パトリック・シロイシ『Descension』(2019年)を聴く。
Patrick Shiroishi (sax, loop pedal)
ソロだと思って聴くとソロではない。しかしかれに確認するとソロだという。ギター用のループペダルを使い、ライヴの1テイクで撮られている。すなわちオーバーダブではない。
それにしても圧倒的な音だ。ハウリングの音から始まり、世界が無数の咆哮でびりびりと震え、サックスのブロウがその中心で太く濃く、生命で輝いてもいる流れを放っている。深い諦めや絶望に近いやさしさもある。2曲目になり、サックスの音はさらにエレクトロニクスの内面で反響し、ギターのように変貌するのだが、再び本性を表し、轟音の中で何かを脱ぎ捨ててサックスとなる。
3曲目「tomorrow is almost over」はもはや何をオリジンとしているのか不明なマシンガンである。世界が轟音を立てて滅亡していくとき、巨竜のごとき霊がかれのブロウとともにのたうちまわる。こうなると電気的なスパークと肉体のブロウとの違いが消えてしまう。そして叫びがついに噴出する。
4曲目は井戸の底で反響するようなヴォイスからはじまる。終末感を色濃く提示するサウンドだが、不思議な安寧もある。
●パトリック・シロイシ
パトリック・シロイシ『Bokanovsky’s Process』、『Tulean Dispatch』、『Kage Cometa』(JazzTokyo)(2018年)
「JazzTokyo」のNY特集(2018/4/1)