Sightsong

自縄自縛日記

奥田梨恵子+照内央晴@荻窪クレモニア

2019-10-24 00:59:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

荻窪のクレモニア(2019/10/23)。

Rieko Okuda 奥田梨恵子 (p)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)

奥田さんは最近サックスのフローリアン・ヴァルターとツアーをしたばかりであり、そんなメッセージがフローリアンからも届いていた。終わった後に日本に飛んできたわけである。(なおそのふたりが共演した録音は事情により音盤化されない。また録音するとのこと。)

クレモニアにはグランドピアノが2台あり、そのためにこの日の場所として選ばれた。ふたりのピアニストも観客も1時間ほどの演奏のあいだ、自由に立って移動してもよいという趣向である。ふたりはピアノを替わったり、連弾をしたり、内部奏法を仕掛けたり。同じヤマハのピアノでありながら響きのニュアンスが異なり、また聴く場所によって相乗効果が出たり差異が別のものに化けたりもした。

とは言え、際立ったのはふたりのアクションや出す音の大きな違いである。

照内さんは鳴らすときも響かせるときも、ピアノの強弱の振幅を大きく取り、音による態度表明を表現の一部としているようにみえる。静かに弾くときの残響、響きを断っての旋律、大きく鳴り響かせること自体によるピアノの筐体全体の響き、それらが動的に変貌した。

一方の奥田さんはさまざまな両極の間に浮かび、ときにはエア鍵盤で音を出さずに飛んだ。内部奏法もかなり独特なもので、繊細な絹糸に触れて連続的に音を変えた。鍵盤という不連続なものを持つ楽器でありながら、音が連続的に遷移し揺らいでゆくのである。これは内部奏法に限らず、鍵盤を弾いているときにもそう感じられた。

ふたりの相互作用は貌を変え続けた。奥田さんが曖昧な雲を創ったとき、照内さんがその雲の中に入り、半睡で陶然としたピアノを弾いた時間など、短かったがみごとだった。そして音を削り、残してゆき、静かにシンクロし、着地した。予定調和ではなくおそらく本人たちも想定せざる調和というものは驚きを残してくれる。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●奥田梨恵子
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
奥田梨恵子(Rieko Okuda)『Paranorm』(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)

●照内央晴
豊住芳三郎+コク・シーワイ+照内央晴@横濱エアジン(2019年)
照内央晴+加藤綾子@神保町試聴室(2019年)
特殊音樂祭@和光大学(JazzTokyo)(2019年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴@なってるハウス(2019年)
豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2019年)
吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2019年)
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)