うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

新地橋~深川澪通り木戸番小屋~

2012年06月14日 | 北原亜以子
 1995年12月発行

 深川中島町の木戸番夫婦、笑兵衛とお捨を中心に、そこに暮らす人々の営みを描いた人情時代小説。「深川澪通り木戸番小屋」シリーズ第3弾。

主要登場人物(レギュラー)
 笑兵衛...深川中島町の木戸番
 お捨...笑兵衛の妻
 弥太右衛門...中島町の自身番に詰める差配人(いろは長屋の差配人)
 太九郎...中島町の自身番に詰める書役
 神尾左馬之助...北町奉行所定町廻り同心
 伝次...岡っ引き(左馬之助の小者)
 勝次...賄い屋の弁当運び(元南組三組の纏持ち)
 おけい...勝次の妻

第一話 新地橋
第二話 
第二話 うまい酒
第三話 
第三話 深川育ち
第四話 
第四話 鬼の霍乱
第五話 
第五話 親思い
第六話 
第六話 十八年 計6編の短編連作

新地橋
 
 新地の遊女上がりのおひでは、嘉六と所帯を持ったが、おひでの身請けの為に盗みを働き、遠島となっていた杵二郎が江戸に戻ると聞き、二人の心境に変化が起きる。
 件の杵二郎の登場シーンはないが、この人の男気がかなりインパクトがある。そしてラストは大映映画のように、読者の想像力を駆り立て筆を終えている。

主要登場人物
 おひで...御御所団子屋
 
 嘉六...笊売り
 栄助...読売売り

うまい酒
 
 行き倒れ寸前で深川に着いた、旅の男惣七は、腕の良い左官職だった。やがて世話好きの善蔵と知り合い、左官の仕事を始めるが…。
 これぞ中島町澪通りの人情といった感の、心温まる物語。

主要登場人物
 惣七...川崎の左官職人
 
 正吉...中島町の左官職人久助の次男
 
 善蔵...油売り

深川育ち
 
 おしんとおみねは、姉妹で小さな居酒屋を切り盛りしていた。客のひとり伊三郎を巡り姉妹は恋の火花を散らす。
 居るんだよねえ。こういう男。しかも駄目だと分かっていても引かれてしまう女心。「いやなことは、川に流してしまわれますよ」。お捨の大らかな声が表題である。

主要登場人物
 おしん...深川北町居酒屋桔梗屋の姉
 
 おみね...桔梗屋の妹
 
 仁助...菓子職人
 
 伊三郎...正体不明

鬼の霍乱
 
 お捨が病で倒れた。笑兵衛始め、町内の誰もがお捨を案じている。だがそれは、天涯孤独の浜吉には、妬みと羨望をかき立てられる思いだった。
 誰でもが年を取れば感じる孤独。そして人によるだろうが、己にない幸せに対する嫉妬。思いも寄らない結末だった。

主要登場人物
 清太郎...豆腐屋金兵衛の弟子、上野池之端袋物問屋花菱の総領息子
 おうの...清太郎の妻、塗物問屋の娘
 
 浜吉(日本橋木綿問屋三国屋磯右衛門)...深川相生町長屋の店子

親思い
 
 蔬菜の棒手振り豊松は、武士の子だったが、養い親の元、町人である事に不満はない。そんな豊松に某藩から、呼び出しが掛る。
 豊松の生い立ちを振り返った話が、込入っており、少し難解だった。

主要登場人物
 
 豊松...蔬菜の棒手振り
 
 吾助...豊松の養父、百姓
 
 おみね...吾助の妻
 おげん...吾助の従兄弟
 登勢...豊松の母

十八年
 
 家具職人の伊与吉は、三十になり漸くひとり立ちが適ったが、三日ばかり兄弟子の藤松のせいで、出世が遅れたと思っていた。
 ひと言で、何時の時代も、腕のある奴は妬みなど抱かない。

主要登場人物
 伊与吉...家具職人
 
 藤松...家具職人
 
 岩五郎...家具職人、
 伊与吉...藤松の親方

 全章、ラスト1行から2行が良い。そしてやはり物語が悲愴な終わり方をしていないのも、このシリーズの魅力である。
 




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