

ソロだと思って聴くとソロではない。しかしかれに確認するとソロだという。ギター用のループペダルを使い、ライヴの1テイクで撮られている。すなわちオーバーダブではない。

それにしても圧倒的な音だ。ハウリングの音から始まり、世界が無数の咆哮でびりびりと震え、サックスのブロウがその中心で太く濃く、生命で輝いてもいる流れを放っている。深い諦めや絶望に近いやさしさもある。2曲目になり、サックスの音はさらにエレクトロニクスの内面で反響し、ギターのように変貌するのだが、再び本性を表し、轟音の中で何かを脱ぎ捨ててサックスとなる。

3曲目「tomorrow is almost over」はもはや何をオリジンとしているのか不明なマシンガンである。世界が轟音を立てて滅亡していくとき、巨竜のごとき霊がかれのブロウとともにのたうちまわる。こうなると電気的なスパークと肉体のブロウとの違いが消えてしまう。そして叫びがついに噴出する。

4曲目は井戸の底で反響するようなヴォイスからはじまる。終末感を色濃く提示するサウンドだが、不思議な安寧もある。

●パトリック・シロイシ
パトリック・シロイシ『Bokanovsky’s Process』、『Tulean Dispatch』、『Kage Cometa』(JazzTokyo)(2018年)
「JazzTokyo」のNY特集(2018/4/1)


キム・ミール+クリスチャン・ヴァルムルー+池田謙@東北沢OTOOTO

2019-10-15 07:54:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTO(2019/10/14)。台風のために2日ずらしての開催になった。

Kim Myhr (g, electronics)
Christian Wallumrød (electronics)
Ken Ikeda 池田謙 (electronics)

池田謙ソロ。やはり台風の影響もあって、池田さんはいつものセットではなくコンパクトなエレクトリックボックスを抱きかかえての演奏だった。はじめは電気ならぬ生き物の脈動が聴こえた。それはさまざまに姿を変えたのだが、ひとつの音に耳を貼り付けていると隣から他の音が主体のように登場してくる。これは音同士が濁らず素晴らしい分割性を持って併存しているからだと思えた。

キム・ミールとクリスチャン・ヴァルムルーのデュオ。ヴァルムルーは低音のノイズやドラミングパルスを受け持ち、ときに高音の楔を打ち込んでくる。ミールはギターを弾いてそれを何次にも利用しつつ、キーボードで耳に残る連続音を出す。先の池田さんのサウンドと違い、互いに積極的に混じり混沌を創り出す感覚である。だがどちらかが何かの音を消すと、その不在によって音の存在に気付かされるという不思議なものでもあった。

トリオ。三者が三相となって並走というか併存する。これもまた、抽象的でありながら脈動と成長とが面白く、耳も意識も停滞しない。各々が他の二者を横目で見ながら自身の作業をしているようだと思ったのだが、実はそうでもない。背後にまわっているはずのヴァルムルーはミールの音に呼応していきなり境界を拡げたし、池田さんがミールの音に意図的にシンクロしているように聴こえておおっと目が離せなくなる時間があった。

終わってからお寿司をつまみながら(ごちそうさまでした)、あれこれ雑談。日本の伝統楽器の話になり、三味線の田中悠美子さんがスーパーだったとクリスチャンは言った。発酵食品の話になって、キムさんの一押しはヤギ乳で作られるノルウェーのbrown cheese。何でもこれを食べられるお店を見つけたそうである(代々木公園のフグレントウキョウ)。行ってみなければ。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●キム・ミール、クリスチャン・ヴァルムルー
キム・ミール+クリスチャン・ヴァルムルー+ジョー・タリア+山本達久@七針
(2019年)

●池田謙
フタリのさとがえり@Ftarri(2018年)
池田謙+秋山徹次@東北沢OTOOTO
(2017年)


るつこべちこ(磯部舞子+熊坂路得子)@The Farm Tokyo

2019-10-15 07:37:35 | アヴァンギャルド・ジャズ

八重洲のビアガーデン風のレストラン・The Farm Tokyo(2019/10/13)。

Maiko Isobe 磯部舞子 (vln)
Rutsuko Kumasaka 熊坂路得子 (accordion)

「麗しのミュゼット」という熊坂さんのオリジナルから始まって、「パリの空の下セーヌは流れる」や「オー・シャンゼリゼ」など30分。こういうハッピーな雰囲気を創り上げていくのは本当に素敵。都合があって最初のセットしか観ることができなかったのだけれど、ちょっと嬉しくなった。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●熊坂路得子
寺田町+熊坂路得子@下北沢Lady Jane(2019年)
ジャン・サスポータス+矢萩竜太郎+熊坂路得子@いずるば(齋藤徹さんの不在の在)(2019年)
酒井俊+会田桃子+熊坂路得子@Sweet Rain(2018年)
うたものシスターズ with ダンディーズ『Live at 音や金時』(2017年)
TUMO featuring 熊坂路得子@Bar Isshee(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)