中北浩爾『自公政権とは何か―「連立」にみる強さの正体』(ちくま新書、2019年)を読む。
なぜ自公政権がこうも批判を受けながら、しかも政策的な違いが小さくないにも関わらず、安定的な政権運営を続けているのか。それは何も公明党が我慢してへばりついているから、ではない。そのことが本書を読むと納得できる。
すなわち、小選挙区制は二大政党を生み出すものではなく、一党優位に近い二ブロック型多党制を生み出すものだった。これは過去に印象深い結果となった、得票率が高くなくてもオセロゲームのようにぱたぱたと議席を獲得していく現象ばかりを意味するものではない。それよりも、もはや、連立を前提としないと政権を奪うことはできないということのほうが重要である。
自公政権はそれを実にうまく利用してきた。一方、旧民主党は二大政党制にとらわれ過ぎてしまった。
そしてまた、公明党内部では、このような形でヴィジョンが異なる自民党と組んだほうが、自党の政策をより実現できると認識していることがわかる。軽減税率もそのひとつである。集団的自衛権で譲歩したこともあって、その実現には強くこだわった。だが結果として、以下の記述はあまり妥当なものではないだろう。これがまさに現在批判されていることだからである。
「自民党の右傾化に対する「ブレーキ役」よりも、社会的弱者の味方として恵まれない人々の生活の向上を重視する公明党のあり方が、そこには示されている。」
いずれにせよ高度な選挙協力の形ができてしまったわけである。それゆえ、それに抗してふたたび政権交代を実現させるには、戦略的な野党結集が必要だということがわかる。しかし以下のようにことは簡単ではない。
「非自公勢力の場合は、そうではない。労働組合など一部を例外として、そもそも組織化された票が少なく、候補者調整を超える選挙協力が難しいし、都市部に主たる支持基盤を持つ政党がほとんどであり、地域的な相互補完性も難しい。また、旧民主党と共産党は、反自民党を奪い合う関係にある。」
だからこそ、無党派層の大幅動員、野党候補の一本化、地域での矛盾の顕在化を地域票に結びつけること、共産党とのうまい連携などが重要視されているのだろうけれど。
●参照
中北浩爾『現代日本の政党デモクラシー』
小林良彰『政権交代』
山口二郎『政権交代とは何だったのか』
菅原琢『世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか』
中野晃一『右傾化する日本政治』