Sightsong

自縄自縛日記

エヴァン・パーカー『saxophone solos』

2019-10-13 15:05:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

エヴァン・パーカーはずっと同じスタイルを貫いてきた音楽家にみえるけれど、実際のところ、バンドサウンドももちろん多彩だし、サックスの音色や表現自体も驚くほど変化している。初期の『saxophone solos』(Incus、1975年)など聴いたら驚く。

Evan Parker (ss)

30代になったばかりのエヴァン・パーカーによるソプラノサックス・ソロ集である。

エヴァンのソプラノは、現在のイメージは、小鳥のように、しかしたいへんなスケールで飛翔する音である。

しかし、ここで聴くことのできる音は、より凶暴で牙を剥いているようであり、かつそれが他者に対してではなく自分の存在に向けられているように思える。タンギングは速く鋭く、吹き込む息も声も活力に満ちている。その結果、小鳥どころか、途方もない力により軋む重いドアを幻視する。サックスとともに並走する声の流れもある。また、マウスピースで息をかなりの力でコントロールしており、吹き込まずにその箇所で力が逆流し、暴発を抑制する音となっている。若い時ならではの音だと言うことができるかもしれない。

B面の最後などは、「このまま聴いていたらヤバい」感にとらわれる。

●エヴァン・パーカー
シュリッペンバッハ・トリオ+高瀬アキ「冬の旅:日本編」@座・高円寺(2018年)
デイヴ・ホランド『Uncharted Territories』(2018年)
エヴァン・パーカー@稲毛Candy(2016年)
エヴァン・パーカー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2016年)
エヴァン・パーカー@スーパーデラックス(2016年)
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
シルヴィー・クルボアジェ+マーク・フェルドマン+エヴァン・パーカー+イクエ・モリ『Miller's Tale』、エヴァン・パーカー+シルヴィー・クルボアジェ『Either Or End』(2015年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー『The Flow of Spirit』(2015年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
マット・マネリ+エヴァン・パーカー+ルシアン・バン『Sounding Tears』(2014年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
エヴァン・パーカー+ジョン・エドワーズ+クリス・コルサーノ『The Hurrah』(2014年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
エヴァン・パーカー+ノエル・アクショテ+ポール・ロジャース+マーク・サンダース『Somewhere Bi-Lingual』、『Paris 1997』(1997年)
エヴァン・パーカー+ネッド・ローゼンバーグ『Monkey Puzzle』(1997年)
エヴァン・パーカー+吉沢元治『Two Chaps』(1996年)
サインホ・ナムチラックとサックスとのデュオ(1992-96年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981-98年)
スティーヴ・レイシー+エヴァン・パーカー『Chirps』(1985年)
エヴァン・パーカー『残像』(1982年)
デレク・ベイリー+ハン・ベニンク+エヴァン・パーカー『Topographie Parisienne』(1981年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
カンパニー『Fables』(1980年)
『Groups in Front of People』の2枚(1978-79年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)


クリス・ヴィーゼンダンガー『acoustic solo piano works』の2枚

2019-10-13 10:35:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリス・ヴィーゼンダンガー氏は『acoustic solo piano works』と題したピアノソロ集を2枚出している。1枚目が2011年、2枚目が2017年の録音。

Chris Wiesendanger (p)

聴く者もまるで静かな空間に投げ入れられたかのようなピアノである。それは思索をつねに伴っており、音と音の間の時間と空間とが表現の中心として提示されているからに他ならない。静けさの中での響きを示されるたびに、ああもとの音は何だったろうという内省に誘い込まれる。

2枚目は特にそのような音楽のあり方が押し進められている。つまりクリスさんは確信犯である。ひとつの和音を鳴らしては、その響きのあり方を微細に変える3曲目、単音を執拗に、しかし平然とゆったり鳴らし続ける6曲目。絶えず音楽の起点を意識させられるようである。

●クリス・ヴィーゼンダンガー
クリス・ヴィーゼンダンガー+かみむら泰一+落合康介+則武諒@中野Sweet Rain(2019年)
クリス・ヴィーゼンダンガー+クリスチャン・ヴェーバー+ディーター・ウルリッヒ『We Concentrate.』(2004年)